インド旅行記(デリー / ハヌマーン寺院)

いよいよインドに出発することになった。インドといえばバックパッカーが一度は行ってみたいと思っている国のはずで、私も ぢるぢる旅行記 を読んで以来ずっと興味を持っていたのだが、インドはなんとなく旅行上級者向けの国という感じがして今まで避けてきた。海外一人旅を始めて17年、43ヶ国目にしてようやくインドを旅行することになった。

もっとも、インドといっても詐欺師の巣窟(偏見)ゴールデン・トライアングルではなく、チベット文化圏のラダック地方がメインになる。経由地のデリーは、さっさと通過することにしていた。


夕方6時過ぎ、福岡空港から乗継ぎ地の上海へ出発。なんで夕方出発なのかというと、上海~デリーが深夜便しかないため。日本からデリーへ向かう場合、なぜか多くの便が深夜到着になり、おかげで悪名高い「デリー空港深夜到着問題」が発生することになる。もっと日中に到着する便を増やせばよさそうなものだが、何か利権でもあるのだろうか。

上海までの飛行時間は2時間以下で、東京へ行くのと所要時間はほとんど変わらない。それから中国の航空会社の機内誌を見たことのある人なら知っていると思うが、地図のページを見ると南シナ海は陸地ぎりぎりに境界線を引いて「南シナ海は全部中国のもの」という意思表示をしている。では東シナ海はどうかというと、境界線も尖閣諸島も描かれていない。東南アジアには強気でも日本には配慮しているということか。

午後7時に上海に到着し、2時間の乗継ぎ時間の後、デリーへ出発。機内にはターバンを巻いたシーク教徒の人たちもあちこちに乗っていて、これからインドへ行くという気分が高まる(インド人がみんなターバンを巻いているわけではなく、この格好はシーク教徒だけ)。

約7時間のフライトで、深夜1時半にデリー国際空港に到着した。現地と日本の時差は3時間半なので、日本ではすでに早朝になっている。

インターネットでビザの取得は済ませてあるので、通常の入国審査ではなく「e-Tourist VISA」のコーナーに並んだ。ただ、かなり長い行列が出来ていたので、空港到着から45分かかってようやくインドに入国した。

シゲタトラベルの送迎はターミナルの外で待機しているということなので、とりあえず外へ。

ターミナルの建物もきれいだし、ここを見る限りではそれほど危なそうな感じはしない。もっとも、この雰囲気で油断しているとプリペイドタクシーで目的地とは違う場所に連れて行かれたりするのだろう。こちらも深夜到着で疲れているし、1,500円で安心感を買うと思えば決して高くはない。

シゲタトラベルの運転手はすぐに見つかり、同じ便で到着したらしい日本人男性2人と共に駐車場へ移動。ミニバンに乗り込んで2時半に空港を出発した。

日本人男性はそれぞれ一人旅だそうで、定番のアーグラーとバラナシを旅行するという。私のように最初のインドがラダック地方という人はどれくらいいるのだろう。

出発してしばらくは道路もきれいに整備されていたが、ニューデリー駅に近づくと一気に雑然とした雰囲気に変わった。日本人旅行者と「ゾクゾクするような雰囲気ですねえ」なんてことを話しているうちに、シゲタトラベルに到着した。

いったん車を降り、事務所の中へ。到着して初めて知ったが、ここは COTTAGE YES PLEASE というゲストハウスになっていて、その1階が事務所だった。カウンターに座っていたのはシゲタトラベルのサイトのトップに載っているラジェンダさん本人。他の日本人旅行者はここに宿泊するらしく、列車やバスのチケットについて相談している。私の場合は他のホテルを予約しているので、ここで1万円を両替した後、再び車に乗ってホテルへ向かうことにした。受け取った金額は5,200ルピーで、1ルピーがほぼ2円。計算が楽なのは助かる。

予約していた Hotel City Star はわりと近く、5分ほどで到着した。ただ、車を下りる際に料金の支払いとバスチケットの受取りを行おうとすると、運転手は何も聞いていないという。旅行前にシゲタトラベルとメールでやり取りした時に「ホテルご到着時に空港送迎担当運転手に今回の手配代金4,500円をお支払いください。(中略)この時にバスチケットをお受け取り下さい」とあったので、この時に支払うものと考えていたが、うまく伝わっていないらしい。

運転手が携帯でラジェンダさんに電話をかけ、ラジェンダさんが「後でバスチケットを持って行かせる」ということだったので、チェックインを行うことにした。ウェルカムドリンクとしてマンゴージュースを持ってきてくれたので、それを飲んでから部屋へ移動。

部屋はかなり広く、かなり快適。深夜到着で疲れているだろうし、翌日からバス移動なのでゆっくり休みたいと思って1泊5千円弱というホテルを選んでおいたのだが、これは正解だった。

10分後、ドアをノックする音がしてスタッフがバスチケットを持ってきてくれた。代わりに代金の4,500円を入れた封筒を運転手に渡してもらおうとしたところ、運転手はもう帰ったという。結局、この時点まで送迎料金とバスチケット代金が払えていない。

仕方がないので昼にシゲタトラベルへ行ってみることにしたが、このまま料金を払わずにバスチケットを持ち逃げしたらどうするつもりなんだろう。インド人は金にはシビアという印象を持っていたが、この旅行店はちょっとルーズ。

深夜だし、シャワーは翌朝に浴びることにして午前4時に就寝。


午前9時に起床。ホテルのチェックアウト時間が正午なので、もっとゆっくり寝ていたいところだが、朝食の時間帯が決まっているので仕方がない。

屋上の小さなレストランへ行くと欧米人と日本人の旅行者が何組かいた。地上を見下ろすと黄色と緑に塗装されたオートリキシャがたくさん走っている。予想通り、気候はかなり暑い。

パンとオムレツの朝食後、部屋へ戻ってシャワーを浴び、11時半過ぎまで休憩。この日の夕方からバスでの移動が続くことになるので、しっかりと休んでおいた。

正午が近づいてきたので、ホテルをチェックアウトしていったんシゲタトラベルへ向かうことにした。繰り返すが、このままバスのチケットを持ち逃げしたらどうするつもりだったんだろう。

ホテルのカウンターでシゲタトラベルの名刺を見せ、行き方を聞いたところオートリキシャで50ルピーだという。ホテル前の通りに出て、通りかかったオートリキシャに乗り込んだ。

しかし大通りでも牛車が悠々と歩いていて、さすがインドという風景。

ところが、最初にシゲタトラベルの名刺を見せて「この場所まで」と伝えた時は運転手も知っている顔をしていたが、実はよくわかっていなかったらしい。10分ほど探し回り、ようやく COTTAGE YES PLEASE の前に到着した。時間はかかったが、まあ許容範囲ではある。

下の写真は走り回っている時の風景。

ただ、料金の支払いの際に問題が起きた。こちらが50ルピーを渡すと「いや、料金は200ルピーだ」という。運転手が近くを歩いていた男性を呼び止め、その人が通訳となって英語で説明してくれたところによると「この運転手は、シゲタトラベルの場所がわからずに1時間も探し回ったのだから200ルピーもらうのは当然と言っている」ということだった。この男性も「1時間も乗っていたなら200ルピーは妥当だ」などと言ってくる。

少し探し回ってもらったのは確かだが、せいぜい10分程度。そこで「1時間も乗っていない。10分だけだ」と主張すると、男性も運転手の嘘に気付いたようで、「なんだ、10分なら50ルピーで問題ないね」と言ってくれた。そして、やり取りを聞いていた運転手は、ここで黙ってオートリキシャを発進させて走り去っていった。通訳になってくれた男性は苦笑していたが、こちらとしては「1時間も探し回った」なんていう嘘を平気で言ってくることに驚かされた。

もちろん、オートリキシャの運転手が全員こういう人間ではないのだろうが「なるほど、これがインドか」と思わせる出来事だった。おそらく、アーグラーやバラナシなどの観光地はこういう人間であふれているのだろう(偏見かもしれないが)。

こちらが COTTAGE YES PLEASE で、1階にシゲタトラベルがある。

スタッフに名前を告げ、空港からの送迎料金とバスチケットの代金をようやく支払うことができた。代金の4,500円は日本円(硬貨も含む)で支払い可能。

マナリ行きのバスの出発場所を聞くと、ここまでスタッフが迎えに来てくれるという。夕方4時に戻ってくることにして、それまでデリーを観光することにした。


歩いて数分の距離にメトロのラーマクリシュナ・アシュラム・マーグ駅がある。この日の目的地はジャンデワラン駅のすぐ近くなので、メトロで移動することにしていた。テロ対策なのか、改札口の手前には金属探知機もあり、日本の地下鉄にはない緊張感がある。

窓口でトークン(8ルピー)を買い、駅の中へ。短い距離とはいえ、料金が約16円とは安い。なお、100ルピー札を出してトークンを買ったのだが、ここで釣りの10ルピー札をたくさんもらっていたことが後で役に立った。

メトロといっても地下を通るのは一部の区間だけで、ほとんどは地上を走っている。ホームに上がると、いい感じのマスコットがあった。

列車は頻繁にやってくるので、それほど待つ必要はない。インドの鉄道といえば乗客が鈴なりの車両を思い浮かべる人もいると思うが、もちろんデリーのメトロはそういう列車ではない。こちらがメトロの車両。

ただし列車内はほぼ満員。ジャンデワラン駅でメトロを下り、少し歩くと目的地が見えてきた。近くからだと全体が写真に収まらないので、いったん少し離れたところまで歩いて全景写真を撮ってみた。

ここはオレンジ色の巨大な神像が特徴的なハヌマーン寺院。インドビザを申請する際に参考にしたティラキタ駱駝通信のサイトで紹介されていて、面白そうだったので訪れてみた。ハヌマーンというのはヒンドゥ教の猿の神様のことで、孫悟空のモデルという説もあるらしい。

ハヌマーン神のアップ。不謹慎ながら、日本では「だっふんだ」なんて表現をする人もいる。

では、歩行者を特に気にしていない車やバスに注意しながら通りを渡り、ハヌマーン神の足元にある寺院の建物へ。下の写真からわかる通り、下半身は建物に尻を付けて正面を向いているのに対し、上半身は建物の横を向いている。つまり、ハヌマーン神は腰の辺りで体を90度近く回転させているわけで、何でこんな苦しそうな姿勢をしているのかわからない。

寺院内は土足禁止なので、ここで靴を預けてから中に入る。ただし、下の写真からも想像できる通り入口のすぐ近くに靴預かり場所があるわけではないので、ここから寺院入口まで歩く間にしっかりと足の裏が汚れるのが難点。(なお、後述する寺院内の地下地獄は地面がかなり濡れているので、ここで靴下も脱いでおくほうが無難)

ここからハヌマーン神を見上げると、腰の辺りで体をひねっているのがはっきりわかる。繰り返すが、なんでこんな窮屈な格好をしているんだろう。

この入口の造形を見るだけで、B級スポット好きなら激しく感動することは間違いない。これはハヌマーン神に踏みつけられた魔王だそうで、なかなかの迫力。本当に、よくこんな入口を考えたものだ。

では、魔王の口を通って寺院内へ。小型サイズの可愛らしいハヌマーン像がある。

寺院内はこんな感じ。あちこちに神像が安置してあって、その前にお布施箱が置いてある。いろんな形態の神様を眺めながら寺院内をひと回りしてみた。

こちらはカラフルなガネーシャ像。天井から広がる電飾とピンクの光背が可愛らしい。ガネーシャ像の前には僧侶が座っていて、参拝者の手首に赤い糸を巻き、額に赤い印をつけるということをやっている。私も同様のことをやってもらったところ、その後に予想通りお布施の要求があり、ちょっともめることになった。

他の参拝者はみんな10ルピー札だったし、皿の上には硬貨と10ルピー札しか見当たらないので10ルピーを置いたところ「いや、お布施は100ルピーだ」という。皿の上を指差して「10ルピーしかないでしょ」と言って断ったところ、僧侶とは思えないような露骨な不満顔。寺院内でも外国人には吹っかけてくるのかと、ちょっと残念な気持になった。(これがインドの洗礼なのかもしれないが)

気分転換に、きれいな神像を紹介。

最上階(この寺院は微妙な中2階があったりしてややこしい構造になっているが、ここは多分3階)に上がると、ちょっと広いスペースになっていた。右側に見える星のマークが付いたオレンジ色の部分は、ハヌマーン神の足の付け根にあたる。ということは、ここに近寄ると 頭の近くに肛門が来る ということになる。

下品な想像はこれくらいにして、ここにも神像がいくつか並んでいる。その中でも特にきれいなものを紹介。

僧侶が座っている一画もあり、手招きされて前に座ると、先ほどと同様に手首に赤い糸が巻かれて額に印が付けられた。続いてお布施の要求があり、こちらも皿の上に硬貨と10ルピー札しか見当たらないので10ルピーを置いたところ「いや、100ルピーだ」という。外国人を見ると100ルピーを要求するのが習慣なのかもしれないが、まるで先ほどの再放送を見ているような気分。

ここでも皿の上を指差して「10ルピーしかないでしょ」と言って辞退したが、またしても露骨な不満顔。まったく、僧侶とは思えないような金のがめつさに「さすがインド」という気分になった。(この後も寺院内のいたるところで「100ルピーを要求」→「10ルピーを置く」→「僧侶が露骨な不満顔」という繰り返しは続いた)

気を取り直して、ベランダから外を眺めてみた。見上げるとハヌマーン神の顔。

寺院のすぐ横をメトロの高架が通っていて、しばらく眺めていると列車がやってきた。向こうからもハヌマーン神がよく見えるはず。

屋上に上がる階段もあるが、この時は何か工事が行われていたらしく上がろうとすると関係者に止められてしまった。ハヌマーン神をもう少し近くで見たかっただけに残念だったが、考えてみればこちらは裸足だし、この状態で工事区域に入るのは危険だったかもしれない。

1階に下り、さらに寺院内を歩いてみた。こちらはかなり大規模なジオラマで、青白い顔のシヴァ神に見守られながらコブラ綱引きの真っ最中。しかし頭の側を持っている鬼の方が絶対に有利だと思うのだが。

この寺院には地下に地獄風景が作られている。このワニの口が入口かと思ったが、奥で柵が閉じていた。歯並びなどもよくできているだけに、ここを通れないのが残念。

本当の地獄の入口はこちら。ワニの口と違って普通の階段なのが味気ないが、ともかくも中に入ることにする。

地獄自体はそれほど広くはなく、曲がりくねった洞窟風の細い通路が奥へと延びている。ただ、階段を下りるといきなり突拍子もない人が3人並んでいた。

いったい、この人たちは何者なんだろう。生首を持っている両隣はまだいいとして、真ん中が持っているのはおそらく自分の生首。首から伸びている細いワイヤーは吹き出す血を表現しているのかもしれない。この3人が、おそらくこの地獄のハイライト。

後ろを振り返ると殺戮の女神カーリーがいた。真っ黒な顔からは想像できないが、これは女性の神。イメージ通り、こちらも生首を持っている。

こちらは舌を抜かれる人。舌を抜くといえば閻魔大王がおなじみで、仏教だけでなくヒンドゥ教でも冥界の主は閻魔大王らしいが、しかし随分すっきりした顔立ちをしている。これが閻魔大王なんだろうか。

地獄エリアにも僧侶が1人座っていた。例によって手首に糸を巻かれた後にお布施を要求され、ここでは地獄風景に少し感動していたこともあり、大サービスとして言い値の100ルピーを置いてきた。

しかし、この僧侶は「ここでのお布施の他に、自分へのお布施が100ルピー」などと倍額(というより自分への賄賂)を要求してきた。断ると、こちらも例によって露骨な不満顔。破格の100ルピーを置いているのだから喜ぶかと思ったが、当てが外れた。100ルピーもらって不満とは「あんた僧侶だろ!」と小一時間問い詰めたい気分。

では、強欲な僧侶を後にしてさらに洞窟の先へ進む。

こちらは人を踏みつける神像。しかし金棒を見事に股間に突き立てているのがなんとも。

所々にある神像を見ながら先へ進む。立って歩けないくらい狭い通路もあったりして、ちょっとした探検気分。ただ、地面がかなり湿っぽく、水たまりもあちこちにあるので注意して歩いていても足が濡れてしまうのがちょっと不快。

やがて出口が見えてきた。

虎の口から寺院の外に出た。これで寺院内を一通り見たことになり、ほっと一息。

ちなみに入口(魔王)と出口(虎)の位置関係は下の写真の通り。

寺院から出た時点で、手首はこういう状態になっていた。これを見て、寺院内で100ルピーを何回要求されたか想像してほしい。強い意志がないと、この寺院では散財してしまうことになる。ちなみに、この糸はかなりきつく結んであるので後でほどくのに苦労した。

靴預かり所で靴を受け取り、これでハヌマーン寺院を後にした。私が寺院内にいた時間は1時間半ほど。

ここは巨大なハヌマーン神の造形も見事だし、きれいな神像や地下の地獄風景もあるし、面白い寺院だった。ネット上の情報を見ても、最近は日本人旅行者の間で密かに人気スポットになりつつあるようだし訪れて損はない。メトロの駅から近く、アクセスも容易なので、ぜひ10ルピー札をたくさん用意して参拝してみてほしい。


メトロでラーマクリシュナ・アシュラム・マーグ駅へ戻り、後はバスの時間まで周辺を散策することにした。この辺りはパハールガンジ(メインバザール)という地区で、土産物店やゲストハウスなどが並んでいる典型的なツーリスト街。

この辺りはニューデリー駅から少し離れた地区で、駅近くには悪徳旅行店が並んでいる(らしい)。

散策の途中、安そうな店で昼食にした。注文したのは豆カレー、チャパティ、アイスコーヒーで、値段は130ルピー。こういう小汚い食堂でも、さすがカレーの本場だけあって味はなかなかいい。豆カレーはヨーグルトとの相性が抜群。

ここでいったんシゲタトラベルに戻り、15分ほど休憩した。かなり暑いので、屋外を歩いていると予想以上に体力を消耗する。シゲタトラベルの中は涼しくて快適。

再び外出し、今度は夕食にした。先ほどの昼食から立て続けの食事になるが、これは先ほどの豆カレーが少し量が少なかったことと、バスの休憩中に食事する時間があるかどうか分からず、事前に夕食を食べておきたかったため。入ったのはこの店。

先ほどがチャパティだったので、今回はご飯ものがいいということでタリーを注文した。タリーはインド料理の定番で、何種類かのカレーをひとつの皿に盛ったもの。それぞれに味が違っていてうまい。これにアップルラッシー(ヨーグルトドリンク)を加えて値段は110ルピー。店内の「愛」という壁画を見ながら、食事を楽しんだ。

さすがに立て続けの食事で満腹になったので、近くの店でペットボトルの水(20ルピー)を買ってからシゲタトラベルに戻った。


マナリ行きバスの出発時刻は午後5時。旅行前にマナリ行きのバスはオールドデリー駅の北にあるメインバスターミナルから出発するということを調べていたので、早めにそちらへ移動しないといけないはずだが、なかなか迎えが来ない。シゲタトラベルのスタッフは「大丈夫、もう少し待って」と言うが、かなり不安になってきた午後4時45分、ようやく迎えが来た。

急いで荷物を持ち、スタッフに挨拶してからバス乗り場へ移動。すると、メトロのラーマクリシュナ・アシュラム・マーグ駅近くに大型バスが何台も停まっていた。結局、メインバスターミナルから出発すると思っていたのは私の勘違いで、今回乗るのは路線バスではなくツーリストバスだった。

付近には欧米人旅行者が大勢集まっていて、日本らしい人も何人かいた。

今回乗ったのはこちらの VOLVO のバス。リクライニングシートで、かなり快適だった。これならマナリまでそれほど疲れずに移動できそうな気がする。

予定では午後5時発だったが、30分遅れで出発した。車内はほぼ満員だが、私の隣の席は空いていたので(車内は指定席)、ゆったりと座ることができた。

出発して1時間後、車掌が「ダラムサラ」と声を掛け、10人ほどが降りていった。どうやらこのバスにはダラムサラへ行く人も乗っていて、ここで別のバスに乗り換えるらしい。チベット亡命政府があり、ダライ・ラマ14世が居住しているダラムサラにも興味はあるが、はたして旅行する機会はあるだろうか。

ただ、ダラムサラへの乗客が降りて行った後、なかなかバスが出発しない。何かのトラブルのようにも思うが、言葉が通じないのでよくわからない。1時間近く停車を続け、トイレ(といってもちゃんとしたトイレではなく露店の裏の草むら)から戻ってくると、乗客たちがみんなバスから降りようとしていた。これは明らかに車体にトラブルが発生したらしい。

ということは代替バスを待たないといけないのかもしれないが、何しろここはインドだし、代替バスなんていう気の利いたものがやってくるのかもわからない。もしかしてデリーに逆戻りなんていうことも考え始めたとき、乗客たちが一斉に拍手と歓声を上げてバスに乗り込み始めた。結局、このときの出来事が何だったのかは最後までわからなかったが、何かのトラブルが起き、それが解消されたらしい。マナリまで移動することができそうなので、ほっと一安心。

すっかり暗くなった中、先ほどのトラブルは何だったのかというくらいバスは快調に走り出した。3時間後、夜10時半にこちらのドライブインのような場所で休憩。

ここでの休憩時間は30分。ここで食事にする乗客も多かったが、私は出発前に十分に食べてきたので生搾りのオレンジジュースを飲むだけにしておいた。

夜11時に出発。マナリ到着はおそらく翌朝の9~10時頃になる。