チュニジア旅行記(チュニス / バルドー博物館、シディ・ブ・サイド)

今回の旅行では福岡空港を早朝に出発するので、前日の夜に福岡へ移動し、博多駅近くのカプセルホテルに宿泊した。(朝、佐世保から移動したのでは間に合わない)


福岡空港でチュニスまでの搭乗手続きを行い、7時10分の全日空2142便で成田空港へ。1999年のロシア~エストニア~ラトビア旅行以来、6年ぶりに成田空港を訪れた。相変わらず大勢の旅行者でごった返していて、行列の長さもかなりのもの。やはり福岡空港で出国するほうがはるかに楽だと思う。

空港内の銀行でユーロを入手し、旅行中は必要ないと思ったジャンパーを手荷物預かり所に預けてから日本を出国。全日空209便でフランクフルトへ向かった。


今回、海外旅行で初めて日本の航空会社を利用したが、さすがに設備とサービスはなかなかのものだった。ただ、機内は大半が日本人なので、これから異国へ向かうという気分を盛り上げるのはちょっと難しいかもしれない。

フランクフルトでルフトハンザ機(機内をざっと見たところ日本人は私1人だった)に乗り継ぎ、チュニス・カルタゴ国際空港に深夜0時過ぎに到着。入国審査にちょっと時間がかかり(どうやら入国審査官が「日本人はビザが必要かどうか」を確認しているようだった)、私にとって区切りの20ヶ国目になるチュニジアに入国したのが0時40分ごろだった。まだ開いていた銀行でチュニジアの通貨ディナールを入手したところ、1ディナールは約80円だった。

これからチュニス市街へ向かうわけだが、空港を出るとさっそく「タクシー?」といって運転手たちが寄ってきた。適当に交渉して市街へ向かうことにしたが、連れて行かれたのはタクシー乗り場ではなく一般の駐車場。しかも、車はどう見てもタクシーではなく自家用車。

つまり明らかに白タクなのだが、悪い人ではなく単なる小遣い稼ぎにやっているような感じだったので、このまま市街へ向かうことにした。多少緊張して乗っていたが、特に問題なく午前1時に市街中心部にあるエル・ハナ・インターナショナルホテル前に到着した。料金は10ディナール払ったが、普通にタクシーで行けば5ディナール程度らしいので、あとで考えてみたらちょっとぼられたようである。しかしまあ、深夜だったこともあり、これは仕方ないと思うことにした。

チュニス滞在中に3泊したエル・ハナ・インターナショナルホテルは、さすがに5ツ星だけあって今まで宿泊したホテルの中で一番豪華だった(何しろドアマンとポーター付き)。滞在中、日本人の団体客と何度も遭遇したので、ツアー旅行ではよく利用されるホテルらしい。市内のメインストリート「ハビブ・ブルギバ通り」に面していて、市内観光にはかなり便利なホテルだった。

バルドー博物館

翌日、まずは「世界一のモザイクコレクション」が見られるというバルドー博物館へ行くことにした。ホテルを出て、メトロ(路面電車)の駅へ向かう。

「メトロ」といえば普通は地下鉄のことだが、チュニスでは路面電車になる。それなら「トラム」ではないかと思うのだが、ここでは「メトロ」というらしい。

町の中心にあるバルセロナ広場へ向かったつもりだったのだが、どうやら方角を間違えたらしく、メトロの終点のチュニス・マリン駅まで歩いてしまった。ここでメトロの4号線に乗り、バルドー博物館の最寄り駅であるバルドー駅へ向かう。途中のバルセロナ駅で車内は満員になり、約30分でバルドー駅に到着。

バルドー駅のすぐ近くにバルドー博物館がある。観光客のほとんどがチュニス滞在中に一度は訪れる場所だと思うが、やはりメトロで訪れる人は少ないらしく、駅から博物館方向へ向かったのは私1人だった。(バルドー駅周辺は交通量が多く、道路を渡るのにちょっと苦労する)

バルドー博物館の敷地内に入ると、広い駐車場が見える。まだ午前中なのでバスは数台しか停まっていなかったが、やはりここは団体客が多いのだろう。そのせいか、歩いて門を通っているときに守衛さんが私のほうを不思議そうに見ていた。

では、チケットを買って館内へ。料金は5.2ディナールだった。館内は3階建てでかなり広く、さすがに「世界一のモザイクコレクション」というだけあって大量のモザイクが展示されている。観光客がまだ少ない時間だったこともあってゆっくりと回ることができた。

しかしモザイクをこれだけ詳細に見るのも、おそらく初めてだと思う。近くで見ると不揃いな石をわりと適当に埋め込んであるだけのようだが、全体で見ると見事な図柄になっているのだから不思議なもの。床一面や壁一面を占めるようなモザイクも多い。下の写真で床に広がっているのは「ネプチューンの勝利」という巨大モザイク。

他にも狩猟や釣りなどの日常風景を描いたモザイクや、戦闘風景のモザイクなどが大量に並んでいる。ただし説明がアラビア語とフランス語なので、それぞれの作品名などはよくわからない。

この博物館はモザイクがメインだが、他の展示物もある。下の写真は広間に並んでいたブロンズ像。

下の写真はそのブロンズ像の一体。なかなかいい感じ。

1時間ほど館内を回った後、博物館を出ることにした。

出口付近にはミュージアムショップがあり、いろいろと土産物を売っている。ここで子供の教育用と思われる「モザイクキット」というものを見つけた。名前の通り、漆喰のような土台とたくさんの小さな石の破片がセットになったもので、自分でモザイクを作って遊ぶというもの。知人の子供のために買って帰ろうかとも思ったが、あまり喜ばれなさそうだったのでやめておいた。

ところで、博物館を出たところにあるベンチで休んでいると地元の子供たちが「ニイハオ」と声をかけてきた。こちらが「こんにちは」と返すと、驚いたように「ジャポン?」と聞いてきた。その感じからすると、どうやらチュニスでは日本人より中国人を見かけるほうが多いような感じだった。

シディ・ブ・サイド

バルドー駅からメトロに乗り、終点のチュニス・マリン駅で下車。ここはTGMという郊外列車との乗換駅になっている。下の写真がチュニス・マリン駅に停車中のTGM。

チュニス・マリン駅を出てしばらくは、チュニス湖の真ん中を横切っている砂州の上を通る。カルタゴ遺跡が点在しているカルタゴ地区を通り過ぎ、チュニス・マリン駅から30分でシディ・ブ・サイド駅に到着した。

シディ・ブ・サイド “Sidi Bou Said” は、地中海に面した丘の上にあり「チュニジアで最も美しい」といわれている町。ガイドブックには「チュニジアンブルーと真っ白な壁が映える町」などと書かれているが、実際に町並みはかなりきれいだった。

駅から坂道を登っていくと、やがて土産物店が並んでいる通りに出る。ここを通り過ぎ、岬の先端の方向へ歩いていくと、やがて石畳の道路の先に地中海が見えてくる。この構図はなかなか素晴らしい。

下の写真が岬の先端から見た地中海。エジプトのポートサイドで見た地中海はそれほどきれいではなかったが、ここはかなりきれい。もっとも、キプロスで見た地中海ほどではないが。

しばらく海を眺めたあと、町中を散策してみた。ここは景観保存地区に指定されているそうで、どの家も白い壁と青いドアを頻繁に塗り直しているのだろう。景色はコントラストがはっきりしていてかなりきれい。この鮮やかな青色のことを「チュニジアンブルー」というらしい。

入り組んだ路地を散策していると、とあるドアの前に猫が集まっていた。どうやらここの住人が食べ物を与えているらしい。ここでは多くの観光客が猫の写真をアップで撮っていた。

さらに高台のあたりを歩いていると墓地があり、自由に入ることができたので少し散策してみた。青い海、青い空、白い墓石、緑の碑文という構図がすばらしい。

下の写真の一番手前に写っているのは、1888年に生まれ、1942年に亡くなった方の墓。数字以外はアラビア文字なので、名前はわからなかった。

この後、夕方までシディ・ブ・サイドを散策して過ごした。ここは日本人観光客もかなり多い。

ここでは、あちこちで「バンベローニ」というやわらかいドーナツを売っている。シディ・ブ・サイドの名物菓子だそうで、昼食にいくつか買ってみたが、揚げたては甘くてなかなかうまい。


チュニスに戻り、夜はホテル周辺を散策してみた。そこで驚いたのが、あちこちにあるバーと平気で酒を飲んでいる地元の人たち。イスラム教は禁酒だったはずだが、いいのだろうか。肌が結構露出するような格好をしている女性も多いし、この国はイスラム教の戒律がそれほど厳格には守られていないような気がした。

ちなみにイスラム教徒が1日5回行うメッカに向かっての礼拝については、チュニジア滞在中は一度も見ることはなかった。もちろん家やモスクの中ではやっているのだろうが、エジプトを旅行したときはあちこちで見かけただけにちょっと拍子抜けだった。