アイルランド旅行記(5日目)

(1998.7.15) Galway ~ Clifden

朝8時頃起床。8時半から朝食。アメリカ人らしい2人連れと、どの国の人かはわからなかったが女性1人が一緒だった。アメリカ人の方は、アイリッシュブレックファーストではなくトーストとスクランブルエッグを食べていた。

朝食後、ミセスにロンドンへの電話の仕方を尋ねてみたが、やはりイギリスの国番号の後に1を押し、それから相手の電話番号を押すそうだ。昨日はそれでうまくいかなかったのだが。

9時ごろ B&B を発ってゴールウェイまで歩いた。ユールスクエアに公衆電話があったので、電話をかけてみた。しかし、やはり何度やってみても “This is the Telecom Eireann, ~” という声が聞こえてくるだけである。期限は今日の夜10時で、それまでにリコンファームしないと帰りの飛行機の予約が取り消されてしまう。多少あせっていろいろと試してみたところ、ようやく大韓航空に電話が通じた。結局、イギリスの国番号の後に、最初の0を取った相手の番号を直接押せばよかったのである。ほっとして “I would like to reconfirm.” というと、相手が日本語で対応してくれた。数日ぶりに日本語を聞いたが、日本人専用の番号だったのだろうか。

それからゴールウェイ駅にあるバスセンターでクリフデンまでの往復のチケットを買い、発車時刻までユールスクエアセンター内のCD店や書店を見てまわった。

11時15分に、ゴールウェイ駅前のバスセンターからクリフデン行きのバスエーランで出発。途中ゴールウェイ大聖堂の横を通ったりしながらしばらく市街地を通り、やがて市外に出ると急に荒涼とした景色になった。ただ、ここの景色はアラン諸島とは違い、日本でいうと阿蘇の景色のようなもので、樹木がほとんどなく草に覆われた山と平地と湖が続いている。ときどき小さな町が現れてバスが停車するが、どれも絵に描いたようにこじんまりとした美しい町で、こういうところに住みたくなった。

12時40分頃、クリフデンに到着。到着したところは町で一番の大通りらしい。道路の端に車がたくさん駐車しているが、違法駐車ではなく端の部分が駐車場になっているようだ。小さい町で、しばらく歩いていたらすぐに元の場所に戻ってきた。とりあえず泊まるところを探そうと思い、大通り(マーケットストリート)にあったツーリストインフォメーションに入って B&B を探していると言うと、町の地図を見せてこの辺りに B&B が多くあると教えてくれた。つまり自分で探せということらしい。自分で探すことにして、最初に部屋数が多そうなゲストハウスに入ってみた。今日泊まれないかというと、シングルはないという。次に近くの B&B に入ってみたが、ここもシングルはないそうだ。2人なら泊まるところはいくらでもあるようだが、1人だと難しいかもしれない。そう思いながらマーケットストリートを歩いていると、パブの2階が B&B になっていたのでパブに入って泊まれるかどうか聞いてみたら、厨房にいたミセスが少し考えてから20ポンドでどうかと言ってきた。もっと安いところがあるかもしれないが、探して歩くのも面倒なのでここに泊まることにした。部屋の準備ができるまでしばらく店内のテーブルに座って待っていたら、紅茶とパンとビスケットを出してくれた。

B&B (CLIFDEN)
クリフデンのパブ兼B&B

ガイドブックによると、クリフデン郊外にスカイロードという約15kmのサイクリングロードがあり、ここからの景色が素晴らしいということだったので、この日は自転車でスカイロードへ行く予定にしていた。

部屋はパブの2階ではなく裏の別の建物の中にあった。部屋に荷物を置いて町を歩いていると、すぐにレンタル自転車の店が見つかった。2日間借りることにして、街中の見物は翌日にして早速スカイロードへ向かった。スカイロードの入り口は町のはずれにあり、最初は急な上り坂が続くがその後しばらくは割と平坦な道が続いた。

SKYROAD
スカイロード

スカイロードについては、地球の歩き方に書かれている通り「おとぎの国に迷い込んだような雰囲気」である。半島の海岸に沿った道で、最初は B&B が数軒あったが、しばらく行くと人家はほとんど見なくなった。高い木はなく、ところどころにある低い潅木以外は草に覆われている。車と自転車はときどき通るが(一度、運転手から “Welcome !” と声をかけられたときは嬉しかった)、それ以外は人の姿を見ることもなく、実に静かである。

15分ほど行くと左側に古い門のようなものがあり、そこを過ぎてからしばらく上り坂が続いた。やがて左側の視界が開けて海が見えはじめ、上りきってから左後方を見ると、「地球の歩き方」にも載っている古城跡が見えた。斜面には羊が散らばっている。

CASTLE (CLIFDEN)
スカイロードから見える城跡

ぜひあの城跡へ行ってみたい。そう思って道を探すことにした。

先ほどの門のところまで後戻りすると、海側に下りていく道があったのでそちらへ行ってみた。狭くてかなり急な坂道を下りていくと、海辺に出て大きな道路に合流し、レストランの前に車が数台止まっていた。みんなマリンスポーツをやりに来ているようで、ヨットが数隻見える。道はすぐ先で行き止まりになっているようで、ここからは城跡には行けそうもない。今度は急な上り坂を自転車を押しながら歩いて上り、スカイロードまで戻ったが、どこにもそれらしい道は見当たらない。残念だが諦めようかと思ったとき、先ほどの門を思い出した。そこへ行ってみると、門の先に道が続いていた。考えてみれば、これはあの古城の城門跡ではないのか。なんですぐに気がつかなかったのか不思議だ。

GATE (CLIFDEN)
城跡へ続く門

門をくぐると、かなりのでこぼこ道が続いていたので自転車を押しながらゆっくりと斜面を下っていった。両側は柵になっていて、道の外側には羊や馬が放牧されていた。人は誰も歩いていない。

GATE (CLIFDEN)
城跡の遠望

やがて、城跡に着いた。壁以外はほとんど壊れているようである。いつの時代の城だろうか。

CASTLE (CLIFDEN)
近くから見た城跡

城跡の前の草地に2人だけ観光客らしい人が座っていたが、他には誰もいない。城跡の中に入ってみることにした。(なお、私が持っている「地球の歩き方97~98年版」には書かれていなかったが、日本に帰ってから98~99年版を読んでみたところ、「これらの遺跡はすべて私有地にあるのでみだりに立ち入らないように」と書かれていた。知らなかったので許してください)

城跡の中に入ってみたが、屋根も床も残っておらず地面には瓦礫しかない。何百年前かわからないが、ここにはどのような生活があったのだろう。そう大きな城ではようだが、地方の貴族の城館だったのだろうか。そういうことを考えながらしばらく城の中を歩き回った。

城跡を出ると家族連れらしい観光客が来ていたが、私と入れ替わるように城の中に入っていった。周囲を見渡すと、向こうに別の建物跡があったので行ってみることにした。城と同じ時代の建物のようで、僧院という感じがする。こちらの方は、正面の壁はほぼ残っているが、他はほとんど崩れていた。アーサー・マッケンの小説によれば、こういう場所には邪悪な精霊がいるのだろうが、私は何も見なかった。

それからしばらく城跡の周辺を歩き回ったが、まだスカイロードの先が長いこともあり、名残惜しかったがここを離れることにした。

スカイロードに戻り、先へ進むとアップダウンが多くなってきた。しだいに海が近づいてきて、海側の斜面が急になってくる。

SKYROAD
スカイロード

やがて道が二手に分かれていて、左が LOWER SKYROAD 、右が UPPER SKYROAD となっていた。 UPPER SKYROAD の方へ進むと、急な上り坂がしばらく続き、上りきったところで道がやや広くなっていて車が数台止まっていた。スカイロードで一番高いところらしく、ここからの眺めは抜群に良い。海に島がいくつも浮かんでいる景色は日本でもあちこちで見ることができるが、ここから見える島はどれも平坦で、樹木がほとんどなく草に覆われているところが日本と違う。

少し休んでから自転車で先へ進むことにした。自転車にとっては楽な緩やかな下り坂が長く続き、LOWER SKYROAD と合流するあたりで半島の先端を通って反対側に回りこんだ。そこからは、小さなアップダウンはあるものの割と平坦な道になった。半島のこちら側は小さな湾に面していて、その向こうの陸地にはぽつんぽつんと人家がある。ああいうところに住んでみたい。

SKYROAD
スカイロードからの遠望

道の両側の斜面には羊が数多く放牧されている。この辺りではごくまれに車が通るだけでまったく人の姿を見かけす、しだいに不安になってきた。というのも、この道がクリフデンに戻るのかどうか疑問に思われてきたからだ。「地球の歩き方」には周遊路と書いてあったように思うが、どうも確信がない。荷物はすべて B&B に置いてきたので確認できず、不安に思いながらそのまましばらく先へ進んだ。

やがて道の先が見通せるところに来たが、どうも道は山の中に入っていっているようで(クリフデンの北にあるコネマラ国立公園のようだ)、町に戻るようには見えない。ここで引き返すことにした。

帰りは LOWER SKYROAD を通ることにしたが、これが失敗だった。どうも UPPER SKYROAD より遠回りのようなのである。少し下り坂が続いた後、平坦な道が長く続き、数軒の B&B の横を通りすぎてから長い上り坂になった。短く急な上り坂ならいいのだが、こういうだらだらした上り坂が長く続くのは非常に疲れる。結局、途中からずっと自転車を押して歩いた。

ようやく UPPER SKYROAD と合流し、そこからは自転車に乗って7時ごろクリフデンに戻った。5時間ほどスカイロードにいたことになる。

パブに入ってミセスにスカイロードのことなどを話したら、いくつかパンフレットをくれた。それを見ると、ある程度予想していたことだが、スカイロードは周遊路であった。道は山の中に向かっているように見えたが、途中でクリフデンに戻る道が分岐していたのだろう。パンフレットにあった地図を見ると、1周約15kmのうち12~13kmくらいのところまで行っていたようである。往復で25kmほど走ったわけだから、これだけ疲れたのも当然だ。

パブで夕食を取ることにして、ギネスビールを飲んでアイリッシュシチューを食べたらかなり眠くなってきた。まだ明るいうちに部屋に戻って就寝。