アルメニア旅行記(エチミアジン大聖堂)

エレバン到着日の後半の目的地は、郊外にあるエチミアジン大聖堂。世界遺産にも登録されている教会で、アルメニアを旅行する数少ない日本人観光客のほとんどが訪れる場所だと思う。

エレバン郊外には、ここの他にゲガルド修道院という場所もあり、今回の滞在では日数の関係で両方の訪問は無理。雰囲気はゲガルド修道院のほうがよさそうだが、ちょっとアクセスが難しそうなので今回は諦めた。


マリシャル・バクラシャン駅から地下鉄に乗り、ゾラヴァル・アンドラニク駅(アンドラニク将軍という意味)で下車。エチミアジン方面へのバスが発着するキリキア・バスターミナル(中央バスターミナル)は市街地の南にあり、この駅が最寄り駅になる。といってもここから2キロ以上離れているので、最初はマルシュルートカで向かうことにしていた。

ところが、最寄り駅なのでマルシュルートカはすぐわかるだろうと考えていたが、表示はすべてアルメニア文字なので、これがなかなか難関。余裕があれば現地の人に聞いたりして調べてもいいが、何しろ時間がない。ちょっと安易かもしれないが、ここからタクシーを利用することにした。

移動の途中「アララト」という会社の工場が見えた。

ここはアルメニア名産のコンニャク工場。製造されているのはこれ。

なんていうベタなネタは置いといて、ここはアルメニア名産のコニャック工場。

いや、コンニャクで検索して見つかったぜいたく庵の写真が面白かったのでやってみたかっただけ。

10分ほどで、キリキア・バスターミナルに到着した。タクシー料金は1,000ドラム。

ちなみに、エレバンでは何度もタクシーに乗ったが、どれもメーターはなく距離による一律料金になっていた。といっても細かく料金が決まっているわけではなく「距離が短いときは1,000ドラム」「それ以上は1,500ドラム」という2段階。この境界は運転手が感覚で決めているようで、地下鉄のバレカムテューン駅からホテルまで乗ったときは1回目が1,500ドラム、2回目が1,000ドラムだったりした。ただ、空港からのタクシーは別にして、市内で乗ったときはどれも高い料金を吹っかけてくることはなく、運転手はみんな良心的だった。料金も安いので、エレバンではわりと安心して利用できると思う。

なお、アルメニアではメータータクシーは見なかったが、ナゴルノ・カラバフのステパナケルトで1回だけ乗ったときはなぜかメーター付きのタクシーだった。

キリキア・バスターミナルは規模はそれほど小さくはないが、この時間はあまり発着便はないのか閑散としている。「エチミアジン」と聞いて回ると、バスはすぐに見つかった。短距離なので通常のバスではなくミニバスになっている。

午後3時半に出発。料金は250ドラムで、車内は満員だが旅行者の姿はない。有名観光地(というより巡礼地)なので、ほとんどの人は路線バスではなく観光バスで訪れるのだろう。

ちょうど30分で終点に到着し、そこからはこういう道を少し歩く。

歩いてすぐのところに、エチミアジン大聖堂がある。ここはアルメニア教会の総本山となっている場所だが、私はキリスト教徒ではないので、巡礼ではなく単なる観光で訪れてみた。

門の中に入って最初に見えるのが、こちらの塔。白く光っているし、これは最近建てられたものだろう。展望台になっているのかと思ったが、上の階には上がれないようだった。

敷地はかなり広く、いくつかの建物が点在している。メインの大聖堂を見る前に、奥へ歩いていくとアララト山がきれいに見えた。

小アララト山(左)と大アララト山(右)のアップ。今までででアララト山が一番きれいに見えているので、しばらく眺めてみた。しかし、アルメニアの人たちはどういう気持で山を眺めているのだろう。近くに見えるのに外国領というのが不思議な気分。

では、メインの大聖堂へ。ただ、行ってみると修復作業中なのか足場が組んであった。ずいぶんと無粋なことをやるものだが、まあ仕方がない。こういう場面を見ることができて逆に幸運だったと思うことにする。

しかし、この大聖堂は建造されたのが4世紀というから、驚くほど古い建物ということになる。この頃の日本は「空白の4世紀」の真っ最中。

大聖堂の内部はこんな感じで、アーチ状の構造が見事。それに、みんな1本ずつロウソクを立てているので、なかなか雰囲気がいい。私もせっかくなのでロウソクを立ててきた。

大聖堂の奥に宝物館がある。チケットは別の建物で売られているので、いったん大聖堂を出て1,500ドラムでチケットを買い、宝物館に入ってみた。

いろいろと由緒のありそうな秘蔵品が展示されているが、そもそも私はキリスト教に詳しくないので、「どれもファンタジー小説に出てきそうなものだな」というくらいしか感想はない。(無知ですみません)

この宝物館の目玉は「ロンギヌスの槍」と「ノアの方舟の破片」の2つで、これは有名なので見逃さないようにしていた。ロンギヌスの槍というのはキリストの脇腹を刺した槍のことで、当然ながら槍の本体が展示されていると思っていた。ところが、展示してあったのは「柄の部分」だという金属片のみ。ノアの方舟の破片も、まあ単なる木片のようなもの(金属製の装飾は、後から付けたものだと思う)。

正直言って「え、これ?」というものだったが、キリスト教徒の人たちにとっては重要なものなんだろう。ここでは「本当に本物か?」なんていう無粋なことを考えてはいけない。これらの写真はインターネット上にいくつもあるので、興味がある人は検索してみてほしい。

大聖堂を出て、こちらの建物に入ってみた。

ここはわりと新しい建物だと思う。窓から差し込む光線がきれいだったので、いくつか写真を撮ってみた。

この後、敷地内をしばらく散策してみた。さすがに総本山だけあって来訪者は多く、子供から老人まで大勢が歩いている。みんな敬虔な気持で来ているはずなので、私だけが観光気分できているのが申し訳ない。ただ、神聖な場所という雰囲気だけは味わうことができたと思う。

夕方5時半に散策を終え、ミニバスでエチミアジンを出発してエレバンへ戻った。


キリキア・バスターミナルからマルシュルートカで市街へ移動することも考えたが、面倒なのでタクシーを利用することにした。最初は地下鉄のゾラヴァル・アンドラニク駅までのつもりだったが、気が変わってエレバン駅へ行くことにした。今回の旅行ではアルメニア国鉄を利用することはないが、せっかくなので鉄道駅を見てみたい。

バスターミナルから15分ほどで到着し、タクシー料金は1,500ドラム。ただ、5,000ドラム札を出したら釣りが足りず、近くの店をいくつか回って両替をしてくれた。ちょっと手間をかけさせてしまい、申し訳ない。

こちらがエレバン駅。

地下鉄と違って改札口はないので、ホームに入ることができる。ちょうど、ジョージアのトビリシ行きの国際列車が停車しているところだった。アルメニアは両隣のトルコとアゼルバイジャンとの国境が開いていないので、鉄道で出入国できるのは唯一この国際列車のみ。いつか乗ってみたいものだが、その機会はあるだろうか。

ちなみにアルメニアと周辺国との関係は、アゼルバイジャンとは最悪、トルコとは犬猿の仲、ジョージアも同じキリスト教国でありながらあまり仲良くはないらしい。唯一の友好国がイランだが、わずかしか国境を接していない。つまり、アルメニアは周囲のほとんどを敵に囲まれた状態。

エレバン駅には地下鉄も通っているので、ここから地下鉄で市街中心部へ向かうことにした。地下鉄といってもこのあたりは地上を通っていて、こっそり写真を撮ることができた。

共和国広場駅で地下鉄を下り、地上に出ると共和国広場がある。ここがエレバンの中心地で、かなりの賑わい。

周辺を散策しているときにバザールや遊園地などを見つけたのだが、これは翌日のページに載せることにする。共和国広場の近くで安そうなレストランを見つけたので、ここで夕食にした。

注文したのは、ケバブと豆スープ(パン付き)とザクロジュース。値段は2,040ドラムで、この量で500円ほどなのだから、この国では食事には金がかからない。旅行者としては非常に助かる。

ザクロジュースというのは、日本ではあまり見ないと思うが、この国では一般的なものらしい。ザクロのワインもあるというし、バザールでザクロの形をした民芸品をいくつも見たし、アルメニアでは生命の象徴とされる神聖な果物ということだった。

夕食後、共和国広場周辺をさらに散策してみた。広場に面した建物はどれもライトアップされていて、かなりきれい。

ただ、上の写真からもわかる通り、次第に空が厚い雲で覆われてきている。明らかに雨が近づいてきているので、そろそろ帰ろうかと思い始めた頃、噴水ショーが始まった。

噴水ショーの動画を載せておく。特に大規模というわけでもないが、わりと迫力があって楽しめた。

噴水ショーをもっと見ていたいところだが、空に雷光が頻繁に現れるようになり、雷鳴が響いてくる。いよいよ天候が危なくなってきたので、走って地下鉄の共和国広場駅へ移動。バレカムテューン駅に着いて地上に出ると、予想通り大雨になっていた。

ここからはタクシーでホテルへ移動。この時のタクシー料金は1,500ドラムだった。ほとんど雨に濡れずに済んだのは幸運だったと言える。この日は深夜0時に就寝。