ポルトガル旅行記(シントラ / 王宮)

王宮の前でバスを降り、しばらくシントラを散策してみた。世界遺産に登録されている町だけあって町並みは本当にきれい。最近はなぜかヨーロッパへ来る機会がなかったが、こういう景色を見るとヨーロッパの観光地というのも本当にいいものだと思う。

(別に「秘境」「日本人が行かないところ」などにこだわっているわけでは一切なく、単に自分が見たい景色を見るために旅行先を選んでいるだけだが、最近はマダガスカルやらバングラデシュやらベリーズやら、日本人があまり行かない国が多くなっていた。今後はヨーロッパへ行く機会も増やしたい)


王宮周辺の景色はこんな感じ。建物がカラフルでメルヘンチックだし、特に女性には人気になりそうな町並み。

遠くに見える城のような建物。かつての貴族の別荘らしいが、いかにも中世ヨーロッパの屋敷ですねえ。こんなところに住んでみたいものだ。

では王宮に入ることにする。外見だけを見ると「王宮」というイメージからはかけ離れた質素な感じがするが、まあ中身は豪華なので、中に入る価値はある。チケットは7ユーロ。

上の写真で建物の向こう側に写っている円錐形の高い塔は煙突で、この独特の形状は王宮のシンボルにもなっている。建てられたのは14世紀だそうで、1910年まで王族が夏の離宮として使用していたそうだが、ポルトガルが共和制になってからは国の文化財になっている。

ペーナ宮殿と違って王宮の内部は写真撮影が可能で、主な風景を下に載せておく。

上の4枚の写真のうち、左上は「白鳥の間」のシャンデリアを撮ったもので、天井に描かれている白鳥はどれもポーズが違っている。どの白鳥も首に王冠を飾っているところが王宮らしい。

右下の寝台が置いてある部屋は「ドン・セバスティアンの部屋」。在位1557~1578年のポルトガル王で、生涯独身で後継者を作らずに戦死したため、ポルトガルの王位継承を混乱させてしまった人。しかし国王が自ら戦場へ行って戦死するというのも、ちょっと迷惑というか、トップに立つ人間としてはどうかと思う。

生涯独身といっても亡くなったのは24歳のときなのだが、まあ現代と違って16世紀の24歳は「弱冠」ではないでしょうから。

王宮のハイライトは最上部にある「紋章の間」。ドーム型の天井にポルトガル王室の紋章やら貴族の紋章やらが描かれている。壁も狩猟の光景を描いた白と青のアズレージョ(装飾タイル)で囲まれていて見事。ここでは王宮のパンフレット(各国語版)が販売されていて、日本語版があったのでつい購入してしまった(1ユーロ)。

かつて、ここからはインドやブラジルやアフリカに寄港する艦隊の姿が遠くの大西洋に見えたという(ここで買ったパンフレットによる)。リスボンの発見のモニュメントを見たときも思ったが、ポルトガルの過去の栄光と現在の没落ぶりがあまりにも対照的で、豪華な内装を見ていると言葉も出ない。

王宮の窓から見たシントラの町並み。イギリスの詩人バイロンが「エデンの園」と称えたというほどきれいなもので、この町並みが「シントラの文化的景観」として世界遺産になっている。

中庭には木の植え込みが作られていた。まるでエイリアンの卵が転がっているような感じが面白かったので写真を撮ってみた。個人的な感想では、ちょっとした珍風景。

このページに載せている風景の他「かささぎの間」「人魚の間」「アラブの間」「礼拝堂」「厨房」など、王宮内を一通り見てから外に出た。それぞれの部屋を見たい人は「シントラ、王宮」で検索すれば旅行記がたくさんヒットするので、そちらを見てほしい。


王宮を出てシントラを散策してみた。細い路地もいい感じだが、観光客であふれているので人によっては興をそがれるかもしれない。ここで撮った写真の中でも、観光客があまり写っていないものを下に載せておく。

もっとも、坂道はわりと急なので上がっていくと観光客は少なくなってくる。ところどころに展望所が作られていて、ここからの眺めはなかなかいい。今回のポルトガル旅行ではリスボン近郊の町と南部のサグレス、ラゴス、ファロなどを訪れたが、町並みのきれいさではやはりシントラが一番だった。

ポルトガルの民家ではベランダがある家は少ない。このため洗濯物はこんな感じでロープに干してある。こういう景色をポルトガルのあちこちで見かけたが、これはなかなかうまいやり方だと思う。日本でもベランダを作れない安アパートなどでは真似してみてはどうだろう。(かつて学生時代に住んでいた高田馬場の4畳半アパートを思い出して「窓の外にこういう仕組みがあったら楽だっただろうなあ」と思えたので)

さらに坂道を上がるとシントラの町が一望できた。天気もいいし、気分がいい。今回、旅行先にポルトガルを選んでよかったと思えた風景。

その後もシントラの街中をしばらく散策し、名残惜しかったがこれでリスボンへ戻ることにした。リスボンから気軽に行ける定番観光地なので、ポルトガルを旅行する人はほぼ間違いなく訪れる場所だと思うが、町並みは本当にきれいなので私からもお勧め。なお、この日はシントラのもうひとつのスポット「レガレイラ宮殿」へ行く時間がなかったので、翌日はロカ岬からシントラを再訪することにしている。

シントラ駅へ戻り、リスボン行きの列車の到着を待つ。下の写真から分かる通り、線路はスペインと同じく広軌なので列車は振動も少なく安定している。スペインが標準軌ではなく広軌を採用したのはヨーロッパからの侵略を防ぐためだったらしいが、ポルトガルはスペインとの列車の接続を考えてレール幅を合わせたのだろう。

やがてリスボンからの列車が到着し、大勢の乗客が降りていった。折り返しリスボン行きになるが、この列車はシントラへ来たときに乗った列車と違って落書きだらけ。こういう車体を見ると本当に悲しくなる。

午後5時半にシントラを出発し、リスボンへ戻った。