ベトナム旅行記(ホアルー、タムコック)

朝7時前に起床。この日は現地発ツアー参加2日目で、ホアルーとタムコックへ行くことになる。いずれもハノイ近郊のスポットで、水墨画のような風景を見ることのできる場所として観光名所になっているということだった。


7時45分にホテルに迎えが来て、ミニバスで出発。ツアー参加者は私を含めて5人ほどで、いずれも1人旅の途中ということだった。今回のガイドは若い男性で、かつて日本で働いていたことがあり日本語が話せるため今はガイドの仕事をやっているという。この日がベトナムの連休最終日だそうで、道路はそれほど混んでいない。

市街を抜け、前日のハロン湾ツアーでも立ち寄った土産物店で休憩した後、ホアルー方面へ向かう。ハロン湾よりは近く、10時半にホアルーに到着した。

このホアルーという町は、今から千年ほど前にハノイに遷都されるまで当時の王朝の首都だったところだそうで、つまりベトナムの奈良や京都という感じの古都になる。ミニバスを降りて少し歩くと、古そうな寺が見えてきた。観光客はわりと多い。

寺の門には漢字が書かれている。かつてベトナムも日本と同様に表記文字に漢字を使用していたので、このように古い寺には漢字が多く残っている。しかしながらフランス統治時代にアルファベットを基にした「クォック・グー」という文字が推進されたため、漢字は使われなくなってしまった。

ガイドに聞いたところ、漢字が書かれている寺院の僧侶であっても漢字を読める人はほとんどいないという。現在、漢字が読めるのは日本や中国や台湾に働きに行ったり留学したことのある人だけということだった。

フランス総督府の政策により漢字が廃止されたことについては「ベトナムの文化を破壊した」という否定的評価と「文字が簡単になったため識字率が一気に上がった」という肯定的評価があるという話だった。

門の中に入ると本堂がある。線香の煙が立ち込めていて、なかなかいい雰囲気。欧米人旅行者もときどき見かける。

本堂の中に本尊が安置されている。ガイドから本尊について説明を聞いたと思うのだが、残念ながら失念してしまった。「光心賢徳」の意味が分かる人がいたら教えてほしい。

寺院内をしばらく散策し、外に出て周囲を眺めてみた。のどかな田園風景が広がっている。遠くの岩山と麓の水田の対比が面白い。

寺の周辺だけは観光客が多いが、少し離れると本当に静かなもの。美しい景色をゆっくりと楽しむことができた。


ホアルーを後にして、続いてタムコックへ向かう。タムコックとは「3つの洞窟」という意味だそうで、石灰岩の間の水路に洞窟が3つあることが由来だという。小舟に乗って水墨画のような景色を楽しむことができる場所で、こういう観光スポットがあることは旅行前には知らなかったのだがハノイの旅行店で各種ツアーを見ているときに写真がきれいだったので参加してみた。

昼12時にタムコックに着き、まずは昼食になった。ビュッフェ形式のレストランで、他のツアー客も多く見かける。一般的なベトナム料理が並んでいて、味はかなりよかった。飲み物は別料金だが、食事はツアー料金に含まれている。

昼食後、近くの船着き場へ移動。たくさんの小舟が停泊している。

漕ぎ手の2人の他、乗れるのは4人ほどの小舟になる。ここでは私の他に同じツアー参加者2人が乗り込み、総勢5人でクルーズに出発した。

漕ぎ手は初老の夫婦で、気候が暑い中、オールでずっと漕ぎ続けている。重労働なのは明らかなので、単に景色を眺めている者としてはちょっと恐縮する気持にもなる。

周囲の景色はずっとこんな感じ。私はまだ見たことはないが、中国の桂林はこのような感じなのだろうか。

聞こえるのは風の音とオールが水を切る音だけで、本当にのどかなもの。なんだか眠くなってくるような気さえする。最初は他の旅行者と感想を話していたが、この雰囲気の中にいるとみんな静かになってくる。

ここでの動画を載せておく。のどかな雰囲気が伝わるだろうか。

やがて遠くに洞窟が見えてきた。この中に入ってくのだが、最初は洞窟の出口が見えないのでなんだかわくわくする。ちょっとした冒険気分。

しばらくは真っ暗だったが、やがて出口が明るく見えてきた。水面の光の反射がなかなかきれい。

洞窟を抜けたところに果物などを売っている小舟が集まっていて、ここで漕ぎ手の2人は少し休憩。せっかくなので売り物の中からバナナを買ってみた。小ぶりのモンキーバナナで、甘くてうまい。

船はここで引き返すことになる。再び洞窟を抜け、のどかな雰囲気の中をゆっくりと進む。ときどき周囲の岩山の中腹に鹿らしい動物が見えたりする。

やがて出発地点の船着き場付近へ戻ってきた。途中に見えた小さな祠。

約2時間のクルーズを終え、船着き場に戻った。小舟を下り、漕ぎ手の夫婦の写真を撮ってみた。1日に何往復しているのかは分からないが、結構な重労働だと思う。

ミニバスに戻り、午後3時半にタムコックを出発。ここはベトナムの桂林と言われているだけあって景色は素晴らしいものだったが、それ以上にのどかな雰囲気が何とも心地よかった。このツアーに参加して本当によかったと思う。


ハノイ市街へ戻る途中、高架橋の建設現場にこういうものが見えた。

富士山の写真と「愛」「義」の旗が目立っていたので写真を撮ってみた。言うまでもなく日本の商社が請け負っているのだろう。個人的にはちょっと趣味が悪いと思うのだが、感性は人それぞれというところか。

午後6時半にハノイ市街に戻り、ホアンキエム湖畔でガイドに別れの挨拶をしてミニバスを降りた。


いったんホテルに戻って休憩し、夕食のために外出して旧市街を歩いてみた。連休最終日ということで、前日と同様に人通りはかなり多い。この日もドンスアン市場の近くの屋台街で夕食にした。

この日は豪勢に海鮮鍋を注文してみた。アサリやイカなどと野菜が入った鍋料理で、値段は12万ドンになる(他に白飯が2万ドン)。ベトナムの物価からすれば12万ドン(約600円)というのは高額だが、味はかなりのものだった。個人的にアサリは好物ということもあり、今回のベトナム旅行中の食事の中でもっともうまい料理だったといえる。1人分にはちょっと量が多いくらいかもしれないが、この屋台街で海鮮鍋を見かけたらぜひ注文してみてほしい。

夕食後、さらに旧市街周辺やホアンキエム湖畔を散策し夜9時にホテルに戻った。