インド旅行記(ティクセ、チェムレ、ヘミス)

レー滞在3日目は、丸1日かけて近郊のゴンパを5ヶ所回ることにしていた。そんなにゴンパばかり見て楽しいのかと思うかもしれないが、それぞれに特徴があって飽きなかった。レーに滞在するときは車をチャーターしてゴンパめぐりをやるのがお勧め。

なお、ゴンパめぐりのページは写真がメインで文章は少なめ。


朝5時半に起床。朝食後、6時にロビーで待っていると運転手(おそらく30代くらいの男性)がやってきた。それなりの英語を話す人で、あまり流暢だと聞き取れないのでこのくらいの人のほうが助かる。ランドクルーザーに乗り込み、ホテルを出発。

チベット系の人だけあって、車のフロントに電池式のマニ車が置いてあり、運転中はずっと右回りにくるくると回っていた。

最初の目的地は、前日に訪れるつもりだったティクセ・ゴンパ。前日は間違ってシェイ・ゴンパを見てしまったが、今度はちゃんと見ることができる。

レー市街を離れ、前日に見たシェイ・ゴンパの前を通り過ぎ、午前6時半にゴンパの前に到着した。

なぜこんな早い時間に来たのかというと、朝の勤行を見学するため。同じ目的で欧米人観光客も数人来ていた。

運転手には2時間ほどで戻ってくると伝えて、まずはゴンパ内を散策。

ゴンパの建物は岩山の上にあるので、しばらくは坂道と階段を上がっていくことになる。さすがに滞在3日目になると体も高地に順応していると思うが、安全のために意識してゆっくりと歩いておいた。

こちらがゴンパの建物。ゴンパはチベット仏教の僧院なので、本堂の他に坊さんたちが居住する建物が並んでいる。15世紀ごろに建立されたゴンパだそうで、赤や黄色など色使いは派手だが、一方で落ち着いた雰囲気もあるところが面白い。

岩山の上なので、ここからの眺めもきれい。インダス川から離れると一転して緑が消えて不毛の大地みたいになるところが面白い。なお、前に見える大通りは本当はまっすぐに続いているのだが、写真を合成したら曲がってしまった。

続いて本堂に入ってみた。若い僧の方が床の雑巾がけをやっていたので、迷惑にならないように端のほうを歩きながら壁画や仏像などを見学することにした。なんとなくくすんだような色合いが、長年の年月を感じさせる。

そして、もちろんあの方の写真も。

チベット文化圏を旅行していると、世界で唯一ダライ・ラマを非難する中国を嫌いになる人が多いのも理解できる。

本堂を出て、上のほうに上がってみた。

屋上に上がると、若い僧の方がトゥン・チェン(チベットホルン)を吹いていた。朗々としたトゥン・チェンの音と、あまりにも出来すぎた風景に感動し、邪魔にならないようにしばらく後ろから眺めていた。

ここからの眺めもきれい。インダス川に沿って伸びている森林地帯と、遠くの雪山のコントラストが見事。

これが僧の方が吹いていたトゥン・チェン。これだけの長さがあると、音を出すためには相当な肺活量が必要になりそうな気がする。おそらく素人には無理。

屋上から下り、さらにゴンパ内を散策。下の黄色の建物が本堂。

しばらく本堂周辺を散策していると坊さんたちが集まってきた。そろそろ朝の勤行が始まりそうな感じ。

本堂に入り、他の外国人旅行者と同様に壁際に座って見学することにした。黄色とオレンジ色の袈裟を着た坊さんたちが次々とやってくるが、おそらく座る位置は階級によって決まっていると思う。

ときどき、大音響で太鼓が鳴らされたりトゥン・チェン(おそらく屋上で見たのと同じ種類)が吹かれたりするが、基本的には読経がメイン。言葉はわからないが、雰囲気はなかなか荘厳なもの。

途中、若い僧の方がやかんを持ってバター茶を配りだした。僧の方は自分用の陶器製コップに注いでもらっていて、外国人旅行者には紙コップが配られた。旅行者にももらえるとは思っていなかったので、ちょっと嬉しい驚き。

バター茶を飲んだのはこれが初めて。味はどうかというと、バターの他に塩味が効いていて、今までに飲んだことのない味だった。強いて例えるなら塩ラーメンのスープをあっさりとした感じにしたようなもので、私は悪くないと思ったが、うまいかどうかは人それぞれ。

バター茶の後も朝の勤行は続く。予想していたよりもかなり長く、隣の欧米人男性が「これは何時まで続くのか知ってる?」と聞いてきたが、私にもわからない。そろそろ運転手と約束していた時間が近づいてきたので、途中で外に出ることにした。(後で調べたところ朝の勤行の時間は7時~9時だったらしい)

最後まで見ることができなかったのは残念だったが、しかし貴重な体験だったと思う。

ゴンパを出る前に、別の建物に入ってみたらチャムカンというお堂だった。

弥勒菩薩像の頭の飾りを見て、不謹慎ながら「デーモン閣下?」なんてことを考えてしまった。すみません。

ティクセは、レー近郊のゴンパの中でおそらく一番有名なゴンパだと思う。ゴンパの建物も雰囲気がよかったし、朝の勤行も見学することができたし、楽しかった。レー滞在中にどこか1ヶ所だけゴンパを見るとしたら、やはりティクセがお勧め。


8時半にティクセ・ゴンパを出発して、次の目的地のチェムレ・ゴンパへ移動。30分ほどで遠くにチェムレ・ゴンパが見えてきた。ここから見ると、先ほどのティクセ・ゴンパと違って建物が山の斜面にへばりついているように見えるが、実際は小高い岩山の上にある。しかし、ここから見ても滑り落ちそうな感じ。

近づくと、ゴンパが岩山にあることがよくわかるようになった。よくあんなところに建物を建てたものだと思う。ここは先ほどのティクセよりは新しく、建立されたのは17世紀。

斜面に作られた道路を上がってゴンパの前に着いた。ここでしばらく待ってもらうことにして、マニ車(大型サイズと小型サイズ)を右回りに回しながら建物へ。しかし天気がいい。

建物に入ると、こういうものが壁際に掛けてあった。おそらくこれは山羊のミイラ。

迷路みたいな建物の中をしばらく探索。どこも神聖な感じがして歩いていると面白い。壁画は少し傷んでいる部分もあるが、しかしかなり稠密。

雰囲気を楽しんだ後、建物を出て外を眺めてみた。麓からは、こんな風につづら折れの道を上がってくる。

チェムレ・ゴンパ滞在は40分ほど。ティクセよりはマイナーなので観光客がまったくおらず、雰囲気を楽しむことができた。


次の目的地はヘミス・ゴンパ。その移動の途中、しばらくインダス川を眺めることができた。これがあの有名なインダス川の上流部分で、この川の下流に古代文明が発祥したことになる。

やがてヘミス・ゴンパに到着した。ラダックで最大規模のゴンパといわれているだけあって、今までに見たゴンパと比べて建物の規模が大きい。

今までのゴンパとは違い、ここには大きな広場があった。岩山ではなく山の斜面に作られたゴンパということもあり、おそらく使える土地が広いからだと思う。旗の掲揚台もあるし、なんとなく日本の寺院にも近い雰囲気。

ヘミス・ツェチュという祭りの時期には大勢の人で賑わうそうだが、今は静かなもの。

建物に入ると、正面に大仏があった。空間の広さも今までのゴンパとは違うし、壁画も大規模。

ゴンパの境内には仏像を祀っている部屋がたくさんあり、迷路のようになっている。「この通路はどこへ行くんだろう」と考えながら歩いていると唐突に知っている場所に出たり、散策していると面白い。

このゴンパには博物館がある(本堂の向かい側の建物)。100ルピーでチケットを買い、中に入った。なお博物館内は写真撮影禁止で、入口でカメラを含むすべての荷物を預ける必要がある。このため内部の写真はない。地下にある広い展示室に古い仏像、経典、タンカ(仏画の掛軸)が展示されていて、見ていると面白かった。ただ、自分がチベット仏教に関する知識を持っていないので、深く理解できなかったのが残念。

ヘミス・ゴンパからの眺め。遠くにインダス川の峡谷が見える。

今までのゴンパは本堂が岩山の頂上にあったが、ここは本堂の上の斜面にも建物が並んでいる。

これで全5ヶ所のうち3ヶ所のゴンパを見たことになる。この続きは次のページで。