タイ旅行記(ナコーンラチャシマー)

今回の旅行最大の目的だったワットパーラックローイ訪問を終え、この日の夜と翌日の午前中はナコーンラチャシマーを散策して過ごした。

近郊にピマーイ遺跡という観光地はあるものの、滞在中は日本人らしい姿を全く見かけなかった。わりと大きな町だが、ここは日本人にとってそれほどメジャーな観光地ではなかったようだ。


バスターミナルからバイクタクシーでホテルへ移動し、少し休憩してから再び外出した。少し歩くと町の中心にある池が見えてくる。噴水もあるし、かなりきれい。

大きなデパートのような建物があるが、そこは後で入ることにして、池に沿って歩いてみた。少し進むと東屋風の建物があった。

その先にあるのが「チュンポン門」と「タオ・スラナリー像」。どちらもきれいにライトアップされている。

タオ・スラナリーは、19世紀前半にラオスが侵攻してきたときにラオス軍の兵に酒を飲ませて泥酔させ、彼らを駆逐したことで有名になった女性のこと。今でも広く信仰されているそうで、像の前はお参りする人が絶えなかった。

像の周りは土足禁止なので、私も靴を脱いで上に上がり、像をひと回りしてきた。

像の横の広場は、この通りインラインスケート場になっていた。タイでインラインスケートが流行しているのかどうかは知らないが、若者たちが思い切り格好をつけて滑っているのを見ると、なんとなく微笑ましいものだった。おそらく、ここが地元の若者にとって自分の格好良さをアピールする場所なんだろう。

しばらく周辺を歩いた後、先ほど見えたデパート「KLANG PLAZA」に入り、フードコートで夕食にした。最近はタイ周辺ではどの町へ行ってもこういう大型デパートを見るようになってきた。同じような景色になってしまうため味気ないと思う人もいると思うが、私はこういうところを歩くのはわりと楽しい。

このデパートの前にあったのが「GINZA」という派手な建物。

この時は「カジノだろうか」と思ったのだが、帰国後に調べてみたらマッサージパーラーだった(つまり風俗店)。興味がなくはないが、こういうところはタイ語が話せないと難しいらしいので、はたして今後体験する機会があるかどうか。


歩いてホテルへ戻ると、ちょうどホテルの前の通りがナイトバザールになっていた。かなり賑わっているので歩いてみることにする。

ここは通りに沿っての一直線の夜市なので、観光客にもわかりやすい。ただ、距離はそれほど長くはないので、何往復かしてみてた。

露店でおでんのような食べ物をいくつか買い、8時過ぎにホテルに戻った。


翌日は朝8時半に起床。昼ごろのバスでバンコクへ戻ることにしていたが、その前にナコーンラチャシマーでもう1ヶ所だけ見たい場所があったので、そちらへ行ってみた。

ホテルをチェックアウトし、昼まで荷物を預かってもらうことにして歩いてナコーンラチャシマーの中心部へ。池に沿って歩いていると目的地が見えてきた。

こちらがワット・パーヤップ(Wat Phayap)という寺院。ここは日本の主要なガイドブックにも記載されている寺院なので、ピマーイ遺跡を見るついでに訪れたことのある人もそれなりにいると思う。本堂はかなり立派で、さすがに地球の歩き方に記載されているだけのことはある。

ただし、この寺院で特徴的なのは本堂ではなくこちらの建物。この異様な外観からわかる通り、ここは洞窟をイメージした瞑想室になっている。

中に入ると、まあ驚く程の鍾乳石の群れ。仏頭などは鍾乳石の中に埋まっているし、なかなか異様な景色だと思う。誰もいなかったので、ひんやりとした床に座ってしばらく休むことができた。

しかし考えてみると、ここは本物の洞窟ではないので、これらの鍾乳石はどこからの鍾乳洞から集めてきたものということになる。まさか折って持ってきたとは思えないので、落ちているのを集めてきたのだろう(多分)。つまり、これらの鍾乳石は天井に接着してあるだけなので、本尊の前に座っているとどれか落ちてこないか不安になってきた。この不安に打ち勝たないと瞑想はできないので、それもこの場所を作った人の目的だったのかもしれない。

この写真の人は、多分この瞑想室を作った僧侶だと思うが詳しいことはわからない。写真ではきれいに写らなかったのか、顔のパーツが強調されているところが面白い。

今回この寺院へ来たのは、この洞窟内瞑想室を見ることももちろんだが、もうひとつ「地獄風景が再建されているかどうかを確認する」という目的もあった。インターネット上の情報によると、この寺院にはかつて地獄風景が作られている建物があったものの、その後撤去されたらしい。それが「改装のための一時的な撤去」であれば、もしかしたら地獄風景がパワーアップして再び作られている可能性もある。そういう淡い期待を持ちながら、かつて地獄風景が作られていたという建物へ来てみた。

こちらが、その建物。

中に入ってみて、やはり淡い期待に過ぎなかったことがわかった。この通り、建物の中はほとんど物置と化している。

ただ、端のほうにはかつての壁画がいくつか残されていた。今となっては、これらから地獄風景を想像するしかない。建物の大きさや壁画などからも、それなりに手の込んだ地獄風景が作られていたように思うが、もう見ることができないのが残念。地獄が健在のうちに来てみたかった。

建物の中には、なぜか一家団欒風景のパネルも置かれていた。こういう平和な風景がいったい地獄の中でどういう役割を担っていたのか、ちょっと想像できない。

地獄風景が再現される気配がなかったのは残念だが、いくつか壁画を見られただけでもよかったと思う。再びナコーンラチャシマーへ来る機会があれば、この建物の中がどのように変わったのか、また見に来たい。


ワット・パーヤップを出て付近を歩いてみた。噴水がある池の端には、こういう建物がある。

入っていいかどうかわからなかったが、特に立ち入り禁止とは書かれていない。通路も塞がれてはいないので、せっかくなので上の階に登ってみた。ここからは周辺の道路などが眺められる。

建物の中に入ってみると、こういう雑誌が点々と落ちていた。こういうところにエロ雑誌が捨ててあるのは世界共通のようで、なんとなく微笑ましい気持になった。

もっとも、中を少し見てみたが日本の雑誌ほど過激ではない。まあ、この種の雑誌が世界一豊富で容易に手に入る日本と比べたら、どの国の雑誌も穏健に見えるもの。

建物を下り、交差点へ歩くと警察官の人形が立っていた。これがまたリアルで、後ろ姿を見たら本物と思うほど。つい「お疲れ様です」と声をかけたくなる。

さらに周辺を歩いていると、こういう寺院があった。かなり立派そうな寺院なので入ってみることにする。

後で調べたところ、ここはワット・サケー(Wat Sakae)という寺院だった。本堂はかなり豪華で、規模が大きい。

本堂の周りにはこういうレリーフがずらりと並んでいた。おなじみのマッカリーポンの木をモチーフにしたものが多いが、レリーフの手前に細いロープが張ってあるので不謹慎ながら美女果というよりも首吊りに見えてしまう。

本堂に上がる階段はあるが、周辺には誰もいないし、ゲートも半分閉まっているので入っていいものかどうかわからない。しばらく周囲を歩いてみたが、結局中に入ることは諦めた。

ただし、帰国後に調べたところ本堂に入ってみた人はいるようだった。金色の涅槃像や仏足石などが置かれていたらしいが、特に手の込んだものでもなさそうな感じなので、見逃したことはそれほど残念ではない。次回ここへ来る機会があれば、その時は本堂に入ってみることにする。


昼12時、散策を終えてホテルに戻り、荷物を受け取ってからバスターミナルへ移動することにした。ホテル前からバイクタクシーに乗り「バスターミナルまで」と告げると、走り出してから運転手が「バンコクへ行くのか?」と聞いてきた。こちらは当然、市街から少し離れている新バスターミナル(バンコクからの到着、ノーンタイへの出発、ノーンタイからの到着と、これまで3回利用している)へ行くものと考えていたが、バイクタクシーで連れてこられたのは市街にある旧バスターミナル。ここからもバンコクへのバスが出ているので、運転手はこちらでいいだろうと考えたようだ。

バイクタクシーの料金は、新バスターミナルへ移動した時と同じく60バーツ。ここは新バスターミナルよりもずっと近いので「距離が短いんだから安くしてよ」なんてことも言えたかもしれないが、値切るのはやめておいた。私としては、これで両方のバスターミナルを見ることができたので、それはそれで得だったと考えている。

カウンターで12時40分発のチケット(220バーツ)を買い、乗り場へ行くとすでにバスは待機していた。乗り込んで、ほぼ定時に出発。再びこの町を訪れるのはいつになるだろう。