台湾旅行記(旗山 / 旗山老街)

この日は鳳山寺を見るために旗山へ来たわけだが、旗山の町も観光地になっている。1920年代に建てられた古い建物が残る町並みが有名だそうで、普通の観光客はこちらを目的に訪れるのだろうが、私の場合は鳳山寺のついでに散策してみた。


鳳山寺から旗山の町に戻らないといけないが、交通手段がない。来たときはタクシーで5分くらいだったので歩けない距離ではないし、それに大通りを一直線に走ってきただけなので道に迷うことはないだろう。途中でタクシーが見つかれば乗ればいいし、とりあえず旗山のほうへ歩くことにした。

鳳山寺から少し歩いて大通りに出ると、後は一直線に続く道路をひたすら歩く。

「帰りはタクシーがいないことは分かっているのだから、待っていてもらうか帰りの時刻を連絡して迎えに来てもらえばいい」と思うかもしれないが、私の場合はこういうのが苦手。待っていてもらうのは気が引けるし、帰りの時刻を連絡すると時間に追われているような気持になる。時間を気にせずに見て回りたいので、タクシーを利用するのは基本的に片道だけ。おかげでこんな風に歩かないといけない破目になることがよくある。

結局タクシーには出会わず、旗山まで戻ってきた。旗山はかつてサトウキビとバナナで栄えた町だそうで、町の入口には大きく BANANA と表示されている。

町の中心部まで歩く途中、POYA という店があった。帰国後に調べたところ台湾では有名な日用雑貨店だそうで、つまり何となく日本の化粧品メーカーに似ているような感じがするのは気のせい。

旗山の中心部まで来ると大勢の観光客が歩いていた。来る前は高雄近郊のマイナーな町くらいにしか考えていなかったので、予想外の人気ぶりに驚いた。

町の中心部には旗山駅がある。もっとも、現在は鉄道はなく、これはかつて製糖工場の軽便鉄道が旅客輸送していたころの駅舎跡。中に入れるかと思っていたのだが、この通り柵で囲われていた。おそらく修復工事のための一時的な閉鎖だったと思う(多分)。

少し歩き疲れていたので、かき氷を食べながら休憩。注文したのは「百香果清氷」で、値段は35元。写真から想像できるとおり味は濃厚でうまい。

旗山駅からまっすぐに伸びる「旗山老街」というメインストリートを歩いていると、旗山天后宮という寺院があったので入ってみた。内部は豪華絢爛で素晴らしいが、特に気に入ったのは緑色の目をした「金虎将軍」の像。帰国後に調べたところ、これは別名 金虎爺 とも呼ばれ「子供の守り神であり、さらに金儲けの神様」だそう。モチーフは虎(のはず)だが、猫みたいにも見える。

この後、ここの名物らしい杏仁豆腐(35元)を食べながら散策を続けた。こういう古い町並みを見ながら歩くのは楽しい。

散策の途中、前を歩いていたカップルのTシャツをこっそりと撮ってみた。

「虎面レスラー」

さらにその下に書かれているのが「この勝ちもまた、宿命なのでしょう」。多分タイガーマスクのことなんでしょうけど、いったいどこでこういうTシャツを買うんだろう。いつか、アジアで見かけた面白いTシャツの特集ページを作ってみたい。


午後4時過ぎ、散策を終えて高雄へ戻ることにした。帰りのバスは旗山バスターミナルではなく近くのバス停から乗ることにしていて、コンビニエンスストアみたいな店で飲み物を買った際にバス停の場所を教えてもらった。

店の近くにあった「市場前」というバス停で待っていると、すぐに高雄方面へのバスがやってきた。乗る際に料金を払うシステムで、運転手に高雄と告げると運賃は109元。来たときは108元だったので、なぜか1元高い。この理由は後ほど分かった。

バスが旗山市街を離れると、高雄から旗山へ来たときとは逆方向へ走り出した。地図を見ると台南方面へ向かっているようで、急に不安になったが、確かにバスの行き先には高雄と表示されていたし、とりあえずこのまま乗っていることにした。

旗山を出発してからしばらくすると、こういう風景が見えた。

これって旗山の近郊にある「月世界」というスポットでは? ここは地図を見ると明らかに台南へ向かう途中にあるが、まあ間違えて台南に行ったら列車で戻ってくればいいし、このときは月世界という景色を少しだけ見られたことを幸運に思うことにした。

ちなみに月世界とは「灰色をした粘土質の大地が風雨の浸食で作り出した地形と、塩分を豊富に含んでいるため植物が生えないこともあって月の表面のような風景を展開している場所」のこと。今回の滞在で見られるとは思っていなかった。

本当に台南へ行くかもと思い始めていたが、バスは月世界を過ぎたあたりで方向を変え、高雄のほうへ戻りだした。どうやら遠回りして高雄へ向かう路線だったようで、とりあえず一安心。

その途中に阿蓮という町を通っているとき、Alien’s Dental Clinic という歯科医院が見えた。阿蓮はアルファベットでは ALIEN と書くのか。英語表記だけ見たらエイリアンが歯の治療をやってそう。

この旅行後、戯れに Alien Dental で検索したらこんなサイトが見つかった。どうやらチェコにある歯科医みたいなんだが、女医さんの顔が怖すぎ。チェコ近郊に住んでいる人がいたら、ここがどういう歯医者なのか調べてきてほしい。

旗山から1時間ちょっとで、高雄の郊外にある岡山(ガンシャン)駅前に到着。バスはひとつ先の南岡山駅まで行くようだが、ここでバスを下りた。

結局、バスは高雄市の外れにある南岡山行きで、併記されていた「高雄」という文字を見て高雄駅前行きと勘違いして乗ってしまったらしい。詳しく見なかったのが失敗だったが、しかし月世界の風景も少しだけ見られたし、結果としてよかったということにする。

岡山駅から国鉄の普通列車に乗り、午後6時半に高雄駅に到着した。料金は31元。