ジョージア旅行記(ズグディディ)

アブハジアを出国し、この日は国境の町ズグディディに滞在することにしていた。もっとも、ジョージアから見ればアブハジアはあくまで自国の一部なのだから、ジョージアでは国境の町と言ってはいけないはず。


アブハジアとの境界を流れるイングリ川を渡ってジョージアに戻ると、こういうオブジェがある。銃身が縛られて発射不能になった銃はアブハジアを向いていて、つまりこれがジョージア国民の願いという意味だと思う。

この銃を見ていると、なんだか切ない気持ちになる。ジョージア国民の願いが叶う日は来るだろうか。

風光明媚な景色を眺めながらトランジットエリアとなっている道路を歩き、ジョージア側のチェックポイントに戻ってきた。ここでパスポートを見せ、ジョージアに再入国。

ただし、ジョージアとしてはアブハジアは自国の一部という扱いなので、パスポートにスタンプなどは押されない。あくまで国内移動というのが建前。

タクシーが何台が客待ちしていたので、ここからズグディディ市街へ向かうことにした。タクシー料金は20ラリ。この日は市街中心部にある HOTEL MARS というところを予約していて、印刷していたバウチャーを見せてホテルまで直行してもらうことにした。このホテルを選んだのは、値段の他に名前が面白かったという理由もある。

ところが、運転手にはホテルの名前が通じたと思っていたのだが、着いたのは HOTEL ZUGDIDI の前。「いや、ここは MARS じゃないだろう」「ここがホテルだ」「いやズグディディと書いてある」「いや、ここだ」というやり取りを経て、もう面倒になったのでタクシーを下りた。このときの運転手にとっては、ホテルといえば無条件で HOTEL ZUGDIDI のことだったらしい。

一応、ホテルに入って「ここはホテル・マース?」と聞いてみたが、当然ながら「ここはホテル・ズグディディだ」という答えが返ってきた。「そうですよねえ」と思いながら、お互いにキョトンとした感じでフロントの初老の男性と別れた。

HOTEL MARS は、歩いて数分のところにあった。こちらがホテルの外観。

ホテルのロゴを見ると、MARS だけあって火星と思われる O のまわりを2つの衛星(フォボスとダイモス)が回っている…と思ったが、よく見ると天体が3つある。これらは火星の衛星という意味ではないみたい。

ホテルに入ろうとすると、やはり公転している天体は3つ。大きさから考えて、火星より内側にある3つの惑星という意味なんだろうか。いずれにしても、このホテルのオーナー(30代くらいの男性だった)は宇宙マニアなのかもしれない。

2階にあるフロントでチェックインし、部屋に移動。写真からわかる通り、かなり快適なホテルだった。宿泊料金は110ラリ。部屋は特に火星とは関係ない。

30分ほど休憩してから外出。まずはズグディディの観光名所「ダディアニ宮殿」へ行ってみた。宮殿のまわりは、かなり広い公園になっている。

夕方だからなのか噴水は止まっているが、それでもかなり雰囲気のいい公園ということはわかると思う。公園内で大きく目立っているこちらの建物がダディアニ(Dadiani)宮殿。

時刻は午後4時半ごろだが、まだ建物の中に入ることができた。5ラリでチケットを買い、館内を見学。ただし室内は写真撮影禁止なので、階段のところだけを載せておく。

このダディアニ宮殿は、1839年にダヴィット・ダディアニという人物によって建設されたもの。ズグディディという町自体が19世紀に大きな権力を持っていたダディアニ家が居住地とした町だそうで、こういう権力者の例にもれず美術品を大量に収集していたという。

今ではかなり貴重なコレクションになっているそうで、美術館としてもかなり楽しめる宮殿だった。決まりに従って写真は撮っていないので、見たい人は直接訪れてほしい。

美術品を堪能した後、外から宮殿を眺めてみた。無骨な中にも優雅さがあり、なんだか格好いい建築様式。

宮殿の横に白い教会があるが、このときは閉まっていて入れなかった。また、地図を見ると公園の横に広大な植物園があることになっているが、すでに夕方だからなのか、こちらも中に入ることはできなかった。残念。

その後、公園の周辺をしばらく散策。小さな遊園地があったが、あまり人がおらず閑散としていた。おそらく、この日が平日(木曜日)だからだと思う。

いくつかの遊具。回転ライドはちょっと整備不足で、これは本当に動くんだろうか。メリーゴーラウンドだけは、動いているところを見ることができた。

規模は小さいものの、それなりの遊具が並んでいる遊園地だったが、一方でこういうシーソーもあった。このギャップが面白い。

さらに散策していると、こういうアパートがあった。壁に大きく黒と白の手が描かれていて、これにはどういう意味があるんだろう。何かキリスト教的な意味があるのかと思ったが、そのあたりの知識はあまり持っていないので、わかる人がいたら教えてほしい。

広場にあったのがこちら。これは何と読むんだろう。最初の部分はおそらく「I LOVE」か「WE LOVE」だと思うが、ジョージアのアルファベットが読める人がいたら教えてほしい。

こちらの大きなドーム状の建物は体育館だった。近々、こういうイベントが行われるらしく、このときはその準備が行われていた。「空」という漢字が書かれているので空手の大会だろう。コーカサス地方というと、なんとなく格闘技が盛んなイメージがある。

通りを歩いているとき、急に何かの音楽が聞こえてきたと思ったら、こういう車両が通って行った。おそらく、何かパイレーツものの映画の宣伝だと思う。ちょっと珍しいものを見ることができた。

さらに街中を散策。歩道で犬が堂々と寝ていたりする。

歩き疲れたので、いったんホテルに戻って休憩。夜7時に外出し、公園内にあった GARATA というトルコ料理の店で夕食にした。スフミに続いてのトルコ料理になるが、一人でも入りやすいのがトルコ料理店だったというのが一番の理由。

ビール、スープ、パン、キョフテ、食後のチャイで39ラリ。味は十分うまく、さすがトルコ料理に外れはない。

この旅行記を読んでいる人は私が酒好きと思ってしまうかもしれないが、普段はまったくと言っていいほど酒は飲まない。ビールを飲むのは旅行中くらい。

夕食後も、しばらく散策。暗くなってからも、特に治安上の問題は感じられなかった。

この SPAR という店でパンと水などを買ってから、ホテルに戻ることにした。SPAR はかつては日本でもコンビニエンスストアを展開していたが、今は撤退しているはず。

この店で買ったペットボトルの水が、ちょっと面白かった。コーカサス地方は格闘技が盛んというイメージを持っていたが、ここにも柔道 JUDO と書かれている。

ズグディディはジョージアの有名観光地スワネティ地方(今回の旅行では日数が足りず、残念ながら諦めた)やアブハジアへ向かうときのゲイトウェイとして通過してしまう旅行者がほとんどだと思うが、いい感じの落ち着いた町だった。日程に余裕があれば、通過せずに1日くらい滞在することをおすすめする。

夜8時半にホテルに戻り、この日は0時に就寝。翌日は首都トビリシへ戻ることになる。