ポルトガル旅行記(カスカイス~ロカ岬)

ポルトガル滞在3日目。この日はまず列車でリスボン郊外のカスカイスという町へ行き、そこからバスでロカ岬へ移動、さらに前日も訪れたシントラへ行ってレガレイラ宮殿を見ることにしていた。

ユーラシア最西端のロカ岬は言うまでもなく有名な観光地なので、ポルトガルを旅行する人のほとんどが行ってみる場所だと思う。予想していたほど観光客も多くはなく、最果て感を楽しむことができた。


朝9時にホテルを出て、地下鉄でカイス・ド・ソドレ駅へ移動し、国鉄の列車に乗り換えてカスカイスへ向かう。前々日に訪れたベレン地区を過ぎ、約40分で終点のカスカイスに到着した。

下の写真は相変わらず落書きがひどい列車とカスカイス駅のホーム。

こうやって見ただけでは何の変哲もない駅だが、実はここは鉄道好きにとって非常に特別な場所。私は作家の下川裕治氏が書いた「世界最悪の鉄道旅行・ユーラシア横断2万キロ」を読んだときに知ったのだが、ここはユーラシア大陸最西端の駅になる。下川氏はユーラシア大陸最東端のワニノ駅(ロシア・沿海州のサハリンを望む町にある)を出発して、延々と鉄道(紛争の影響などで一部は飛行機)を乗り継ぎ、経度にして約150度を横断してようやく西の果てのカスカイス駅にたどり着いた。

こちらが、駅の外観。

ユーラシア最西端の駅といっても、この駅がそれを売りにしているわけでもなく、駅構内には何の表示もない。このため、普段この駅を使っている利用客もここが特別な駅ということは多分知らないと思う。

ユーラシア横断の旅を終えてたどり着いた下川氏も、ここが単に郊外列車の終点に過ぎないことで拍子抜けしていたようだが、私ももっと最西端を前面に出して観光客を呼んでもいいように思う。

もっとも、ワニノ駅も最東端とは表示していないようだし、シンガポール駅もユーラシア最南端を売りにはしていないので、端に対する考えが日本とは違うのかもしれない。なお最北端はロシアのムルマンスク駅。

ちなみに日本では佐世保駅がJR最西端、松浦鉄道のたびら平戸口駅が本土最西端、ゆいレールの那覇空港駅が日本最西端と、私の知る限りでは最西端を表示している駅が3ヶ所ある。

駅を出て近くのショッピングセンターの1階にあるバスセンターへ行き、ロカ岬行きのバスの時刻を確認した。カスカイス~シントラの路線が途中でロカ岬を経由するので、ロカ岬を通るバスの行き先はすべてシントラになる。

バスが出るまでまだ時間があるので、カスカイス駅周辺を散策してみた。

歩いていると海岸に出た。シントラのように観光名所がいくつもあるわけではないが、海沿いに大きなホテルや別荘のような建物が何軒もあったので、ここは長期滞在者向けの保養地のような町かもしれないという感じがした。旅行日数と経済的な余裕があれば、リスボンではなくカスカイスに滞在して近郊の町を回ってもいいかもしれない。

そろそろバスの時刻が近づいてきたのでバスセンターに戻った。


カスカイスを出発したバスは、さすがに乗客の半分以上がロカ岬へ行く観光客だった。車窓風景もきれいだし、車内は快適。ロカ岬までの運賃は3.2ユーロだった。

カスカイスから35分でロカ岬に到着した。バスが着いたのは小さな観光案内所の建物の前で、少し歩くとロカ岬の石碑が見えてくる。今回はサグレスとロカ岬を見るために旅行先をポルトガルに決めたので、ここが今回の主目的地のひとつ。

これが有名なロカ岬の石碑。もっと観光客であふれているかと思っていたのだが、意外とそうでもない。おかげで周囲をゆっくりと散策できるし、天気もいいので気分がいい。

石碑にはポルトガルの詩人ルイス・デ・カモンイスの「ここに陸が終わり、海が始まる」という有名な言葉が刻まれている。かつて2001年に千葉県の犬吠埼を訪れた際、灯台近くの「犬吠埼灯台・ロカ岬友好記念碑」に刻まれていた「ここで海が終わり陸が始まる」という文字を見て「いつか必ずロカ岬へ行ってみたい」と思ったことを、ここで思い出した。そのときの気持を、ようやく実現できたことになる。もっとも、ロカ岬と犬吠埼では岬としてのレベルが違うが。

ここから見た水平線。この先はアメリカまで陸地はない。大航海時代の船乗りのことを想像しながら、しばらく休憩。

石碑がある辺りから、細い道が海沿いに続いている。そちらへ歩いてみた。

細い道はここで行き止まりになっていたが、しかしその先も行けるようだった。

こんな感じで石だらけの道が続いていて、観光客も何人か歩いている。

少し歩いていくと、どうやらあの岩山の先端までは行けるらしいということが分かってきた。せっかくなので行けるところまで行ってみることにする。

ここが終点の岩山。物好きな観光客が数人だけ歩いている。岩の上に立って周囲を見渡すと気分がいい。(高所恐怖症や広所恐怖症の人にはつらいかもしれないが)

沖に岩礁が見えた。おそらく、あれが本当の最西端だと思う。

ここで振り返って、歩いてきた方向を眺めてみた。細い尾根を下りてきたことがよく分かる。おそらく、ロカ岬を訪れる観光客の中でも、ここまで来たことのある人は少ないと思う。ちょっと珍しい体験になると思うので、これからロカ岬へ行く人はぜひここまで歩いてみてほしい。

下を見ると歩いている人たちがいた。おそらくはトレッキングツアーだと思う。

こういうところへ来ると下を見下ろした写真を撮りたくなる。当サイトではおなじみの、自分の足先が入るようにして下を見下ろした写真。

付近にはこういう白い花がたくさん咲いていた。アップで撮ると、ちょっと芸術的な写真になった。

石碑の近くまで戻ると、向こうに灯台が見えるので行ってみることにした。

しかしながら灯台の中に入ることはできなかった。現役の灯台らしいので、これは仕方がない。

これで周囲を一通り歩いたことになる。石碑の近くに戻り、後は周囲を散策して過ごした。天候にも恵まれたし、定番観光地だが本当に来てよかったと思える場所だった。ユーラシアの最果ての地だが、今は地面が緑に覆われているので荒涼感や寂寥感はほとんど感じない。

ここには土産物店とカフェとレストランを兼ねた建物が1軒だけある。カフェに入り、コーヒーを飲みながら休憩した。犬吠埼は土産物店が何軒も並んでいたが、ここは1軒だけというのがすごいと思う。おかげで周囲の景観を壊していない。

名残惜しかったが、帰りのバスの時間が近づいてきたので、これで散策を終えてロカ岬を離れることにした。私がロカ岬にいた時間は1時間ちょっと。

バス停の前には観光案内所がある。

ここで「最西端到達証明書」というものを有料で発行してくれるという話なのだが、この日はメーデーということで閉まっていた。まあ、絶対に欲しいというものでもなかったので、別にいいのだが。

やがてやってきたバスに乗り、次の目的地のシントラへ向かった。