アルメニア旅行記(セヴァン湖)

アルメニア滞在2日目の目的地はエレバンから60キロほどのところにあるセヴァン湖。

アルメニア最大の湖で、内陸国のアルメニアでは「アルメニアの海」などと呼ばれることもあるらしい。観光地になっている湖畔の教会の他、セヴァンの街中などを見ることができた。


朝8時半に起床。外を見ると、前日と比べるとアララト山の山頂が少しだけ見える。

フロントでホテルのスタッフにセヴァン湖への行き方を聞くと、前日のキリキア・バスターミナルではなく北バスターミナルからの出発になるという。そこまでタクシーで移動することにして、フロントでタクシーを呼んでもらった。

10時半にホテルを出発。北バスターミナルは意外と遠く、30分ほどで到着した。タクシー料金は1,500ドラム。ここはキリキア・バスターミナルと比べると小規模で、いくつかのミニバスが停まっているだけ。その中に「SEVAN」と表示されたバスがあるが、まだ鍵が閉まっている。

仕方がないのでベンチに座ってしばらく待っていたが、出発しそうな気配がない。少し不安になってきたころ、ようやく運転手がやってきてドアを開けてくれた。少しずつ乗客が集まってきて、12時15分に出発。結局、車内で1時間近く待っていたことになる。セヴァンまでの料金は600ドラム。

途中の道路はきれいに整備されているので、移動は快適。ただ、セヴァンの町に入ると未舗装の道路が目立つようになり、周囲の建物もゴーストタウンのような感じになってきた。「この町は大丈夫なのか?」という気持にもなったが、そこを通り過ぎると健全な感じの地区に出た。通過した地域がなぜか寂れていたらしい。

エレバンからちょうど1時間で町の中心に到着し、ミニバスを下りるとすぐにタクシーの運転手が寄ってきた。ここからセヴァン湖へはバスはないので、移動手段はタクシーのみ。初老の運転手と交渉し、往復2,000ドラムで湖畔まで行ってもらうことにした。車内で運転手と片言の英語で少し話をしたが、日本人はわりと珍しいらしい。

約10分で湖畔に到着した。これが乗ってきた車で、つまり正規のタクシーではなく白タクになる。日本だったらちょっとした骨董品扱いされそうな車。

1時間半後に迎えに来てもらうことにして、まずは丘の上にある教会へ向かうことにした。あれがセヴァン教会。

今いるところは湖に突き出した半島の先端だが、かつては半島ではなく島だったという。ソ連時代の灌漑のせいで湖の水位が下がり、現在は陸続きになってしまった。教会が建っている丘は、かつて島だったところになる。

では、石段を上がって教会へ。途中、湖を眺められるポイントがあった。

正直言って「もっときれいな湖はいくらでもあるのでは?」なんてことを思わないでもないが、これは天候が曇りだったからだろう。天気が快晴なら、もっときれいな景色を眺めることができたはず(多分)。

ちなみに、今までに見た湖の中で最もきれいだったのは、この旅行の時点ではスロベニアのブレッド湖。この4ヶ月後にインドのラダック地方で見たパンゴン・ツォも絶景だったので、2015年末の時点ではブレッド湖とパンゴン・ツォが双璧と思っている。

ビューポイントに置いてあったのが「ハチュカル」という石板。ハチュが十字架、カルが石という意味だそうで、アルメニア正教独特の石碑らしい。十字架の他にも細かい文字がびっしりと刻まれているし、かなり手が込んでいる。

ハチュカルに触った後、観光客とすれ違いながら教会へ向かう。

こちらがセヴァン教会。現在残っているのは聖母教会と聖使徒教会の二つ。最初に建立されたのが874年というから、日本では平安時代になる。17~18世紀に改修されているとはいえ、相当に古い教会ということになる。このくすんだ感じがなかなかいい。

丘の上からの湖の眺め。アップで撮ると、遠くに見える雪山がきれい。

2つある教会のうちのひとつは中に入ることができる。入口付近にはたくさんのハチュカルが置かれているが、それぞれ貴重なものなんだろう(多分)。しかし閉鎖された墓地から集めてきたかのように無造作に重ねてあるところがなんとも。

教会内部の風景。「西暦301年に世界で初めてキリスト教を国教とした」ということで有名な国を旅行していながらこういうことを言うのも何だが、私はキリスト教についての知識はあまり持っていない。絵を見ても誰だかわかるのはマリアとキリストくらいのものなので、「なかなか荘厳な雰囲気」「ロウソクがきれい」なんてことを思いながら見学してきた。

教会を出て、あとは周辺を自由に歩き回ってみた。土台だけが残っているのは、聖ハルテューン教会の跡。丘の上だけあって広々としているので、歩いていると気分がいい。教会と雪山をバックにすると、湖もきれいに見える。

半島の根元を眺めると、こんな感じ。ここはかつて島だったので、以前はあの部分も湖水に覆われていたことになる。ウズベキスタンのムイナクでアラル海の跡を見たときも思ったが、ソ連時代の灌漑というのは本当に環境無視のことをやったものだ。

少し標高が高いためか(1,900m ほど)天候が変わりやすく、小雨が降ってきた。そのため、これで教会周辺の散策を終えて湖畔へ下りることにした。


丘を下り、次は湖岸へ行ってみた。すると、こういう人たちが遊泳の準備をしていたので、ついていってみた。

準備運動の後、湖に入っていった。寒中水泳ではしゃぐおっさん2人の風景。

物好きなおっさんたちが湖から上がってくるのを見届けた後、自分も岸辺に降りて湖水に触ってみた。水温は、予想通り手が切れるほど冷たい。夏には湖水浴をやる人たちで賑わうというが、どのくらいの水温になるのだろう。夏でも寒中水泳になりそうな気がする。

桟橋に船が繋いであるので遊覧船なのかと思ったが、チケット売り場らしい場所が見つからない。しばらく周囲を歩いていると、団体客らしい人たちが船に乗り込み、出港していった。どうやら団体客専用のチャーター船になっているようなので、遊覧船は諦めた。

その後、白タクが迎えに来るまで周辺を散策。こういう砂浜があり、誰もいないのでもしかしてプライベートビーチかと思ったが、大丈夫そうなので入ってみた。

砂浜から至近距離で見たセヴァン湖。内陸国の高地にある大きな湖ということで、キルギスのイシククル湖と同じような雰囲気がある。雪山をバックにして写真を撮ると、湖の風景もかなりきれいに見える。水の透明度もわりと高そう。

店が並んでいるエリアに戻り、小さなパン屋があったので焼きたてパン(300ドラム)を買ってみた。焼きたてだけあって香ばしくてうまい。屋外の紙コップ式自動販売機で買ったフルーツティー(150ドラム)と一緒に食べながら休憩。

土産物の露店などを少し見たあと、再び自動販売機でコーヒー(200ドラム)を買ってみた。しかし外国で屋外に設置されている自動販売機を見るのは珍しい。値段も安いし、便利なのでお勧め。

午後3時、白タクの運転手が迎えに来たので、これで湖畔散策を終えてセヴァンの町に戻ることにした。はたして、この湖を再び見ることはあるだろうか。


これからエレバンに戻る予定と伝えると、ミニバス乗り場で下ろしてくれた。小遣い稼ぎに白タクをやっている運転手と挨拶して別れ、走り去っていく車を見送ったが、セヴァンの町をもう少し見てみたい。しばらく周辺を散策することにした。

下の写真がおそらくセヴァンで一番の大通りだが、そんなに車は多くない。

大通りから横道に入ると、こういうアパートが並んでいた。こういう生活臭のある風景は好き。

並んでいるアパートを見ながら歩いていると、1階にこういう入口があった。看板に DENTIST とあったので歯医者なんだが、何というか、入るのにものすごく勇気がいりそうな感じがする。知らないうちに奥歯にカプセルを埋め込まれて、幻覚を見ることになりそうだ。(参考資料:ウルトラマンA・第48話「ベロクロンの復讐」)

子供の頃に見たことのある人ならわかると思うが、この回は歯医者がトラウマになるよねえ。

横道を先の方まで進んでいくと、遠くにこういう建物が見えた。この時は「何かの工場だろうか」と思い、おそらく中には入れないだろうから途中で引き返した。ただ、後で調べてみたら、ここは現在は使われていないセヴァン駅だった。廃駅なので中には入れなかったとは思うが、もっと近くまで行って線路を見ておけばよかった。ちょっと後悔。

ミニバス乗り場近くまで戻ってくると、小さな遊園地があったので入ってみることにする。

この遊園地は、最初は雑草の生え具合からして廃墟かと思ったのだが、よく見ると遊具はそれほどサビが発生していない。まだ現役で、夜になったら子供たちで賑わうのかもしれない。回転ブランコはどのくらいのスピードで回るんだろう。

観覧車のイラスト。これはお約束。

さらに周辺を歩いてみた。アパートが何棟も並んでいて、洗濯物の干し方が面白い。子供たちが窓から「ハロー!」なんて声をかけてきたりして、こちらが手を振ると喜んでいた。外国人を見るとハローと言いたくなるのは世界中の子供に共通した特徴。

夕方4時、散策を終えてミニバス乗り場に戻った。観光地になっている湖畔の教会だけでなく、セヴァンの街中も見ることができたので、来た甲斐があった。生活臭が感じられる街中を歩くのは楽しい。

道路沿いにミニバスの小さなオフィスがあり、チケットは車内ではなくこの建物で購入した(600ドラム)。4時20分に出発し、帰りは下り勾配だからか、快調に飛ばして45分でエレバンの北バスターミナルに到着した。続きは次のページで。