グアテマラ&ベリーズ旅行記(ティカル)

朝6時に起床。この日はフローレスから60キロの距離にあるティカル遺跡へ行くことになる。今回の旅行では日数の関係で翌日にベリーズへ移動することになるので、グアテマラではほとんどティカルしか見ない。中米を旅行するのは今回が初めてなので、私にとって初めてのマヤ文明の遺跡になる。


朝7時、ホテル前からミニバスで出発。車内には旅行者ばかり10人ほどが乗っている。早朝のフローレス市街を抜け、昨日訪れたレマテ村を通り過ぎて8時20分にティカルに到着した。さすがに有名観光地だけあって途中の道路状況もよく、快適な移動だった。

ミニバスを降り、遺跡方面へ。下の写真の建物はインフォメーションコーナーで、この時間はまだ開いていなかった。

駐車場の横にジャガー・インという小さなホテルがあり、玄関の横にレストランがあったので、まず朝食にした。遺跡内には軽食くらいしかないようなので、ここで食べておかないと夕方まで空腹で過ごすことになると思われる。

朝食セットを頼んだところ、前日の昼食でも見た「黒あんのような食感だが、それほど味がしないもの」が皿に乗っていた。トルティーヤにはさんで食べたが、どうも正体がわからない。

グアテマラの名産品といえるコーヒーを飲み、続いてインフォメーションセンター(上の写真のインフォメーションコーナーとは別の建物)へ。手持ちのケツァルが少なくなっていたので、ここで少し両替してからチケット売り場へ向かった。チケットは150ケツァル(約1,650円)と高額だが、これは外国人料金。こういう遺跡で外国人料金が設定してあるのはよくあることで、遺跡の管理にかなりの費用がかかるだろうから、これは喜んで払うことにする。

では、ゲートをくぐり遺跡へ向かうことにした。少し歩くと道の両側はジャングルになってくる。

ティカルはジャングルに埋もれた遺跡なので、神殿の周辺は整備されているが、他はこんな感じでジャングルの中の景色がほとんど。歩いているとちょっと薄暗い。

かなりの距離を歩いたところでようやく視界が開け、神殿の後姿が見えてきた。これが1号神殿。

正面に回り、1号神殿を見上げてみた。これが私が初めて見たマヤ文明のピラミッドになる。写真などでは何度も見たことがあるおなじみの形だが、実際に見るとはやり感動する。

1号神殿の高さは51メートル。この神殿は登頂が禁止されているので登ることはできない。

1号神殿はグラン・プラザという広場に面していて、1号神殿の向かい側に2号神殿がある。ティカルでは神殿の形が少しずつ違うところが面白い。高さは38メートルで、この神殿は登ることができる。

登るといっても正面の石段からではなく、神殿の裏側に作られている木製の階段を使うことになる。この通り、かなり狭くて急。

2号神殿の上から見たグラン・プラザと1号神殿。まだ午前中の早い時間ということもあり、観光客は少ない。石段に座り、景色を眺めながら休憩。

グラン・プラザの北側にノース・アクロポリス、南側にセントラル・アクロポリスという大きな住居跡がある。

2号神殿を下り、グラン・プラザ周辺を歩いてみた。ところどころにかやぶき屋根の小屋が作られていて、中には石の遺構がある。

グラン・プラザから見た1号神殿と2号神殿。これらマヤ文明のピラミッドを見るためにグアテマラへ来たようなものなので、まずは満足した。

続いて4号神殿方面へ向かう。途中に3号神殿(高さ55メートル)があるが、こちらはジャングルに埋もれていて観光用には整備されていない。上に登れるという話を聞いていたが、現在は禁止になっているようだった。

3号神殿付近では、こういう生き物を見かけた。ジャングルの中の遺跡なので、ここではこういう動物が普通に歩いている。このあたりは他の遺跡では見られない特徴だと思う。

ジャングルから顔を出す4号神殿の遠望。高さは70メートルで、ティカルで最も高い建造物になっている。かなり遠くに見えるが、ジャングルの中を歩いていくと意外と早く着いた。

この4号神殿は上に登ることができる。ここからの眺めがティカルのハイライトといっていいだろう。

2号神殿と同様、狭くて急な階段を上がり神殿上部へ。復元工事中なのか、足場が組んである。観光客は20人ほどで、それぞれ石段に座って景色を眺めていた。

4号神殿からの眺め。こうして見ると、ところどころに神殿が顔を出しているものの遺跡全体が濃いジャングルで覆われていることがよくわかる。かつてマヤ文明が栄えていた8世紀ごろは大きな町があり数万人が生活していたといわれているが、千数百年ですっかり密林に埋もれてしまったことになる。

8世紀に最盛期を迎えたティカルは、10世紀になると急速に衰退してしまう。町が急に消えてしまうのがマヤ文明の特徴だが、理由は今でもよくわかっていないらしい。

しばらく景色を眺めながら休憩したあと4号神殿を下り、続いて5号神殿方面へ歩いてみた。ティカルの建造物は1号~5号神殿がメインだが、その他にもこういう神殿がたくさんある。

登頂禁止という表示はなかったので登ってみた。頂上部には石の壁が作られていて、かつてはいくつかの部屋に分かれていたことが推測できる。ここでどのような儀式が行われていたのだろうか。

神殿を下り、サウス・アクロポリスというエリアを通って5号神殿方面へ。やがて高さ57メートルの5号神殿が見えてきた。ティカルで2番目に高いピラミッドで、形が非常にきれい。

5号神殿は登ることができる。神殿の横に木製の階段が作られているが、この階段がとにかく急で、転落したら大変なことになりそうな気がする。もっとも、ティカルではどの神殿にも柵などは作られていないので、落ちたらおそらく死ぬことになる。

階段を上から見下ろしたところ。何もこんな急な階段を作らなくてもという気もする。この神殿では登るときはいいが下を見ると下りられなくなってしまう人がいるという話も聞くが、それもわかるように思う。

基部の巨大さと比べて神殿上部はかなり狭く、小さな部屋がひとつあるだけ。この部屋のためにこれだけの規模の神殿を作り上げたというのも、実に興味深いものだと思う。高い場所に部屋を作ることがそれだけ重要な意味を持っていたということなのだろう。柵が作られているので中に入ることはできない。

5号神殿の上からの眺め。この眺めも4号神殿に劣らず素晴らしく、地平線までジャングルが続いているのが見える。こういう景色を見ると、この遺跡が発見されたのは奇跡的という気がする。(ティカルが発見されたのは1696年)

こういう高い所に来ると下を見下ろした写真を撮りたくなる。かなり危険という気がするが、今までに落ちた人はいないのだろうか。

しばらく景色を眺めたあと、5号神殿を下りた。

その後、グラン・プラザに戻って1号神殿と2号神殿の周辺を中心に広い範囲を歩いてみた。この時間になると遺跡内は多くの観光客が歩いている。この時点でかなり歩き疲れていたが、セントラル・アクロポリスなども規模が大きいので、さらに疲れる。しかし高い場所からの眺めもきれいなので、石段などがあると登ってみないと気が済まない。

ときどき休憩しながら散策した後、名残惜しかったがそろそろ戻ることにして遺跡の入口方面へ歩き出した。少し歩いたところに小さな土産物店と休憩所があり、立ち寄ったところで周囲の雰囲気がなんとなく変わってきた。少し薄暗くなったような感じで、これは前日ビオトポ・セロ・カウイを歩いていたときと同じような気がする。前日のことがあるので「これは雨が来るのは間違いない」と直感した。

そこで、屋根のある休憩所にしばらく留まることにして、椅子に座って休んでいたところ10分ほどで急に暗くなり激しい雨が降り始めた。前日に続いてまたもや驚くほどの天候の急変だったが、このときも濡れずにすんだのは本当に幸運だった。

地面が泡立つほどの大雨だが、この休憩所は少し高くなっているので浸水する心配はない。ときどき全身ずぶ濡れになった観光客が避難してきて、苦笑いしながら体を拭いている。しばらくしたら止むはずと思っていると、前日と同様に30分ほどで雨脚が次第に弱くなり、やがてすっかり止んでしまった。熱帯のスコールというのは始めと終わりがすごくはっきりしている。

遺跡の入口方面へ戻ろうとしたが、少し歩くと道が広大な水たまりになっていて靴が濡れないように歩くのは無理な状況になっていた。来たときに歩いた道はジャングルの中を通っているので、この先もぬかるみが続いていることが予想される。地図で見ると別のルートがあるようなので、そちらを歩いてみることにした。

地図から予想した通り、そちらの道はわりと開けていたので、それほど大きな水たまりもなく何とか歩くことができた。その途中にあった小さな神殿。

せっかくなので登ってみた。神殿の前には石が規則的に並べられていて、何かの儀式に使われていたような感じがする。神殿の上は平坦で、何も残っていない。

神殿を下り、足元に注意しながら遺跡の入口へ。この先も大きな水たまりはなかったため靴をほとんど濡らさずに済み、結果的にこのルートを選んで正解だった。私が遺跡内にいた時間は9時~3時の6時間。

外に出るとティカル博物館がある。入場料は10ケツァル。

それほど大きな博物館ではないが、宝石や陶器など発掘された副葬品が多く展示されていた。

ここで、私が今までに見た遺跡の順位を考えると次の通りとなる。

  1. マチュピチュ
  2. アンコールワット
  3. ペトラ
  4. ティカル
  5. ギザのピラミッド

マチュピチュの1位は誰もが納得するところだと思う。2位以下は悩むところだが、遺跡の規模でアンコールワットとペトラを上にした。ティカルは4位にしたが、ジャングルに埋もれた遺跡というのは独特の雰囲気がある。遺跡が好きな人ならぜひ一度は訪れてほしい。

ジャガー・インのレストランでコーヒーを飲んで休憩し、夕方4時にミニバスでティカルを出発。しかしジャングルの中をかなり歩いたことと、やはり遺跡内はアップダウンが多いことから、かなり疲れた。来た時と同様に整備された道路を快調に飛ばし、1時間20分ほどでフローレスに帰着した。


午後6時、夕食のため外出してフローレス島を歩いてみた。すでに暗くなっているが、旅行者もときどき歩いていて危険そうな感じはまったくしない。

島の中央にある教会付近では、バスケットコートの照明が点いていて子供たちがバスケットボールの練習をやっていた。その横に「エル・ミラドール・デル・ラゴ」というレストランがあったので入ってみた。レストランの前が明るいのはバスケットコートの照明に照らされているため。

旅行者だけでなく、地元の人たちも何人か食事をしている。ここではちょっといいものを食べようと思い、肉料理、シーフードのスープ、ビールを頼んでみた。普段はあまり酒は飲まないが、こういうときは地元のビールを注文したりする。料金は70ケツァルで、味はなかなか良かった。

十分に食べた後、レストランを出て周囲を散策し7時半にホテルに戻った。この日は停電することはなく、歩き疲れたのでシャワーを浴びて8時半に就寝。翌日はグアテマラを出国し、隣国のベリーズへ向かうことになる。