マカオ&香港&上海旅行記(上海 / 川沙公園)

昼の12時半すぎ、上海に到着した。帰りは6時間ほど乗継ぎ時間があるので、いったん中国に入国して空港近くへ出てみることにしていた。

旅行前にどこか面白そうなスポットがないか調べたところ「川沙公園」という場所が見つかったので、今回はそこへ行ってみた。


上海浦東空港から市街へ移動する場合、外国人旅行者は上海リニアを利用することが多いと思うが、空港には地下鉄も乗り入れている。料金は安いが上海リニアと比べると格段に時間がかかるので、貧乏旅行にこだわるバックパッカーくらいしか利用しないと思う。

ターミナル1とターミナル2の間にある地下鉄駅へ移動し、列車を待つ。出張で上海へ来た時、市街中心部で地下鉄に乗ったことが1回だけあるが、ここから乗るのは初めて。

目的地の川沙駅は空港から4駅目。といっても空港付近は郊外なので駅間距離が長く、4駅でも20分ほどかかった。この区間の料金は4元。

地上に出ると上海郊外の風景が広がっている。

ここから川沙公園まで歩く。喋らない限りはこちらが外国人ということはバレないので、周りから注目を集めることもなく、歩いていても気楽なもの。

10分ほどで目当ての川沙公園に到着した。予想以上に立派な門に驚く。

では、公園の中へ(入場料などは必要ない)。広さは5.3ヘクタールということなので、公園の規模としてはかなりのもの。奥の方にこの公園のシンボルといえる「鶴鳴楼」という建物が見え、手前には本格的な遊園地もある。しかし…

何だろう、この微妙に漂う不安な感じは。遊園地も、遊具は立派だが見事に人がいない。遊具が朽ち果てていれば廃墟感を楽しむこともできるのだが、きれいに整備されているのにまったく人がいないものだから、なんだか人間が消えてしまった世界に迷い込んだような不思議な気分。

人がいない遊園地について考えていると、閉園になる前の「西海楽園(長崎県)」を思い出した。(もちろん、ここは西海楽園とは規模が違うが)

もっとも、インターネット上の川沙公園訪問記にはそれなりに人が写っている写真も載っているので、これは平日(火曜日)の昼間だったからだろう。おかげで予想外のB級スポット感を味わうことができた。ここまで人がいない遊園地を1人で歩くというのも、なかなかできない経験だと思う。本当に、異世界に迷い込んだような不思議な気分。

メリーゴーラウンドには中国のお約束ともいえる版権無視のキャラクターがあった。やはりここは中国。

まったく人を見かけない遊園地エリアを離れて、鶴鳴楼の方へ歩く。運河を渡る石橋の上に初めて人を見かけた。

石橋を渡って鶴鳴楼へ。帰国後に調べた情報によると「三国時代に作られた武漢市の黄鶴楼という城をモデルに、1993年に建てられた鉄筋コンクリート造りの建物」らしいことがわかった。それなりに由緒のある建物が元になっているとは思うが、なんとなくハリボテ感が漂うところが面白い(あくまで個人的な感想)。

下の写真は2枚の写真を Microsoft ICE を使って合成したもの。柱が曲がってしまったが、ちょっと面白いのでそのまま載せておく。

では鶴鳴楼の中に入る。特に入場料等は必要ない。

入ってすぐのところにあるのが、石碑、鶴鳴楼のミニチュア、大きな壁画、高価そうな壺、灯籠など。後述する通り鶴鳴楼の中には他に見るべきところはないので、ここが唯一の見所になる。石碑には「鶴鳴楼記」と刻まれていたので建物の由来が書かれていると思う(多分)。

エレベーターはあるが使用不可になっていた。仕方がないので7階まで階段で上がることにする。途中の階はすべて扉が閉ざされていて、部屋の中に入ることはできない。ガラス越しに覗き込んだところ、どの部屋もがらんとした感じだった。この建物が作られた当時は各階にも展示室があったのだろう(多分)。

最上階だけはテラスから外を眺めることができるようになっていた。(そうしないと、ここに上る意味がない)

ここから撮った写真をつなげて、パノラマにしてみた。しかし上海というのは見事に山がなく、どの方向を見ても完全に真っ平ということを改めて感じさせる風景といえる。以前、上海から研修生として日本に来ていた人と交流があったが、社員旅行で阿蘇山へ行った時にひっくり返るほど驚いていた。それまで山らしい山を見たことがなかったそうで、たしかに上海に住んでいたら山を見ずに一生を終える人も大勢いると思う。(調べたところ上海で一番高い場所は余山という山で、標高97メートル)

公園内の池(これから歩いてみる予定のところ)と、先ほど歩いていた遊園地を見下ろしてみた。遊園地には相変わらず人がいないが、池のほとりにある東屋には何人かの姿が見える。

別の方向には団地が並んでいた。窓からまっすぐ伸びる物干し竿は中華圏特有で、他では見ない。こういう生活感のある風景も好きだが、こちらもほとんど人の姿が見えない。

さらに、遠くには学校も見えた。しかしこれまた人影がない。

しばらく景色を眺めた後、鶴鳴楼を下りて池の方へ歩いてみた。遊園地と比べれば人は歩いているものの、それでもずいぶん閑散とした雰囲気。平日の昼間とはいっても、もっと地元の人たちが散策したりベンチで休んでいてもいいと思う。

池のほとりの東屋では地元の人たち数人がダンスの練習をやっていて、ここが公園内で唯一にぎやかな場所だった。

池の反対側から鶴鳴楼を眺めてみた。多分、川沙公園で一番きれいな風景。

池には足漕ぎボートが係留されているが、この時は管理人小屋も閉ざされていた。

池をひと回りしたあと、遊園地の方へ戻った。すると、今回は数組のグループ(といっても少人数)が歩いていて、遊具が動いている場面を初めて見ることができた、鶴鳴楼の上からの眺めと合わせて下に動画を載せておく。

これで川沙公園を一通り見たので、地下鉄駅へ戻ることにした。最初は「なんとなくB級スポット的な雰囲気でもあれば」と思って訪問先に選んだのだが、実際に来てみると驚くほど地元の人たちに人気のない公園ということがわかって、まるで人間が消えてしまったような世界を味わうことができた。

といっても、最初に書いた通り、ここまで閑散としていたのは平日の昼間だったからだろう。週末はもっと人が多いと思うので、私もいつかまた見に来たい。上海でトランジットの際、中途半端に時間があるときはお勧めのスポット。


川沙駅から地下鉄に乗り、空港とは反対方向へ向かう。なぜ直接空港へ戻らないかというと上海リニアに乗ってみたいため。

浦東空港と虹橋空港方面を結ぶ地下鉄2号線は、なぜか全線を直通する列車がなく途中の広蘭路駅で向かい側の列車に乗り変える必要がある。川沙駅から4駅目の広蘭路駅で乗り換え、さらに3駅目の竜陽路駅で列車を下りた。この区間の料金は5元。

地上に出ると上海リニアの駅がある。この前年のキルギス旅行の際、トランジットでの滞在を利用して空港からここまで往復してみたことがあり、1年ぶりのリニア搭乗になる。料金は50元で、もちろん地下鉄よりずっと高い。

しかし前回乗った時も思ったが、中国が誇る高速鉄道のはずなのに内装がずいぶんと簡素なのが不思議。メンツにこだわる中国人が、なぜこんなちゃちな座席にしたのかが理解できない。(列車内の様子については当サイトのキルギス旅行記を参照してほしい)

8分ほどであっという間に空港に戻り、中国を出国。夕方6時半に上海を出発し、夜9時に福岡空港に到着した。


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