台湾旅行記(旗山 / 鳳山寺)

高雄滞在2日目は郊外の旗山という町にある鳳山寺へ行くことにしていた。田園風景の中に突然現れる高さ21メートルの像が強烈で、ぜひとも行ってみたい場所だった。こんなシュールな風景は世界でも珍しいと思う。


朝9時に起床。10時にホテルを出て、高雄駅前にある高雄客運のバスターミナルへ。旗山経由六亀行きのバスが10時20分発ということは事前に調べていた。時間通りにバスが来て、旗山へ向けて出発。旗山までの運賃は108元。

高雄市内を走っているときに文藻外語大学の前を通った。台湾の大学は門も凝っている。

11時半過ぎに旗山のバスターミナルに到着した。下りようとすると、近くに座っていたおじさんが「旗山はもっと先」と言っているようだったが、バスターミナルに旗山と書かれているのでここで下りた。(このおじさんの意図は後ほど分かった。このバスターミナルは旗山の町外れにあり、観光地になっている中心部へ行くためにはもう少し乗っているほうがいいと言ってくれていたわけだった。もっとも、今回の目的地は鳳山寺だし、ここで下りたことは問題ない。おじさんの親切を無視してしまったことは申し訳ないが)

バスターミナルを出たところで、乗ってきたバスが出発していった。

しばらくバスターミナル周辺を散策したが、川沿いの風景はきれいなものの、特に何もない。バスターミナルに戻り、ファミリーマートで缶コーヒーを買って休憩してからタクシーで鳳山寺へ向かうことにした。

バスターミナル前からタクシーに乗ったが、運転手は ビンロウ で口の中が真っ赤。できればこういうタクシーには乗りたくなかったが、仕方がない。

旗山の市街を抜けると、大通りを一直線に5分ほど走り、横道に入ったところに目的の鳳山寺があった。タクシーを下り、高さ21メートルの済公活佛を驚愕の思いで見上げてみた。

いやあ、ネット上の写真では見ていたが、実際に見てみるとやはり強烈だ。わざわざここまで来た甲斐があった。こんな立像が他にあるだろうか。

ネット上の情報によると以前は無精ひげが伸びていたようだが、今はきれいになっていた。おそらく宴会の合間に剃ったのだろう。酒を入れた徳利を持ち、今にも笑い出しそうな表情。

済公活佛とは南宋時代の僧がモデルだそうで、ガイドブックなどには「酒と肉を好み、奇怪な格好や立ち振る舞いから逸話も多いが、神通力を持ち、民衆に崇められた僧だったという」と書かれている。単なる破戒僧ではなく、現在では名僧として中国や台湾では知らない人はいないほどの知名度らしい。

いつもボロボロの僧衣と袈裟を着ていたそうで、そのあたりのことが背中に回るときちんと表現されている。

しかし、何よりすごかったのが足元をぐるりと囲む小型サイズの済公活佛たち。同じ顔がずらりと並んでいるのを見ると、何だか異世界に来たような気持になった。こんなシュールな風景があるだろうか。

というわけで済公活佛に圧倒されてしまったが、ここは寺院なのでちゃんと本堂もある。偶然にもこの日は祭りが行われていたようで、揃いのシャツを着た人たちが次々とやってきていた。

祭りも気になるが、そちらは後で見ることにして、まずは済公活佛の中に入ってみることにした。階段は急だが、酒臭くはない。

途中の壁には様々な逸話が描かれている。この僧が現在でも人気がある理由は、相手がどんな権力者であっても気にせず懲らしめたところにあるらしい。これらの絵は、そういう場面なのだろう(多分)。

済公活佛の生い立ちや逸話については、検索すればいろんなページが見つかるので、そちらを参照してほしい。日本でももっと知名度が上がってもいいような気もする。

最上階まで登ると周辺の田園風景が見渡せた。本当に周囲に何もない平野に囲まれていることがわかると思う。ここに唐突に大きな立像が現れるのだから、その衝撃はかなりのもの。

しばらく景色を眺めた後、地上に降りた。

昼時になったので、寺院内にあったこちらの食堂で昼食にした。台湾の漢字は日本人にはわかりやすいので助かる(中国の漢字は簡略化しすぎていてわかりにくい)。ビーフンの炒め物とスープを選び、値段は30元。こういう安食堂でも味は十分にうまいところはさすが台湾。

昼食後、本堂のほうへ歩いてみた。済公活佛はひょうたんの形をした徳利を持っている姿をしているので、焼却炉もこんな形。よくできている。

では本堂に入る。台湾の寺院は本当にカラフル。

階段を上がるとそれぞれの階に仏像が安置してあるという、台湾の寺院ではよく見るスタイル。各階で違った雰囲気になっているので、上がるたびに楽しめる。

最上階に上がり、テラスに出ると正面に済公活佛が見える。この写真を見ても、だだっ広いところにぽつんと立っているのがわかると思う。しかし、いい笑顔だ。

しばらく景色を眺めた後、地上に下りて本堂を出ると祭りが続いていた。それぞれ揃いのTシャツを着ているので、あちこちの町から集まってきてるのだろう。しばらく祭りを見物してみた。

見ていると、各グループに一人、祭りの主役になる済公役がいた。立像と同様にひょうたん型の徳利を持ち、酔っ払いになりきってふらふらしながら本堂に入っていく。周囲の人たちは太鼓を叩いたり地面にお札を置いて火を点けたり、済公のサポート役に徹していて、見ていると面白い。

ここは台湾なので、当然ながら爆竹も大量に使用される。ひとつのグループの参拝が終わると、本堂の前はこんな感じ。

この日に祭りが行われているというのはまったく知らなかったので、偶然にも見ることができて幸運だった。各グループの酔っ払い役も、それぞれ演技に特徴があって面白い。特に、絵に描いたような千鳥足で奇声を上げていた年配の女性が強烈で、ここまで本格的に酔っ払いを演じてくれたことに感動した。

最後に済公活佛の足元にある池を見物。水面には龍が作られている。

鳳山寺を後にする前に、もう一度正面から済公活佛を眺めてみた。

改めて見ても、やはり強烈だ。こんな凄い立像は世界にもそうは例がないだろう。ぜひとも多くの人に見てほしいものだし、私もいつか再訪したい。