ネパール旅行記(ポカラ~ダンプス)

この日からダンプスという村への1泊2日のミニトレッキングに出ることになる。当初はポカラの町にゆったりと3泊し、日帰りで登れるサランコットという山くらいまでは行ってみようかなどと考えていたのだが、ゲストハウスの主人の勧めもあってトレッキングに変更した。

トレッキングをやることにした理由は、さすがに富士山に4回も登ったという人の話を聞いていると面白そうに思えてきたため。トレッキングの料金は100ドルで、ロッジの宿泊費と食事代もすべて含んでいるから、かなりお得だったと思う。


朝8時に起床し、パンと紅茶の朝食後にフェワ湖まで歩いてみた。朝の湖は水面が光っていて本当に清々しい。

しばらく散策した後、10時にゲストハウスに戻るとやがて30歳代くらいの男性ガイドがやってきた。ゲストハウスの主人が運転する車に彼と2人で乗り込み、トレッキングの出発地点へ向かうことになった。このガイドもある程度の日本語を話せる人で、やはりネパールでは日本人旅行者がかなりのお得意さんであることを実感した。

ポカラの町を後にして、次第に山の中へ向かう。ゲストハウスの主人の話によると、この前日に日本人客が私と同様に1泊2日のトレッキングに出たそうで、私を出発地点まで送ってから代わりにその人を乗せて帰るのだという。

ポカラの町から45分ほどで出発地点に到着した。後で地図を見てみたところ、ここはポカラから20キロほどの距離にあるカーレという集落だった。

ここからは正面に山の斜面が見える。まずは、この斜面を登っていくことになる。

では、ゲストハウスの主人と別れてガイドと2人でトレッキングを開始した。歩き始めるとすぐに、ちょうど山を降りてきた日本人トレッキング客と出会った。ゲストハウスの主人が話していた、前日に1泊2日のトレッキングに出た人で、少し話したところヒマラヤからの日の出は本当にきれいだったという。これで、翌日の早朝に見る予定の日の出が楽しみになってきた。

歩き始めてからしばらくはずっと登り勾配が続くので、さすがに疲れてくる。ところどころに粗末な小屋があり、洗濯物が干してあったり、ニワトリが飼われていたりする。こういうところにもちゃんと人が住んでいるのだろう。

ひたすら登りが続くが、ガイドはまったく疲れた様子はなく、汗も見えない。私の方は普段あまり運動をしないため、大汗を流しながらついていくような格好になった。もっとも、風は涼しいので少し休むとかなり気分がよくなる。

ようやく斜面を登りきると、後は尾根に沿っての道が多くなり、それほど急なアップダウンはなくなった。かなり早く歩けるようになり、快適なトレッキングを楽しむことができた。

下の写真がトレッキング中の風景で、このような景色を眺めながら歩き続ける。

トレッキング開始から約2時間で目的地のダンプスという村に到着した。わずか2時間で着いてしまうのだから本格的なトレッキングには程遠いが、普段あまり運動をしない者としてはかなり疲れた。ここは山の尾根にあるごく小さな集落だが、ミニトレッキングの目的地としてわりと人気のある村らしく、あちこちに小さなロッジが建っていた。

ここで泊まるのはポカラで泊まったのと同じ名前の「桜」というロッジ。ここも、あの日本通の主人が経営しているのだろう。

私が泊まったのは2階の一番端の部屋。隣の部屋には欧米人女性2人が泊まっていて、ドアの外に堂々とブラジャーを干していた。やはりこういう人たちは大胆なものだ。

下の写真が今回泊まった部屋。山小屋という感じで質素だが、しかしかなりきれいだと思う。

まず、ロッジ内の小さな食堂で昼食にした。ここではネパール版の餃子といえる「モモ」と、ジャガイモのスープ、ネパールティーを頼んでみた。モモは今回のネパール旅行で初めて食べたが、見た目どおりに味は餃子に近い。ネパールティーは様々なスパイスの香りがして本当に美味しく、日本でこの味をなかなか再現できないのが残念。

昼食後、いったん部屋に戻り、ベッドに寝て自分の足が写るように写真を撮ってみた。

ここで、いったんシャワーを浴びることにした。これはシャワーがひとつしかなく、夕方になると混むということをガイドが教えてくれたため。

下の写真がシャワー室で、ちゃんとお湯も出る。しかしながら、ここではお湯は貴重なものなので、あまり無駄使いしないようにと注意された。

シャワーの後、しばらく休んでからガイドと一緒にダンプスの村を散策した。ガイドはロッジの1階、ガイド用の部屋に泊まっている。

歩いているとすぐに村の端に着いてしまうほどの小さな集落で、あちこちで牛や馬が飼われていた。村の外れには小さな寺院があり、このあたりからの眺めは素晴らしくきれい。

ここでガイドが「世界で寺院の数が一番多い国はどこか知っていますか。実はネパールです」と話してくれた。本当かどうかはわからないが、たしかにここは寺院が多い国だと思う。

村の中で銃を持った制服姿の一団とすれ違ったので、ガイドに「軍隊ですか?」と聞いてみたところ軍隊ではなく警察ということだった。山岳地帯に出没するというマオイスト(毛沢東主義の反政府組織)対策かもしれないが、マオイストは外国人観光客は敵視せずネパールの外貨獲得源として歓迎しているそうなので、トレッキング客としてはそれほど過剰に心配する必要はないそうである。

しだいに薄暗くなってきたので、散策を終えてロッジに戻った。小さな集落だったが、住んでみると居心地がよさそうな気もする。

午後6時ごろ、夕食のために食堂へ行くと外は一転して大雨になった。やはり山の天気は変わりやすいということだろうが、これでは翌日の早朝に日の出を見ることができるかどうか心配になってくる。ガイドに聞くと、こういう大雨はよくあることだから特に心配することはないということだった。

普段はあまり酒は飲まないが、ここではせっかくなのでネパールビールの「エベレスト」を注文した。食事中、天候はさらに大荒れになってきて、とうとう停電してしまった。真っ暗な中、ロッジの人たちがロウソクを何本か持ってきて、それからはロウソクの明かりだけで食事を続けることになった。揺れる光の中で食事をするのも意外といい雰囲気だが、翌日の天候のことがしだいに心配になってくる。

食事を終え、部屋に戻ってもまだ停電は続いている。ロウソクの光では本を読むこともできないし、それにかなり疲れてもいたので早めに就寝することにした。