国内旅行編(大阪 / 全興寺)

大阪旅行2日目の最初の目的地は、全興寺(せんこうじ)という地獄風景が見られる寺院。地獄めぐりは好きなので、今回の旅行でも訪問を楽しみにしていた。

動物園前駅から地下鉄を乗り継いで谷町線の平野駅へ。駅から少し歩くとレトロな感じの商店街があり、その通りに面して全興寺があった。


では、立派な門をくぐって寺院の中へ。

まずは本堂に参拝。目的は地獄風景でも、最初に本堂に参拝するのが礼儀。

この本堂は1615年に再建されたもので、歴史がある。

その後、しばらく本堂周辺を歩いてみた。佛足石の隣にある石球は「小動物慰霊碑」だそう。

「おひがん」の下には「水子供養」と書かれていた。

池の中に建つ一心不動尊。ひとつの願い事を唱えながら水をかけると、それが叶うそう。横の注意書きには「池の中へお金を投げ入れないでください」と書かれていて、決してここをトレビの泉と思ってはいけない。

では、そろそろ目的地の地獄堂へ。

この小さな小屋の中が地獄になっている。説明書きによると、扉の前に建つと地獄が開き、中に入って銅鑼を叩くようにとのこと。

子供向けの注意書きと、自分が地獄と極楽のどちらへ行くことになるかのチェックシートもあった。

地獄堂に入り、閻魔大王と対面。なかなか威圧感のある姿。

閻魔大王の前に、説明書きに書かれていた銅鑼がある。

早速、叩いてみたところモニターに地獄風景が映し出されてきた。ここの地獄には動くギミックはないが、この映像も迫力があったので見入ってしまった。

ここで撮った動画を下に載せておく。どういう罪を犯した人がどの地獄に落ちるという説明の部分。

ひとしきり映像を堪能した後、地獄内の風景を見渡してみた。目立っているのは獄卒の鬼と奪衣婆。

ずらりと並ぶ十王の像。先ほどの閻魔大王と比べて、いたって普通の顔立ち。

小さな小屋なので地獄風景がたくさん作られているわけではないが、しかし楽しかった。銅鑼を叩くことで始まる映像を3回ほど繰り返し見てから、地獄の外へ。

地獄といえば極楽もあるはず。おそらく、この「ほとけのくに」が極楽だと思う。

普通は地獄のほうが地下にありそうなものだが、ここは極楽が地下にあった。「ほとけのいのちにつつまれる」という文字を見ながら中に入る。中央に書かれているのは「マンダラに座って瞑想を」。

中はこんな感じ。中央に座って瞑想するための空間になっているようだった。ひんやりとした床に座り、「水琴窟の水の音楽」の音色を聞きながらしばらく休憩。

しかし、下から照らされているマンダラに座っているのは、何だか不思議な感じ。感度のいい人ならトリップできそうな空間といえるかもしれない。

しばらく瞑想した後、外に出て次にガラス製の涅槃仏へ。

この涅槃仏は、見てわかる通り涅槃仏の形はしていない。説明書きには「このガラス像は仏さまの原石です。ゆっくりと時間をかけて自分自身のこころの中の仏さまを掘りおこしてください」と書かれていた。

つまり、参拝者が自由に涅槃仏の姿を投影するという仕組み。これはなかなか面白い趣向だと思う。

先ほどの地獄堂の建物に「地獄の釜の音が聞こえる不思議な石」という案内書きがあって、それがこちら。

頭を入れると地獄の音が聞こえるそうで、私も聞いてきた。たしかに不思議な音。

最後は「小さな駄菓子屋さん博物館」へ。

ここへ来て、急にB級スポット的な感じになってきた。建物の中はレトロな玩具でいっぱい。

私は昭和40年代の生まれなので、箱型の白黒テレビはぎりぎりで記憶に残っている。しかし、さすがに手回し式のローラーが付いた洗濯機は知らない。

ミニチュアの駄菓子屋や露店の模型は、どれもよくできていた。

細かく作り込んであることに感動。

駄菓子屋に混じって、なぜか肉弾三勇士。「グリコの引き換え景品(昭和10年頃)」だそうで、戦時中は英雄視されていたことがわかる。今、肉弾三勇士のことを知っている人はどれだけいるんだろう。

ちなみに3人のうちの一人が長崎県佐々町の出身で、佐々町の三柱神社には肉弾三勇士の像がある(ただし3人ではなく佐々出身の北川丞伍長のみ)。かつて訪れた時のことを思い出した。

暖簾の向こうは、昭和25年当時の駄菓子屋さんのおばあちゃんの部屋。

こちらも、よく作り込まれていた。なんだか懐かしい雰囲気。

この辺りで「そういえば、ここは寺だったよね」ということを思い出したが、このB級スポット的な雰囲気も全興寺の魅力。

駄菓子屋博物館を出て、最後にネパールから贈られたというマニ車を右回りに回し、何度もお経を唱えたのと同じ効果を得てから外に出た。

これで全興寺の参拝は終了。なかなか楽しい寺院だった。地獄風景の他にB級スポット的な場所も多くあるし、大阪旅行の際はぜひ訪れてみてほしい。

(2010.3.21)