ブルガリア旅行記(リラ修道院)

ソフィア滞在2日目。この日は日帰りでリラ修道院へ行くことにしていた。リラ修道院といえば世界遺産にも登録されている有名観光地なので、ブルガリアを旅行する人のほとんどが訪れる場所だと思う。ここが今回の旅行での最初の目的地になる。


朝8時に起床。9時にホテルを出て、歩いて地下鉄セルディカ駅方面へ向かう。リラ修道院への直行バスは市街の南にあるオフチャ・クペル・バスターミナルから出ていて、そこまではトラムで移動することになる。

トラムの乗り場へ歩く途中、近道として小さな公園を横切ったところ、前日に見た公園と同様に報道写真が展示されている一画があった。

そして、こちらにも前日と同様にトップレス。小さな子供も遊びに来るような公園だというのに大丈夫なんだろうか。(まあ、私も今回ブルガリアへ来た目的を考えると、あまりきれいごとは言えないが)

しかしソフィアでも2ヶ所でトップレスが見られるとは、旅行の序盤としては幸先がいい。

そして朝のソフィア市街もなかなか雰囲気がいい。建物がどれも重厚で、いかにもヨーロッパという感じ。

オフチャ・クペル・ターミナル方面へ行く5番のトラム乗り場は、地下鉄セルディカ駅がある交差点の少し南西にある。10分ほどで到着し、少し待っているとトラムがやってきた。

では、トラムに乗り込んで出発。料金は1レフで、運転手からチケットを買い、それを車両に設置されているパンチ機に自分で通して穴を開ける必要がある。定期券を持っている人はチケットを買わなくていいので、それに紛れて無賃乗車が簡単にできてしまうようだが、不正がばれると多額の罰金だという。検札は頻繁にあるという話だったが、私が一度も見なかった。

バスターミナルまで約20分ということは調べていたものの、しかし行き過ぎないように周囲の景色を注意していないといけない。途中からかなり混雑してきて窓の外がよく見えなくなったが、何とかバスターミナルを発見して下りることができた。

時刻表を見ると、リラ修道院への直行バスは1日1往復で、10時20分の出発になっている。帰りの出発時刻を考えると修道院にいられる時間は1時間半ほどで、ちょっと短いような気もするが、これは仕方がない。

実は旅行前に直行バスではなく他の手段(鉄道でブラゴエフグラトへ行ってリラ村行きのバスに乗り継ぐなど)を使うことも考えたが、どれも労力が掛かるわりには滞在時間を長くできないので、おとなしく直行バスを利用することにした。それに、インターネット上の旅行記を読んでみても1時間半くらいで十分らしい。

修道院行きのバスが出るまで30分ほどあり、それまでターミナル内で待つつもりだったが、道路の向こう側から何かのイベントが行われているような音が聞こえてくる。

道路を渡ってみると、ここは学校だった。このとき行われていたイベントについては、今でも内容はわからずにいる。ブロックごとに若者が校庭に並んでいたので「運動会?」とも思ったが、しかし全校生徒がこんなに少ないとも思えない。あまり時間もないので、かなり美人の先生(多分)が挨拶しているところでバスターミナルへ戻ることにした。

10時20分にソフィアを出発。チケットはバスに乗るときに運転手から購入し、料金は11レヴァ。普通のバスを予想していたが、意外にもマイクロバス程度の小さなバスだった。そして、リラ修道院は人気の観光地と思っていたが、車内が半分も埋まっていなかったのも意外だった(その中に私を含めて日本人が4人)。直行バスも1日1便しかないし、ほとんどの人はツアーで訪れるのかもしれない。

ソフィア市街を出ると、周囲にはずっとこんな風景が続くようになった。移動中のバスから撮ったので何かわからないと思うが、これはひまわり畑。

今は9月中旬なのでひまわりも枯れてきていたが、夏には映画「ひまわり」のような景色が見られるのかもしれない。あの映画が撮影されたのはたしかウクライナだったと思うが、考えてみればブルガリアはウクライナの近く(黒海の対岸)なので、ひまわり畑があっても不思議ではない。あの映画は子供の頃に一度見ただけなので内容はほとんど憶えていないが、地平線まで続くひまわり畑というのもいつか見てみたいものだ。

ソフィアを出発してから約2時間でリラ村に到着した。

リラ修道院は山の中にあり、ここはその麓の村になる。運転手の説明によると、ここで30分間の休憩があり、ここからは別のバスに乗り換えるという。出発まで村の中を散策してみた。

ここは、すごく静かで雰囲気のいい村だった。どの家もブドウを栽培しているところなどはワインが有名なブルガリアらしいという気がする。わずか30分ほどだったが、気分のいい散策ができた。


ここからはミニバスに乗り換えて出発。バスは渓谷に沿って次第に山の中へ入っていく。かなりきれいな景色を楽しみながら30分で修道院の前に到着した。帰りのバスの出発時刻は午後3時で、滞在時間は1時間50分ほど。予定よりも早く着いたため、滞在時間が少し長くなったのは嬉しい。

では修道院へ。

門をくぐると、待望の眺め。有名観光地なので写真では何度も見たことがあったが、やはり実際に見ると感動する。それほど広い修道院ではないが、かなりの山の中にあるし、雰囲気は本当に素晴らしい。

下の写真の中央に民族衣装ぽい姿の人が写っているが、この人はただの観光客。びっくりするような格好だったので観光客向けの人かと思った。

この修道院で特徴的なのが、なんといってもこのゼブラ模様。調べたところ、こういう縞模様がある修道院は他にもあるようだが、こんなはっきりした白黒の装飾があるのはここくらいだと思う。それにアーチも格好いい。

この修道院が最初に作られたのは10世紀だそうで、14世紀からの500年間が全盛期だったという。ただ、1833年の火事で僧院の建物は燃えてしまったそうで、現在の建物は再建されたもの。

こちらが僧院のメインといえる聖母誕生教会。

教会の中は写真撮影禁止だったので、写真は撮っていない。ちょっとくすんだような雰囲気がよかったので、見たい人は実際に訪れてほしい。

そして、この教会で見事なのが外壁と天井のフレスコ画。こんな極彩色のフレスコ画が見られる場所も、そうはないと思う。近づいて見ると、どれも相当に稠密なのがすごい。

ここのフレスコ画の中でもっとも気に入ったのが地獄風景。ここ数年ほど、台湾や東南アジアの寺院巡りでいろいろな地獄風景を見てきたが、やはりアジアの地獄とは違っている。悪魔の造形などはまさにイメージ通りのキリスト教の地獄風景で、タイの地獄寺ではこんな形の像は見ないように思う。(地獄寺で見るのは悪魔というより鬼という感じ)

もっとも、仏教やヒンドゥ教と違ってキリスト教は輪廻の考えがないから(正確に言うと昔はあったらしいが現在は否定されている)、いったん地獄に行くと永遠に留まることになるわけで、それを考えると輪廻の考えがある宗教の方がましという気もする。

下の写真の石造りの塔が1833年の火災を唯一逃れたというフレリョの塔。貴重な建物だというのに1階が土産物店になっているのがなんとも。(土産物店では各種のキリスト教グッズが売られていた)

ここは単なる観光地ではなく現役の修道院なので、こういう修道僧の方たちがときどき歩いている。実に絵になる風景だと思う。

聖母誕生教会がある中庭を囲む建物には基本的に入ることができないが、3ヶ所の有料展示室だけは見ることができる。せっかくなのでどれも見てきたが、そのうちのイコン展示室(4レヴァ)と歴史博物館(8レヴァ)は写真撮影禁止。歴史博物館にある「ラファエロの十字架」は見事だった。

もう1ヶ所(3レヴァ)については、展示室の名前は失念してしまったが、古い生活用品などが展示されていた。ここは撮影禁止の表示はなかったので写真を撮ってみた。

博物館を出ると、かなり激しい雨が降っていた。山の天気は変わりやすいということだと思うが、アーチの下を歩いている限りは濡れることはないし、雨のリラ修道院も非常に雰囲気がいい。霧に霞む山々が幻想的。

修道院の奥(入ってきた方とは反対側)にも門があり、その先には石造りの建物が見えた。あれがガイドブックにも載っているレストランで、雨が小降りになってから行ってみた。

観光地なので高いと思うが、せっかくなのでここで昼食にした。注文したのはチーズが山のように乗ったサラダと「スジュック」というスパイシーなソーセージ。トルコあたりでもよく見られるソーセージだそうで、味はかなりうまい。食後のコーヒーと合わせて値段は15.7レヴァ。

修道院に戻ると、先ほどの雨とは一転して晴れ間が見える。

この後、出発時間まで僧院内を散策した。有名観光地なので、大型バスで次々と観光客がやって来る場所を想像していたのだが、意外と観光客は少なかった。おかげで静かに散策でき、修道院の雰囲気を楽しむことができた。今回は日帰りだが、ここには宿坊もあるそうなので、夜や早朝の修道院に興味がある人は泊まってみてもいいかもしれない。

テレビや写真で何度も見たことのある観光地でも、実際に来てみるとやはり感動する。いつかまた来てみたいものだが、果たしてその機会はあるだろうか。


午後3時にリラ修道院を出発。帰りはリラ村での休憩はなく、ミニバスがそのままソフィアまで運行するということだった。リラ村で5人ほどの若い男性(多分アメリカ人旅行者で、リラ村に宿泊していたらしい)が乗ってきて、車内はほぼ満員になった。

行きとは違って天気がいいので、ひまわり畑がきれいに見える。

帰りは下り勾配ということもあるのか、ミニバスは快調に飛ばしてちょうど2時間でソフィアのバスターミナルに到着した。こちらがリラ修道院から乗ってきたミニバス。

翌日から黒海沿岸へ移動するので、この日がソフィア最後の夜になる。といってもソフィア市街の主要な観光スポットは前日に見たので、この日はモールオブソフィアというショッピングモールへ行ってみた。

バスターミナルの前から5番のトラムで市街中心部へ戻り、8番のトラムに乗り換えてモール前で下車。

最近は東南アジア方面でよく見かける大型ショッピングモールだが、ヨーロッパではそこまで大きなものは見ない。なので、このモールオブソフィアもそれほど大きくはないだろうと思っていたところ、予想に反してかなりの規模だった。今後はヨーロッパでも大型ショッピングモールが増えていくのかもしれない。

ここのフードコートで夕食にしようかとも考えたが、ここではコーヒーを飲むだけにしておいた。

モールの外へ出ると、天候が一変していてかなりの雨。こういう事態を予想して、今回の旅行では折り畳み傘を持ってきていて助かった。

ところが、モール前の通りでセルディカ方面へ行くトラムを待っていても、なかなかやってこない。雨が降っていなかったらずっと待っていてもいいが、さすがにきつくなってきたので近くにある地下鉄のオパルチェンスカ駅へ移動した。雨の日は地下鉄の方が濡れずに済むので楽。

セルディカ駅へ移動し、地上に出ると雨はやや小降りになっていた。前日と同様、トロップス・フーズというレストラン入り、今回は以下の料理を選んでみた。刻んだキュウリが入った冷製ヨーグルトスープがうまい。

しかしこれで9.48レヴァ(約680円)なのだから、ブルガリアは食事に金がかからない。

トロップス・フーズの近くを歩いていた時に日本人男性2人とすれ違ったが、この人たちが今回の旅行で出会った最後の日本人になった。翌日から滞在した黒海沿岸ではまったく日本人を見なかったためで、リラ修道院行きのバスで乗り合わせた3人を含めて、今回の旅行では日本人は5人しか見なかった。ヨーロッパでは人気の旅行先だというのに、日本人にはブルガリアは意外とマイナーな国だったようだ。

前日は何かのイベントが行われていた広場も、この日は静かなものだった。下の写真は広場から旧共産党本部方面の眺めで、ライトアップされた重厚な建物がきれい。

ホテルに戻る前に、前日に続いて BILLA というスーパーマーケットに入って翌日の食料品を買い込んだ。翌日は列車で長時間移動するので、それに備えておく必要がある。さすがにスーパーマーケット内の写真は撮らなかったが、ヨーグルトの種類が非常に豊富なのがブルガリアらしい。

この後、歩いてホテルへ戻ったが、暗い中を歩いていても特に危険そうな雰囲気はなかった。今回滞在した限りではソフィアでは治安の悪さを感じるようなことはなかったが、これはたまたまかもしれない。いずれにしても、注意するに越したことはない。

翌日は早朝起床なので、この日は10時半に就寝。