台湾旅行記(金剛宮 / 地獄風景)

涅槃像と五百羅漢がある建物を出て寺の入口のほうへ戻ると「天堂地府」と書かれた入口がある。すなわち、天堂(天国)と地府(地獄)風景である。3年前の台湾旅行で見た麻豆代天府と南天宮の十八地獄に続いて、台湾で3ヶ所目の地獄めぐりとなった。個人的に地獄めぐりはかなり好きなので、早速期待しながら入ることにする。

ここの地獄は、細長い通路の壁に沿って様々な地獄風景が作られていて、それを見ながら奥へ進むという構造になっていた。麻豆代天府と南天宮では、人が近づくとそれを感知して動き出すという電動アトラクションだったが、ここの地獄では動くのは下のほうの写真に写っている円盤だけ。後は人が近づくと明かりがつくというものだった。

なお、デジタルカメラの感度を上げているために写真では明るく写っているが、実際の地獄内はもっと暗い。

亡者の責め苦が延々と続く。手足をのこぎりで切られたり石臼に入れられたり、バリエーションは様々。しかしせっかくここまで作ったのだから動いてほしいという気もするが、まあそれは仕方ないだろう。

では、亡者のアップを。

おそらくは裁きの風景。左下の写真に写っているオレンジや青に塗られた円盤が、この地獄内で唯一の動くアトラクション。人が近づくと回転を始める。

ここの地獄は、台湾の二大地獄めぐりスポット、麻豆代天府と南天宮の地獄と比べたら小規模だったが、しかしかなり面白かった。

地獄の一番奥に階段があり、上の階に上がると天堂になっている。地獄と比べてかなり簡素で、このように各種の神像が置かれているだけ。天国のほうが簡単なつくりになっているのは、世界中の地獄めぐりスポットに共通する特徴といえる。

天堂を出て少し歩くと、食事が置かれていた。最初は寺の関係者のための食事なのだろうと思い、通り過ぎようとしたところ他の参拝者に手招きされた。この食事は参拝者のために準備されたもので、自由に食べていいものらしい。

というわけで、せっかくなので麺類を食べることにした。ここに座っていた参拝者の方たちは、私が日本人とわかるとかなり珍しがっていたようだった。どのガイドブックにも載っていない場所だし、ここを訪れる日本人はほとんどいないのだろう。私は中国語は話せないのでそれほど意思の疎通はできなかったが、しかしなかなか楽しかった。

参拝者の方が知らせてくれたらしく、食後に寺の人がわざわざ金剛宮のパンフレットを持ってきてくれた。寺の人も日本人が来たということに驚いていたようだったが、これだけ楽しめる寺だというのに日本人旅行者が行かないのはもったいないと思う。このページを見て、金剛宮へ行ってみようと考える日本人が現れると嬉しい。

この後、本尊の四面佛をもう一度見て、寺の人と参拝者に「謝謝」「さようなら」と挨拶してから金剛宮を出た。いつかまた来たい。


金剛宮を出て、バス停の方へ歩く。新十八王公という寺の前にバス停がある。ここは道路が海沿いを通っていて、バス停の近くに小さな公園が作られていた。下の写真が、公園からの海の眺めと新十八王公。

なお、淡水から見て石門より先に「十八王公」という別の寺もあり、路線図には十八王公というバス停も載っている。ここにあるのはあくまで「新十八王公」なので、これから金剛宮を訪れてみようと考えている人は注意してほしい。上の写真を見ればわかる通り、この寺には「新」という表示はないので、ちょっと紛らわしい。

(注)2019年8月のマレーシア&台湾旅行で金剛宮を再訪した。その際、バス路線に「新十八王公」というバス停がなく、順番から考えて「富基漁港」だろうと思って下りたら正解だった。

なぜバス停の名前が変わったのかと思ったら、この通り新十八王公がなくなっていたのが理由だった。隣に「霊合宮」という小さな寺院があり(2008年当時はなかった)、新十八王公があった建物はバイク置き場になっていた。

移転したのか廃止されたのかはわからないが、しかし寺院がなくなるというのもすごいことだと思う。これから金剛宮を訪れる人は「富基漁港」でバスを下りてほしい。

公園を散策しているとバスがやってきたので、淡水へ戻ることにした。淡水への途中、海沿いに大きな廃墟が数十棟も並んでいるエリアがある。これは台湾バブルの残骸だそうで、バスの中から写真を撮ることができた。

夕方5時半、淡水に戻ってきた。今回の台湾旅行最大の目的である金剛宮訪問を無事に終えることができ、これで翌日は安心して普通の観光に専念できる。

土産物店などを見ながら川沿いを歩いているときに日没を見ることができた。

川沿いの路地にあった、かなり込み合った小さな食堂で淡水名物という魚丸(ひき肉の入った魚のすり身のスープ)と阿給(ひき肉と春雨を油揚げに詰めて蒸したもの)を食べてから、台北方面へ戻ることにした。ちなみにこの阿給の発音は「アーゲイ」で、これは日本語の「揚げ」からきているそうである。


淡水から MRT に乗り、剣潭駅へ。前日と同様に士林夜市を散策してみた。金曜の夜ということもあって、ものすごい人出で混雑している。

前日は主に食べ物の屋台が集まっている剣潭駅前の建物の中を歩いたが、その周囲もかなり広い範囲にわたって露店街が続いている。アクセサリーやら生活用品やら衣料品やら、様々なものが売られていた。

果物屋台にたくさんの果物が並んでいたので、ローズアップル、パイナップル、イチゴ、スモモを食べてみた。ローズアップルはちょっとリンゴに似ているが、もっと水っぽい感じがする。南国だけあって果物はかなりうまい。

あと、パチンコの原型になったスマートボールもあちこちで見られた。かなり懐かしい感じがする。

では、そろそろ食事にする。今回は、前日から気になっていた臭豆腐を注文してみた。臭豆腐にはいくつか種類があり、その中からなんとなくうまそうな感じがしたので「紅焼臭豆腐」を選んだ。下の写真が紅焼臭豆腐と魯肉飯と台湾ビールで、普段はあまり酒は飲まないが旅行中はときどき地元のビールを飲んだりする。これで値段は110元(約330円)。

「紅焼」がどういう意味かわからずに注文したのだが、ちょっと辛味があったので唐辛子入りという意味かもしれない。臭豆腐というだけあって独特の香りがするが、しかしそれほど強烈な臭気というわけでもない。この鍋の下で火が燃えていて食べ終わるまで熱々の状態だったので、かなり美味しかった。

この後、料理やデザートなどを食べ歩きながらしばらく士林夜市を散策し、夜10時にホテルに戻った。