モルドバ&ルーマニア旅行記(ブカレスト / 国民の館)

ブカレスト滞在2日目。この日はブカレスト最大の観光スポットと言える国民の館を見ることにしていた。

ガイドツアーのチケットは観光客に人気なので、オープンと同時に入ったところ無事にチケットを購入できた。


朝7時半に起床。朝食後、ホテルを出て9時のオープンと同時に国民の館に行くことにした。写真では伝わらないかもしれないが、実際に見ると建物の巨大さに圧倒される。遠くまで離れないと1枚の写真に収まらない。

建物の正面まで歩くと、なんとまあ驚くほどの巨大さ。よくこんなものを建てたものだ。チャウシェスク大統領の独裁ぶりが、ここからも実感できる。

しばらく正面から建物を眺めた後、中に入る。

館内に入るとチケット売り場があり、ここで無事に12時スタートのガイドツアーチケットを購入できた。値段は35レイで、カメラチケットが別途30レイなので合計65レイになる。今回の旅行でもっとも見たかった建物のチケットを購入でき、ほっと一安心。

ガイドツアーまで3時間近くあるので、それまでブカレスト市街を散策することにした。国民の館から一直線に続く大通りは、歩道が樹木に覆われていて散歩には最適。

しばらく歩くとトラムの路線がある大通りとの交差点に出た。ここで路面電車をしばらく見物。

この交差点付近からは、大通りの先に国民の館が見える。もともと、この通りは両側に古い建築物が並び「東欧のパリ」と呼ばれるほど魅力的な街並みだったらしいが、チャウシェスク大統領によって歴史的建造物の多くが破壊され、だだっ広い無機質な計画都市に作り変えられてしまった。

中央分離帯に噴水があったりするが、かつての町並みが失われたのは残念。旧ソ連や東欧で見られる計画都市は、道路がやたらと広くて遠くまで見通せるからわりと近そうに錯覚するが、実際は歩いていくとかなり遠い。おかげで、散策していると予想以上に時間がかかる。

歩き疲れたので、11時過ぎに国民の館に戻った。エントランスにあったカフェでコーヒーを飲みながら休憩。

ちょうど12時にツアー参加者が集められ、ガイドツアー開始。本当に楽しみ。

この「国民の館」については、有名な建物だから知っている人も多いと思うが、つまりチャウシェスク大統領が特に目的もなく作らせた巨大な宮殿のこと。単独の建築物としてはアメリカのペンタゴンに次いで世界第2位の大きさになる。Wikipedia によると地上10階、地下4階、高さ84m、幅275m、奥行き235m、延床面積330,000㎡、部屋数は3107だそう。

「国民の」といっても実際は自分の権力を誇示するためだったわけで、ネット上では徹底的に罵倒されているのであえて悪口を付け加えることもない。このページではコメントは少なめにして主に写真を並べておくことにする。

まず、見学するのがこちらの回廊。天井が異常に高く、この時点で空間の馬鹿でかさに驚かされる。

こちらは劇場。あの照明なんてどのくらいの費用がかかっているんだろう。

その後も、無駄に広い空間が続く。ツアー参加者一同、この時点でため息しか出ない。

下の写真の中央に写っている女性がツアーのガイド。ガイドツアーの参加者と比べると、空間がどれだけ広いか実感できるだろうか。

以下、建物内の風景を並べておく。どこも大理石がふんだんに使われていて、ルーマニア中から大理石を集めたため墓石が不足してしまったという話があるほど。

ここに敷かれているのは、国民の館の中でも名物になっている巨大絨毯。この大きさなのに継ぎ目のない1枚物のカーペットで、いったいどれだけの重さがあるのか。運び込むのも大変だったはず。

大理石の壁には、こちらも高そうな絵が描かれている。

こんな風に建物内は大理石やら高級木材やら高価な資材がふんだんに使われているわけだが、それが決して荘厳な雰囲気になっていないところが興味深い。なんとなく張りぼて感が漂うというか、空虚な感じがする。

その理由だが、空間が無駄に広いというのもあるものの、やはり細部へのこだわりがないことが大きな要因だと思う。一見、手の込んだ作りになっているように見えるが、近くで見ると雑というか、同じ模様が繰り返されているだけ。その模様もよく見ると稠密さがなく手を抜いてあるので、前日に見たシナイアのペレシュ城のような感動がまったくない。

1500億円もの費用(1980年代当時)をかけて、こんな空虚なものを作ったというのが驚き。

下の部屋は会議室で、これまた設備に金がかかっている。

しかし、会議室の照明をシャンデリア風にする必要があるのか?

このあたりで中庭を眺めることができた。(ただし、外に出ることはできない)

この後も「ここは巨人が住んでいた屋敷だったのか?」と思えてくるような馬鹿でかい空間が延々と続く。ツアー参加者一同、もう言葉も出ない。

部屋数が3,000以上もあると電気代も馬鹿にならないので、照明が消されている部屋も多い。

下の写真の部屋は、天窓を取り外すことでヘリポートとしても使えるようになっていたらしい。

やはり、革命などの非常事態が発生したときのことを考えていたのかもしれない。実際に、1989年に革命が起きたときチャウシェスク大統領はこの建物の屋上からヘリコプターで逃亡しているんだが(後に捕まって処刑)、この部屋から脱出したのかはわからない。

この部屋も無駄に豪華で、柱が神殿風になっている。

館内の階段は、1段の高さがチャウシェスク大統領の体形に合わせて作られているという。国民の館と言いながら、実際はチャウシェスク大統領の宮殿だったことがよくわかるエピソード。

この階段の踊り場にあるのが、長さ18メートル、1枚の重さが250キロという巨大カーテン。こんなカーテンは他では見ることができない。

あまりに空間が広いので、写真を見るとツアー参加者が小人みたいに見えてしまう。

この部屋は集会場か会見場だろうか。天窓が宇宙船みたい。

こちらの広大なテラスからブカレスト市街を眺めて、ツアーは終了。このテラスにもちょっとしたネタがある。

ここは、マイケル・ジャクソンが「ハロー、ブダペスト!」と呼びかけて、大スターを見ようと集まっていたブカレスト市民が全員ひっくり返ったという伝説のテラス。まあ確かにブカレストとブダペストは似ているんだが、こんな大舞台で堂々と間違えるのはさすが大物。今では国民の館について説明する際に必ず語られる面白いエピソードになっていて、このツアーでもガイドが笑いながら話していた。

テラスの柱も、もちろん神殿風になっている。

テラスからの眺め。かつて「東欧のパリ」と呼ばれていた街並みは、こんな風に無機質な大通りに変わっている。

ここで撮った3枚の写真をパノラマ風につなげてみた。空間の広大さがわかると思う。

大通りのアップ。午前中は、あの通りから国民の館を眺めていたことになる。

このテラスで撮った動画を下に載せておく。

ここで引き返し、再び館の中を通って入口に戻った。無駄に広い空間も、これで見納め。ツアー時間は、ちょうど1時間だった。

ところで、これまでニコラエ・チャウシェスク大統領のことを知っているという前提で記述してきたが、今はどうなんだろうか。1980年代の終わりごろには世界でも有名な独裁者だったんだが、もう知らない人が多いかもしれない。そういう人は Wikipedia あたりを参照してほしい。

館内がどれも巨大すぎて想像をはるかに超える建物だったが、かつてこんな独裁者がいたということが実感でき、興味深い場所だった。ブカレストを訪れる際は、絶対に見てほしいスポットと言える。これからも観光資源として活用し、建造にかかった費用を少しでも回収してほしい。


いったん旧市街に戻り、ホテル近くの Klein というカフェで休憩した。コーヒーを頼もうかと思ったが、メニューを見たら「Brave Samurai」というスムージーがあったので注文してみた(16レイ)。

こちらがその「勇敢なサムライ」なんだが、何がサムライなのかよくわからなかった。

さらに散策した後、レストランでルーマニア料理の昼食。ロールキャベツとレモネードで44レイ。

ブカレスト最大の見どころは無事に見ることができたが、まだ観光する時間がある。そこで、市内にあるヘラストラウ公園へ行ってみることにした。続きは次のページで。