ブルガリア旅行記(ソフィア)

ホテルを出て、先ほど歩いていた大通りへ。ここからバス停とは反対方向へ歩くと、ソフィアの観光名所が現れてくる。もっとも、ソフィアはそれほど観光スポットが多いわけではないので、主なものを見て回るには1日あれば十分だと思う。

ただし、後述する理由でソフィア駅へ行く必要があるため、アレクサンドル・ネフスキー寺院や国立美術館などは帰ってきてから見ることにして、大通り沿いにあるいくつかの建物だけを見ることにした。

まずは旧共産党本部を見ようと思ったが、その前に広場にステージが作られていた。夜にはコンサートが行われるのかもしれない。

ここは夜になってからまた来てみることにして、先へ進むと大統領官邸がある。

建物は立派だが、入口に警備員が2人いるだけだし、なんだか警備が手薄という感じがするところが面白い。建物に近寄って触ることもできるし、こんなことでいいのかという気もする。テロなどは考えていないのだろうか。

そして、こちらが旧共産党本部。未来世紀ブラジル の情報省のような、まさにイメージ通りの威圧的な建物。

この建物は現在は議員会館ということなので、中には入れない。

先へ歩くと、おそらくテレビ番組の撮影が行われていた。通行人として映り込もうかとも考えたが、やめておいた。

その先の交差点にあるのが自由の女神像。かつては旧共産圏のお約束としてレーニン像が建っていたそうだが、2001年に自由の女神像に変えられたという。

こう言っては失礼だが、アップで見ると少し雑な感じで「もう少しきれいに作れなかったの?」という気にもなる。

交差点に面して聖ペトカ教会がある。ずいぶんと小さな教会で、しかも半地下という目立たない場所にあるが、これはオスマン帝国に支配されていた時代に建てられたためだという。

近くにある「バーニャ・バシ・ジャーミヤ」というモスクに配慮して、目立たないように半地下に作ったらしいが、当時は屈辱的だったのかもしれない。下の写真がバーニャ・バシ・ジャーミヤの遠望。

現在のブルガリアでは、ブルガリア正教会が80%以上を占めている。ブルガリアをオスマン帝国から解放したのがロシアということで、ブルガリア人は現在でも非常に親露的ということだが、今回の旅行ではそれを実感する場面には出会わなかった。(こちらもブルガリア語とロシア語の区別などはつかないし)


翌日は朝からリラ修道院へ向かう予定で、帰りはそれほど遅くはならないとは思うが、できれば今日のうちに2日後の列車のチケットを購入しておきたい。そこで、これからソフィア駅へ向かうことにした。

自由の女神像が建っている交差点の下に地下鉄のセルディカ駅があり、ソフィア駅へは地下鉄で簡単に行くことができる。チケットを買うと、料金は距離に関係なく一律1レフ(約72円)だった。実はソフィアのバスとトラムと地下鉄はすべて一律1レフで、交通費は非常に安い。西欧諸国では考えられない物価の安さで、旅行者としては非常に助かる。

改札を通過して地下に下りるとホームがある。

旧共産圏というと駅や地下鉄の撮影は禁止されているというイメージがあるが、ここでは何の問題もなかった。今のところ、旧共産圏ということを実感させるようなことは何もなく、もはやブルガリアは西側諸国と変わらない感じがする。

ホームには、あと何分で列車が到着するかが表示されていて、その時間通りに列車がやってきた。このあたりは、ダイヤが乱れがちなイギリスの鉄道もブルガリアを見習ってほしい。

セルディカから2駅目のソフィア中央駅で下り、地上に出ると何だかだだっ広い風景が広がっている。下の写真は駅ではなくバスターミナルで、ここならカフェかファーストフード店があるだろうと思い、入ってみることにした。駅ではなくバスターミナルを選んだのは、こちらのほうがずっときれいな建物だったため。

バスターミナルは、建物内もかなりきれい。今回はここからバスに乗ることはないが、来てみてよかった。2階にカフェ(並んでいる料理の中からいくつか選び、皿に盛ってもらうタイプの店)があり、ここで昼食にした。

では、続いてソフィア駅へ。先ほどのバスターミナルとは違い、かなり古そうな建物。

中に入ると、予想通り薄暗い。チケット売り場を探すと、1階ではなく地下という表示があった。さすがに首都の主要駅だけあって、キリル文字のブルガリア語だけでなく英語表記もあったのは助かった。

古そうなエスカレーターで地下1階に下り、歩き回っているとチケット売り場が見つかった。地下1階は全体的に薄暗いが、ここだけは明るい。(ただし、すぐ近くにトイレがあり、窓口の前にあるベンチのあたりには ものすごい数のハエが飛び回っている ので長居する気にはなれない。私もチケットを購入したらすぐに退散した)

ここで2日後のブルガス行きのチケットを購入する必要がある。最初は英語が通じそうな若い女性が座っている窓口へ行ってみたが、ブルガス行きは別の窓口と言われた。指定された窓口に行き、年配の女性に「Sept.16, SOFIA → BURGAS, KARC 1」と書いた紙を見せて説明すると、すぐに理解してくれた。KARC 1 というのは1等という意味。

ブルガス行きは1日に数便あり、ここでは朝6時半の急行列車のチケットを購入できた。到着予定時刻は午後2時半で、約8時間かかることになる。長い移動だが、私はもともと鉄道やバスで移動する時間は好きなので、特に苦にならない。約400キロを移動するのに8時間もかかっておきながら急行列車(Express)を名乗っていいのかという気はするが。

チケットの値段は34レヴァ。この距離を移動して約2,400円なのだから(しかも1等座席)、ブルガリアの交通費は安い。

チケットも無事に購入でき、これで市街中心部に戻ることにした。


地下鉄でセルディカ駅へ戻り、続いて国立美術館へ行ってみることにした。かつて王宮として使われていたという豪華な建物で、現在では主にブルガリア人芸術家の作品が展示してあるという。

建物に入ると、こんな彫像が出迎えてくれる。

この日はブルガリア人の芸術家ではなくフランス人のオーギュスト・ロダン展が行われていた。ロダンといえば「考える人」くらいしか知らないので、他の作品も見てみようと思い、6レヴァでチケットを買って中に入った。

かつての王宮だけあって、館内はかなり雰囲気がいい。来訪者も多く賑わっている。

しかしながら、たくさん並んでいた彫刻作品を見てびっくり。

ええーーー?

ロダンって、こんな作風だったの? こういうイメージがなかったので、なんだかずいぶんとエロティックな彫刻作品が並んでいることに衝撃を受けたが、これは美術が好きな人の間では常識なんだろうか。こう言っては失礼だが、秘宝館に展示してありそうな作品群。

それから、ロダンといえばやはりこれ。

この作品はもともと「地獄の門」という作品の一部で、地獄の門の上で思索にふける人物を現している(と言われている)。

もっとも、「考える人」の横にも大股開きでモロ見えの彫刻が宙吊りになっていたりするから気が抜けない。一体これは何なんだろう。

それから、こういうデッサンが展示してある部屋もあった。こちらもこんな感じのデッサンばかりで、普通に考えれば秘宝館に展示してありそうな絵なのだが、彫刻作品を見た後だけに衝撃を感じなくなってきた。

この後もしばらく館内を回り、ロダンのイメージがすっかり「エロじじい」に変わったところで国立美術館を出た。今まで「考える人」しか知らなかったロダンの本当の作風を知ることができたのは大きな収穫だった。最初は「何もブルガリアまで来てロダンの作品を見なくても」という気持ちも少しだけあったのだが、来てみてよかったと思う。

国立美術館の横にある林の中には、こういうオブジェが並んでいた。ミニはよくできている。

国立美術館を後にして、続いてアレクサンドル・ネフスキー寺院へ歩いてみた。19世紀のロシアとオスマン帝国の戦争で亡くなったロシア人兵士を慰霊する寺院だそうで、驚くほど巨大。

内部の装飾も、大理石やメノウがふんだんに使われていて豪華絢爛。なぜロシア人兵士だけなのかというと、この戦争でブルガリアがオスマン帝国から解放されたため。

寺院の近くを歩いていると、こういう石碑があった。

1999年10月に日本とブルガリアの国交回復40年を記念して日本から送られた桜の木について記したもの。当時の首相の名前でも刻まれているかと思ったら、日本側の名前は当時のブルガリア大使だった。

自由の女神像がある交差点に戻り、ツムという大型デパートに入ってみた。歩き疲れたので、ここならカフェでもあるだろうと思ったのだが、建物だけは立派だが内部は閑散としている。店舗の多くが閉まっているし、歩いている人もほとんどおらず、なんだか廃墟のような感じ。結局、1階と最上階を往復しただけで外に出た。

次にセントラル・ハリというショッピングセンターに入ったところ、こちらは賑わっていた。ここのカフェで休憩。

ここはかつて中央市場の建物だった場所で、現在はショッピングモールになっている。いろいろな店があって歩いていると面白い。

しばらく周辺を散策した後、トロップス・フーズという安そうなレストランで夕食にした。

レストランといっても、並んでいる料理の中から選んで皿に盛ってもらうタイプで(ブルガリアではよく見かける形式で、旅行者としては非常に助かる)、料理3品とアイスティで9レヴァほど。かなりたくさん食べても700円以下なのだから、この国は食事に金がかからない。

ホテルに戻る途中、広場のステージへ行ってみると観客が大勢集まっていた。(右下の写真の黄色い建物がロダン展をやっていた国立美術館)

そろそろライブが始まるのかもしれないが、いい加減に歩き疲れてきた。そこで、ライブ鑑賞は諦めてホテルへ戻ることにした。

いったんホテルに戻り、ホテルのアメニティに歯ブラシが含まれていなかったのでフロントでスーパーマーケットの場所を聞いたところ、歩いてすぐのところにある BILLA というスーパーを教えてくれた。

スーパーの BILLA は、入口は小さいもののエスカレーターで地下に下りると売り場面積は意外と広かった。歯ブラシの他に翌日の朝食などを買い込んでから、ホテルへ戻った。

なお、この時間はすっかり暗くなっていたが、通りを歩いていても特に危険そうな感じはしなかった。旅行前には治安が悪いという話も聞いていたソフィアだが、今回は全くそういう雰囲気を感じることはなく、どこが危ないのかわからない感じだった。もちろん、そうであっても注意するに越したことはないが。

夜7時半にホテルに戻り、早朝起床で疲れていたので10時半に就寝。