ネパール旅行記(カトマンドゥ~ポカラ)

この日でいったんカトマンドゥを離れ、ポカラへ向かう。ポカラはヒマラヤトレッキングの拠点になる町で、盆地のため空気の悪いカトマンドゥとは違ってのどかできれいなところだった。


早朝6時、2泊したゲストハウスをチェックアウトしてバス乗り場へ向かう。長距離バスが発着するのはカンティ・パトという大通りで、すでにバスが何台も並んでいた。

様々な旅行会社のバスが並んでいるため、予約した “Blue Sky Travel” のバスを探しながら歩いていると乗客目当てに煙草や菓子などを売っている男が「バスを探しているのか?」と声をかけてきた。この男にバスを教えてもらい、乗り込もうとすると「何か買わないか?」と言ってきた。まあ、何か買わせるのが目的なのは最初からわかっていたし、せっかくなので菓子でも買おうと思ってキットカットとスニッカーズを手に取って値段を聞いたところで唖然とした。

「10ドル」

聞き間違いかと思ったが、何度も “Ten Dollars” と言う。さらに “Good Price !” などと言うので、さすがに呆れてしまいキットカットとスニッカーズを返してバスに乗り込んだ。

吹っかけるにも程があるだろ!

それなりの値段を言ってくれたら買ってもよかったのだが、これではとても相手にする気になれない。乗り込んでからもガラス越しに声を掛けてきたりしたが、すべて無視した。あまりに高い値段を吹っかけるのが逆効果ということに気付いてほしいものだ。

午前7時、バスが動き出した。車内はほぼ満員だが、外国人旅行者らしい人は意外と少なく、ほとんどは地元のネパール人のようだった。喧騒に満ちた朝のカトマンドゥ市街をしばらく走り、ところどころのバス停で停車して乗客の乗降を行う。やがてバスはカトマンドゥ市街を離れ、郊外に向かって走り出した。

カトマンドゥは盆地にあるので、しばらくは上り勾配が続く。そして、頂上を過ぎると今度は目も眩むような断崖絶壁に沿って下り勾配の道がはるかかなたまで続いているのが見える。

この眺めはかなりの絶景だったのだが、残念ながらうまく写真を撮ることができなかった。ネパールに行く機会はまたあると思うので、ここの写真は次回の旅行記で載せることにする。

絶壁に沿った道を過ぎ、後はひたすら西へ向かって進む。カトマンドゥからポカラまでの所要時間は約6時間半だが、周囲の景色を眺めているとそれほど疲れは感じない。

車内にトイレ等の設備は無いので1~2時間おきくらいに休憩がある。下は休憩中に撮った写真で、青色のバスが今回乗った “Blue Sky Travel” のバス。2008年にジャガーを買収したことで話題になったインドのタタ自動車製。

休憩場所に並んでいた露店。各種の野菜や果物が売られていて、何か果物でも買ってみようかとも思ったが、やめておいた。

休憩場所の木陰で休んでいたとき、2人の小さな子供(おそらく5~7歳くらいで、兄と妹という感じ)が近寄ってきて「ペン?」と聞いてきた。アジアのあまり発展していない田舎町ではボールペンやサインペンなどをせがんでくる子供が多いという話は聞いていたので、バッグから予備のボールペンを取り出したら案の定ひったくって行ってしまった。ちょっと勢いに驚いたが、最初から渡すつもりだったし、まあいいだろう。

この後、出発するときにバスの窓からこの子供たちが歩いているのが見え、兄のほうが先ほどのボールペンを大事そうにシャツにはさんでいた。このペンによって読み書きや勉強に興味を持ってくれたら嬉しい。

下の写真は水田が広がる車窓風景。

最後の休憩所では牛を追いながら道路を歩いている人がいた。なんだか昔の日本という感じの風景。

カトマンドゥから6時間半ほど、午後1時45分にポカラのバスターミナルに到着した。長い移動だったが、車窓風景がきれいだったこともありそれほど疲れは感じなかった。


バスターミナルといっても特に建物もない単なる広場で、いっせいに客引きやタクシーの運転手たちが集まってきた。カトマンドゥで予約していたのは “Fish Tail Villa” というゲストハウスで、とりあえずタクシーでゲストハウスへ行くことにした。

ところが、”Fish Tail Villa” に着いてみると何かの手違いによりうまく予約が通っておらず、満室になっていた。こちらはバウチャーを持っているため旅行店とゲストハウスの間の手違いということは明らかなので、ここではゲストハウスの人があちこちに電話して空いている部屋を探してくれた。こういうミスがよく起きるものかどうかは知らないが、これからカトマンドゥでポカラのゲストハウスを予約しようと考えている人は注意してほしい。

代わりに泊まることになったのは「桜」というゲストハウスで、”Fish Tail Villa” のひとつ隣りの通りにあった。名前からわかる通り、ここの主人はかなりの日本通で、ほぼ問題なく日本語を話すことができる人だった。日本には何度も行ったことがあり、登山が趣味でなんと富士山に4回も登ったという。この話を聞いたときにはさすがに圧倒された。

下の写真が今回泊まった「桜ゲストハウス」の部屋で、かなりきれいなゲストハウスだった。予約ミスはあったものの、これなら不満は無い。

少し休んだ後、ポカラの町を歩いてみることにした。

ポカラは「フェワ湖」という大きな湖に面した町で、湖に沿って大通りが続いている。町の中心部には土産物店やトレッキング用品店やレストランが並んでいて、ツーリスト街という感じになっている。

そして大通りでも牛が我が物顔に歩いている。

歩道に乗り上げて駐車していた車の横を通り抜けようとしたときに、同じタイミングで向こうから牛が現れた。すると、牛がちょっと横によけて私が通り過ぎるのを待ち、それからゆっくりと歩いていった。牛のほうもなんだか世慣れたものだ。

大通りからそれると湖畔に出る。周囲の長さが18キロという大きな人造湖で、水はわりときれい。

町の中心部を抜けるとツーリスト相手の店などは無くなり、地元の人たちの小さな民家が並ぶようになる。家の前の畑に野菜が植えられていたり、にわとりが飼われていたり、決して裕福ではないかもしれないが何ともほっとするような景色が続く。原っぱで小汚い格好をした子供たちが楽しそうに遊んでいるのを見ると、まるで昭和のころの日本にいるような感覚になる。

その中でも特に気に入ったのが、この風景。斜面の上のほうに建っていた小さな家で、ちょっと大きめのサイズで載せておく。

何なんだろう、このなんともいえない懐かしさは。なんだか「昔の日本」という感じがする。ぢるぢる旅行記ネパール編 にも、毎年1人で来ているというリタイヤした小学校の先生が登場するが、この景色を見るとその気持ちも理解できる。

町の外れまで歩くとフェワ湖の全景が見渡せる。のどかな風景。

ここで引き返し、町のほうへ戻ることにする。

街中に戻り、フェワ湖のボート乗り場へ行って見ると子供たちが乗ったボートが漕ぎ出すところだった。下校途中なのだろうか。

ボートは一直線に湖を渡って行ってしまった。

やがて暗くなってきたので、これで散策をやめて小さなレストランで夕食にした。ここで注文したのは今回のネパール旅行ではおなじみのダルバートと、ネパール産の「ネパールアイス」というビール。普段はあまり酒を飲まない人間としては、大ビン1本はちょっときつかった。私が酒を飲むのは旅行中くらいのもの。

この後、もう少し周囲を歩いてからゲストハウスへ戻った。ポカラの町は、旅行者が多いこともあって暗くなってからも特に危なそうな感じはしなかった。翌日はいったんポカラを離れてダンプスという村までの1泊2日のミニトレッキングに出ることになる。