コソボ&アルバニア旅行記(グラチャニツァ)

プリシュティナの郊外にグラチャニツァという地区がある。世界遺産に登録されているグラチャニツァ修道院があることから、おそらくプリシュティナへ来た旅行者が一度は訪れる場所だと思う。

ただし、ここはアルバニア系の住民が多数を占めるコソボにあって例外的にセルビア系住民が多い地区なので、訪問の際はちょっとした注意が必要。


プリシュティナ市街からタクシーでバスターミナルへ移動。バスターミナルは少し郊外にあり、歩けない距離ではないがタクシーを利用するほうが便利。タクシー料金は2ユーロだった。

首都のバスターミナルといっても規模はそれほど大きくはなく、5台ほどのバスが停まっているだけだった。

まずはグラチャニツァ方面へ行くバスを探さないといけないが、ここで少し気をつけないといけないことがある。グラチャニツァはコソボにあるセルビア人の孤島のような地区なので、アルバニア系住民には旅行者がグラチャニツァへ行くことを快く思わない人もいるらしい。ネット上には、珍しい日本人が来たということで他の乗客や露店主たちが歓迎してくれていたとき、うっかりグラチャニツァの名前を出したら急に周囲から笑顔が消えて冷淡になり、追い払うような仕草をされたという体験談もある。セルビア人に恨みはないが、なるべくならグラチャニツァの名前を出したくない。

バス乗り場へ行くとケバブ店の店員から「やあ、君は日本人か。よくコソボへ来てくれた」なんていう感じで話しかけられたが、どこへ行くかは言わずにこちらも笑顔で対応しておいた。それから建物内に入って窓口を探し、「グラチャニツァへ行くバスは何番乗り場?」ということをこそっと聞くと、こちらは事務的な調子で乗り場を教えてくれた。

教えられた乗り場へ行き、停まっていたバスに乗り込んで出発を待つことにした。

車内はほぼ満員で、2時ちょうどに出発した。車内で待っていた時間は15分ほど。

バス料金は車内で車掌に払うことになる。小声で「グラチャニツァ」と言うとチケットを渡してくれた。グラチャニツァまでの料金は0.5ユーロ。

プリシュティナから約20分でグラチャニツァに到着。車掌が知らせてくれたので、間違わずに下りることができた。ここで降りた乗客は2人だけで、バスはすぐに発車していった。

グラチャニツァ修道院の場所までは調べていなかったが、小さな集落なので迷うことはない。通りを歩いていくと壁に囲まれた修道院らしい場所が現れた。しかし壁の上に有刺鉄線が張られているのを見ると、少し緊張する。

ここは「コソボの中世建造物群」のひとつとして世界遺産に登録されている(ただしコソボではなくセルビアの世界遺産として)。コソボ紛争の際には、同じく世界遺産の「デチャニ修道院」には手榴弾が投げ込まれるという事態が起きたらしいが、ここは何とか無事だったらしい。しかしながら政情が不安定ということで危機遺産リストにも加えられている。

今でも NATO の平和維持軍が常駐していて、中に入るときにはパスポートの提示が必要と言う情報もあったので、その準備をしていた。しかしながら、行ってみると今は撤収していたようで、かなり静かなものだった。もちろん、パスポートも必要なし。

正門は閉まっているので、その横の通路から中に入ると正面にビザンチン様式の聖堂が見える。

聖堂の内部は写真撮影禁止。かなり荘厳な感じでフレスコ画も見事だったが、写真で紹介できないので、これは実際に修道院を訪れてもらうしかない。全身黒衣に見事なひげという、絵に描いたような修道士の人が礼拝しているのを見学したり、フレスコ画やイコンを近くで観察したり、かなり興味深く滞在できた。この修道院が建てられたのが1310年だそうだから、実に700年以上が経っていることになる。

聖堂を出て、周囲を一回りしてみた。聖堂の後ろにある建物が、おそらく僧坊だと思う。芝生も整備されているし、ここが危機遺産リストに入っているとは思えないほど実に緑がきれい。

敷地内に土産物店があり、宗教グッズやグラチャニツァの土産物などが売られていた。値段はセルビアの通貨ディナールで表示されていて、それ以外にユーロも使えるという書き方になっていた。今でもこの地域はセルビアの一部と考えていることを実感。

ここでは蓋がついた陶器製の小皿を買ってみた(16ユーロ)。蓋にはグラチャニツァ修道院がデザインされていて、今は自宅で角砂糖入れとして使っている。

修道院を出て、しばらく周辺を歩いてみることにした。大通りから横道に入ると、かなりのどかな田園風景が広がっていた。コソボにあるセルビア人の孤島ということで、住人にはいろいろと大変なこともあるのだろうが、こうやって歩いている限りは平和そのもの。

大通りに戻ると騎馬像があった。このときはアルバニアの英雄スカンデルベクの像だろうと思ったのだが、よく見ると特徴的なあごひげがない。セルビアのミハイロ公の像かもしれないが、詳しいことはわからない。

騎馬像の足元に犬がいたので写真を撮ってみた。

その後、大通り沿いをしばらく散策。水は出ていないが、噴水のデザインが面白い。

修道院の前を通り過ぎ、バス乗り場へ向かう途中の風景を見ても、プリシュティナにはあれだけたくさんあったコソボとアルバニアの国旗がまったくない。あちこちに掲げられているのは、もちろんセルビアの国旗。

コソボの独立を承認する国が増えても、この地区の住民にとってはここはずっとセルビアのままなのだろう。ここの人たちに日本人と中国人と韓国人の区別がつかないのと同様、私もセルビア人とアルバニア人の区別はつかない。ただ「今まで数百年も共存してきたのだから、これからも一緒に暮らせばいい」という単純な話ではないことは想像できる。おそらく、この集落だけは今後もコソボ国旗ではなくセルビア国旗が掲げられ続けるのだろう。

バス停には時刻などは表示されていないので、どのくらい待つことになるのかが分からなかったが、他にもバスを待っている人がいたのでそのうち来るのだろう。そう思っていると15分ほどでプリシュティナ行きのバスがやってきた。来たときと同様、20分ほどでプリシュティナのバスターミナルに到着した。

これから市街へ戻るわけだが、バスターミナルの近くにサーカスがあった。

こういうサーカスは今までウズベキスタンとキルギスで見たことがあるが、ここは国旗を見るとイタリアのサーカスらしい。ぜひ見たいと思ったので、窓口で5時半のチケットを買っておいた。値段は10ユーロ。

時間があるので、いったんホテルへ戻り、夕方また来ることにした。サーカスの様子は次のページで。

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