アルメニア旅行記(タテヴ修道院)

ゴリス滞在2日目。この日はゴリス近郊にあるタテヴ修道院へ行くことにしていた。雰囲気のよさそうな修道院だけでなく、そこへアクセスするための「世界一長いロープウェイ」にも興味があり、今回の旅行でもっとも楽しみにしていた場所のひとつになる。


朝8時に起床。ベランダから外を見ると、残念ながら天候は小雨。しかし霧にかすんだ周囲の景色は本当にきれい。

朝食後、フロントで「タテヴ修道院へ行きたいけど、どういう手段がありますか?」と聞いたところ、バスはないことはないが日帰りできないらしいので、タクシーを呼んでくれるということになった。いったん部屋に戻って休憩し、10時に出発。

タクシーといっても車を見ると明らかに白タクで、おそらくホテルのスタッフが知り合いを呼んだのだろう。こちらとしては、スタッフの紹介なら特に警戒する必要もないし、白タクでも別に構わない。運転手は年配の男性。

天候は、ずっと小雨が続いている。雨がひどくならないことを願いながら、30分ほどで Halidzor という村にあるロープウェイ乗り場に到着した。


ロープウェイ乗り場があるのは崖の上。チケット売り場と土産物店がある建物以外、周囲に建物は見えない。雨は止んでいるが、しかし寒い。

まずはチケット売り場でロープウェイのチケットを購入した。値段は往復で5,000ドラム。建物の崖に面している側が展望所になっていて、本来なら絶景が眺められるのだろうが、この日はこの通りすぐ下の集落しか見えない。

しばらく眺めていると、雲が集落を覆っていった。まるでスティーブン・キングの「霧」を思わせる風景で、つい「この中に巨大な昆虫がいて…」なんてことを想像してしまう。

ちなみに、建物の中の土産物店にいたアルメニア女性が超絶の美人で「写真を撮っていいですか?」という言葉が喉まで出かかったのだが、躊躇してしまった。これは今でも後悔している。

では、白タクはここで待っていてもらうことにして、ロープウェイでタテヴ修道院へ向かうことにした。しかしすごい霧で、ロープの先が見えない。

ゴンドラに乗り込んで出発。何と言っても全長5.7キロの「世界一長いロープウェイ」なので、ここからの景色も楽しみにしていたのだが、眺めは下の写真の通り。

ゴンドラ内には周囲の景色についての説明(アルメニア語と英語)も流れるが、まったく何も見えないのでゴンドラ内ではみんな失笑していた。

ただ、タテヴに着く直前に一時的に霧が晴れ、景色を眺めることができた。

再び霧に覆われたロープウェイ乗り場に到着し、ゴンドラを降りた。乗っていた時間は15分ほどで、景色はほとんど見えなかったがギネスにも認定されている世界一長いロープウェイに乗れたのはよかった。貴重な体験だったと思う。


霧の中を歩いていくと、修道院の建物がぼんやりと見えてきた。この感じはなかなか雰囲気がよかったので、このときだけは「小雨でよかったかも」なんてことを思ったりした。

こちらがタテヴ修道院のメインの教会。いかにも幽霊が現れそうな景色に感動した。古いモノクロ映画に出てきそうな感じ。

教会に入る前に、外壁のほうへ歩いてみた。外の渓谷を眺めてみると、見事に霧にかすんでいる。

続いて、教会に入ってみた。あまり飾り気がなく、ちょっとがらんとしているところが逆に気に入った。この修道院が建てられたのが9世紀だそうで、その頃からほとんど変わっていないのかもしれない。祭壇も質素なもの。

天気がいいときはきれいな光のカーテンが現れるらしいが、この日は天気が悪いので見られなかった。これだけが残念だったが、観光客が賛美歌を合唱しているところも見られたし、雰囲気は本当によかった。

教会を出て、しばらく周囲を散策。

外壁の中には、こんなきれいなアーチもあった。

散策しているうちに次第に霧が晴れてきて、建物がきれいに見えるようになった。アルメニアの有名観光地だが、さすがにこんな辺鄙なところ(失礼)まで来る人は少ないので、観光客は多くはない。修道院内は静かなもの。

先ほどはほとんど見えなかった渓谷も、今はきれいに見える。

1時間半ほど修道院内を散策したが、なかなか雰囲気のいい場所だった。この教会が建てられた9世紀といえば日本は平安時代だし、こんなに古い教会を見る機会はそうはないと思う。何しろ崖の上というロケーションが抜群にいいし、アルメニアの有名観光地なのに人であふれていないところもいい。首都エレバンから日帰りで来るのは厳しいが、拠点になるゴリスの町も雰囲気がいいし、アルメニアでお勧めの観光地といえる。


ロープウェイで戻る前に、行ってみたい場所がもう1ヶ所あった。修道院から見て渓谷の反対側に、修道院の全体を見渡せるビューポイントがある。詳しい場所は知らなかったものの、一本道なのでそちらへ歩いてみた。

この一本道は大きなU字型になっていて、カーブのところで渓谷の反対側に移ってから戻ってくると修道院の全体が見渡せた。なかなかの絶景で、修道院が崖の上に建っていることがよくわかる。

修道院のアップ。先ほどは、崖に開いているアーチ型の穴の部分から渓谷を眺めていたことになる。

しかし何の目的で置いてあるのかは知らないが、あのブルーシートが邪魔。あんな目立つ場所に置かなくてもいいと思うのだが、ずいぶんと無粋なことをやるものだ。

修道院方面だけでなく、その他の方向の景色もきれい。

しばらく景色を楽しんだ後、ロープウェイ乗り場方面へ戻った。


ロープウェイに乗る前に、インフォメーションセンターがあったので立ち寄ってみた。

ここでトイレに行った後、カフェがあったのでパンとコーヒーの昼食。ずっと歩きっぱなしだったので、かなり楽になった。タテヴへ来る際は、ここのカフェはお勧め。

では、ロープウェイで戻ることにした。

来たときよりは霧が晴れていたので、はるか眼下の峡谷を眺めることができた。天候が快晴だったらさぞやきれいな景色なんだろう。

15分ほどで麓に到着すると、運転手が待っていた。すぐに帰りたそうにしている運転手に少しだけ待ってもらい、土産物店へ。目的は土産物ではなく超絶美人のアルメニア女性で、ここでも「写真を撮っていいですか?」と声を掛けるのを躊躇してしまった。こんなに後悔するくらいなら、思い切って話しかけてみればよかった。

ロープウェイ乗り場を出発すると、周囲はすごい霧で前はほとんど見えない。ここでもスティーブン・キングの「霧」の影響で巨大な昆虫が現れそうな気持ちになってしまった。

30分ほどでゴリスの町に戻り、運転手に10,000ドラムを払って白タクを下りた。このときの料金10,000ドラムというのは、おそらく相場より高いと思う。ゴリスの街中で客待ちしているタクシーを利用したら往復6,000~7,000ドラム程度で行けたと思うが、今回はフロントで呼んでもらったこと、ロープウェイ乗り場で3時間半ほど待機してもらったことから、多めに払っておいた。相場より高く払うのが絶対に嫌という人もいると思うが、私はこのあたりは臨機応変に対応している。

時刻は午後2時半過ぎで、タテヴ訪問に半日かかったが、この修道院はお勧め。アルメニア旅行の際はぜひ訪れてほしい。