ベトナム旅行記(ハイフォン)

ハノイ滞在6日目。前日まで3日連続で現地発のツアーに参加したが、この日はフリーになる。滞在中に一度は鉄道に乗ってみたいと考えていたので、丸1日かけてハイフォンまで往復することにした。

ハイフォンはハノイ近郊の港町で、かつてベトナム出張時に滞在したことがあるので今回が3年ぶりの再訪になる。


8時半にホテルを出て、タクシーでロンビエン駅へ移動。歩いて行けない距離ではないが、迷ったら困るのでタクシーを利用した。

ロンビエン駅はハノイ中央駅のひとつ隣の駅で、市街中心部から少し離れたところにある。ハイフォン方面へはハノイ中央駅発着の列車も1日1往復程度あるようだが、多くはロンビエン駅発着になっているということは事前に調べておいた。

駅前の露店でパンと飲み物を買い、駅舎の中に入る。

窓口でハイフォンへのチケットを買うと、値段は4万ドンだった。クラスは1等車両で、外国人ということで何も言わなくても1等にしてくれたらしい。

やがて改札が始まり、チケットを見せてプラットホームに入る。ホームは1面しかなく、列車はすでに入線している。

こちらが今回乗った1等車両。エアコンつきのリクライニングシートで、快適なものだった。これなら長時間乗っても疲れない。

出発前に他の車両も見てみることにした。下の写真が2等車両と3等車両で、どちらも向かい合わせのボックスシートになっている。3等車両はエアコンはなく、さらに座席は木製になる。これは少しきつそうだ。

ロンビエン駅のホームで日本人の長期旅行者と出会った。この人とは車両が一緒だったので、ハイフォンまでお互いの旅行のことなどを話しながら車内で過ごすことになった。

9時半に列車が動き出した。ロンビエン駅を出るとホン川を渡り、最初にザーラム駅に停車する。ここはまだハノイ市内になる。

ハイフォンまでの所要時間は約3時間。日本人長期旅行者の方と話しながら、優雅な列車の旅を楽しむことができた。ハイフォンで2時間半ほど滞在時間はあるものの、1日のうち約6時間を列車に乗って過ごすことになる。鉄道に興味のない人にとっては無駄と思うかもしれないが、私は列車に乗っている時間は好きなので十分楽しかった。

途中、この旅行者に「今まで訪れた中で印象のよかった国」を聞いたところ「モルドバ」という予想もしない国の名前が返ってきた。旧ソ連で民族と言語はルーマニアとほぼ同じ国ということくらいは知っているが、正直言ってあまり知識は持っていない。話を聞くとよさそうな国なので、いつかルーマニアとともに旅行してみたいという気になった。私のほうは、印象のよかった国としてヨーロッパではアイルランドやスロベニア、それ以外ではペルーやマダガスカルを挙げておいた。

ハイフォンへの途中に「ザン “ZIANG”」という駅があった。2006年にホーチミンを旅行した際、4泊したゲストハウスと同じ名前になる。福原愛をもっと可愛くしたような娘さんが印象に残っているゲストハウスだが、あの一家はここの出身だったのかもしれない。

12時半、列車はハイフォン駅に到着。乗ってきた列車の写真を撮ってみた。

列車を下り、駅を出る。駅舎はおそらくフランス統治時代に作られたものらしく、かなり立派な感じになっていた。

日本人旅行者の方が「バインダークァ」というハイフォン名物らしい麺類を勧めてくれたので、市場の中の露店で一緒に食べることにした。値段は1万ドン。「バインダークァ」という麺類のことはまったく知らなかったので、この日本人旅行者の方と会わなかったら食べることはなかったはず。

茶色の麺はサトウキビを練り込んであるそうで、だしはカニの風味が利いて実にうまい。麺を食べた後、ご飯を入れて雑炊のようにして食べるものうまいかもしれないが、ここにはご飯がなかったのが残念。

食後にマンゴスチンを食べた後、これからハイフォンでの宿泊先を探すそうなので、この日本人旅行者の方とはここで別れた。旅行記のサイトを作成していないか聞いたところ、個人サイトではなく「フォートラベル」にアップしているそうなので、探したら見つかった。下記サイトに登場している日本人旅行者が私になる。

続きを読んでいくと、この人はベトナムの後に中国、ラオス、タイ、トルコ、ブルガリア、ルーマニア、ウクライナ、モルドバと数ヶ月にわたって旅行を続けたらしい。お互いに好きなように移動を続けている個人旅行者の行動が、こうやってほんの短い時間だけ交差していくのだから、出会いというものは面白いものだと思う。

その後、タイのサムイ島で日本料理店を開いたという情報もあったが、今はどうしているだろう。いつか、世界のどこかで再会したいものだ。


私のほうは帰りの列車の時間までハイフォンの町を散策することにした。2007年に出張でハイフォンに数日滞在した際、作業が終わった夕方以降に街中をかなり歩いたので、駅から少し歩いたところに広い公園があったのは憶えていた。その中にあった遊園地をもう一度見てみたかったので、そちらへ歩いてみた。

ところで2007年に出張でこの町に滞在していた理由だが、これは船の試運転計測の仕事をするためだった。このハイフォンは造船業の町で、川沿いに造船所がいくつも並んでいる。その中のベンケン “Ben Kien” 造船所で日本の船主が初めて船を建造するということで、性能に問題がないかどうか試運転を行って計測するという仕事を行った。

このとき、ベンケン造船所の他、ハイフォン最大規模のバクダン “Bach Dang” 造船所(何だか物騒な名前)も見学させてもらったが、感じた印象は「従業員がやたらと多すぎて、なんだか作業効率が悪いなあ」というものだった。例えば、ある従業員が作業をしていると10人近くがそれを囲んで作業の様子を見ている。その従業員が作業を終えると、続いて別の従業員が作業を始め、周囲はまた作業を見ている。自分の作業の順番が来るまでは周りで見ているだけという感じで、こういう仕事のやり方は日本の造船所では考えられない。

日本人の感覚からすれば従業員は半分以下で十分と考えるところだが、ここでは安易に人を減らしたりはしない。このハイフォンという町は非常に治安がよく(これは私の想像だが)各造船所が従業員を大量に雇っているため失業者が少ないことがその理由ではないかと思う。出張当時は夜も街中を散策したが、危険な雰囲気を感じることはまったくなかった。

日本式に採算を上げるために人を減らすことは簡単にできると思うが、そうすると失業者が増え、治安が悪化し、町への投資が減るという負のスパイラルに陥ることは十分予想できる。そう考えると、作業効率は悪くても大量に雇っておくことが結局は会社にとってプラスなのかもしれない。

もちろん、これは賃金の安いベトナムだから可能とも考えられるが、安易に人減らしをしている日本の企業もこういうことを少しは考えてほしいと思う。

3年ぶりに訪れた公園は、以前と変わらず緑が多くて落ち着いた雰囲気だった。

こちらが公園内にある遊園地の入口(各遊具は有料だが、遊園地には自由に入ることができる)。久しぶりなので懐かしい。

前回来たときは夜だったので賑わっていたが、今回は昼間なので閑散としている。遊具も動いておらず、園内は静かなものだった。それぞれの遊具はかなり本格的なもの。

遊具を見ながら歩いていると、こういうものがあった。まあ、定番といえるだろう。

こちらは建物に描かれていた絵。ちょっと微妙。

2007年の出張の際、この公園周辺で夜間の風景を撮っていたので、そのときの写真を載せておく。前述の通り、この町は夜間でも治安は非常によく、暗くなってから歩き回っても特に問題なかった。

この後、出張のときに泊まっていたヒューギ “Huu Nghi” というホテルの前まで行ってみたり、喫茶店でアイスコーヒーを飲んで休憩したりして過ごした。このハイフォンという町は特に観光名所があるわけでもないので旅行者はあまり訪れない町だと思うが、雑然とした感じのハノイと比べて落ち着いた雰囲気になっている。ハノイ滞在中に余裕があれば、鉄道で往復してみても楽しめると思う。


午後3時に散策を終えて駅に戻った。窓口でハノイまでのチケットを買うと、来たときと同様に外国人ということで何も言わなくても1等にしてくれた。

定刻の午後3時10分にハイフォンを出発。今度は1人で車窓風景をゆっくりと楽しむことができた。列車に乗って外国の風景を眺めている時間は本当に楽しいものだと思う。

ロンビエン駅に到着する直前、ホン川を渡っているときの動画を載せておく。

午後5時50分、ロンビエン駅に到着した。ハイフォン往復で1日を過ごしたわけだが、日本人長期旅行者との出会いもあったし、かなり楽しめた。ベトナムの鉄道といえばハノイ~ホーチミンの縦貫鉄道が有名で、いつか乗ってみたいと考えているが、ハノイ~ハイフォンも手軽に乗れる区間としておすすめ。


いったんホテルに戻って休憩し、夕食のために外出して旧市街を歩いてみた。前日まではドンスアン市場近くの屋台街で夕食にしたが、この日は旧市街の路地の中にある地元の人たち向けのレストランに入ってみた。

店員には英語が通じず、メニューを見ても英語表記がないのでよくわからない。適当に注文したら野菜の炒め物と何だかわからない揚げ物が出てきたが、味はかなりうまかった。値段はビールを含んで11万ドンで、私が酒を飲むのは旅行中くらい。

食後、さらに旧市街を散策。連休が終わっているので、ハンガン通りに並んでいた露店街もこの日は片付けられていた。祭りの後という雰囲気。

夜8時半、散策を終えてホテルに戻った。


翌日は朝7時半に起床。この日が旅行最終日になる。前々日にホテルにランドリーサービスを頼んだ際、靴下が行方不明になっていたのだがチェックアウト前に屋上の洗濯物干し場へ行ってみたら無事に発見することができた。

8時半にチェックアウトし、タクシーで空港へ移動。11時半に出発し、台北を経由して夜8時半に福岡空港に帰着した。


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