ジョージア旅行記(ノヴィ・アフォン / 後編)

旅行会社の露店のおばさんに鍾乳洞の方向を教えてもらい、そちらへ歩く。この橋の先へ行けばいいらしい。

橋の上から眺めた小川の風景。本当にのどかなもの。

小道を歩いていくと大通りに出て、急坂を上がっていったところに観光施設らしい大きな建物があった。近づいてみると、これがノヴィ・アフォン鍾乳洞だった。

では、早速鍾乳洞に入ることにする。下の写真は、スロープの前にあったよくわからないオブジェ。2人で山羊を抱えているのか?

この鍾乳洞は、入口から観光洞のエリアまで列車に乗って移動することになる。つまり洞内を鉄道が通っているという珍しい鍾乳洞で、かつてスロベニアのポストイナ鍾乳洞でトロッコ列車に乗ったことはあるが、こういう本格的な鉄道に乗るのは初めて。

列車の運行時刻はあらかじめ決まっていて、窓口でチケット(500ルーブル)を購入したところ約5分後の15時発だった。たしか1時間おきくらいの運行で、偶然ちょうどいい時間に来たらしい。

こちらが洞内を走る列車。通路は狭いものの、意外とちゃんとした地下鉄車両になっている。

移動中の列車内。もともと鉄道は好きなので、移動中はすごく楽しい。この列車に乗ること自体がアトラクションだと思う。

約1キロの移動を終え、Apsny 駅に到着した。ここで列車を下り、鍾乳洞の方へ歩く。

出発する前に、かまぼこ型のフレームがあるところでガイドが説明してくれる。しかし、もちろんロシア語なのでまったく理解できない。

このときの動画。ガイドの女性のロシア語がわかる人がいたら内容を教えてほしい。

まったく理解できない説明を聞いた後、洞窟観光に出発。アブハジアには規模の大きな鍾乳洞がいくつも存在しているということは事前に調べていたが、この洞窟の空間の広さもかなりのもの。

カメラの感度を上げているために写真では明るく写っているが、実際の洞窟内はもっと暗い。下を見下ろしながら細い通路を歩いていく。

以下、主な風景を載せておく。鍾乳石の発達具合は見事なもの。

特に壮観だったのが下の風景。広大な空間に沿って細い通路が作られていて、観光客がずっと先まで歩いていく。日本も鍾乳洞が多い国だとは思うが、こういう景色が見られる鍾乳洞はあるだろうか。

いったいどこまで続くんだろう、と思わせる風景。繰り返すが、実際の洞内は写真よりずっと暗い。

もともと洞窟探検は好きなほうで、できれば趣味としてケイビングを始めたいと思っているくらいなので、この鍾乳洞は本当に楽しめた。(長崎県在住だと北九州の平尾台まで行かないと石灰岩地帯がなく、それに金のかかる趣味がこれ以上増えるのも困るので、ケイビングは何度か体験するだけにとどめている)

日本では、ここまで規模が大きくてダイナミックな洞窟は見られないと思う。もちろん、日本の鍾乳洞には別の良さがあり、荒々しさはなくても箱庭のような細かい造形は十分に魅力的。

まるでつくしのように伸びた石筍。まだ短い石筍は、なんとなくエイリアンの卵のように見える。フェイスハガーが飛び出してきそう(わかる人にはわかるはず)。

観光洞の終点近くには、これまた広い空間がある。

それにしても、見事な鍾乳石。

アブハジアの洞窟といえば「世界でもっとも深い洞窟」と言われている クルベラ洞窟 が有名。現在判明している最大深度が2,000メートルを超え、最深部にはまだ誰も到達していないという。さすがに観光洞にはなっていないので、この洞窟は一生見る機会はないだろう。

ちなみに上でリンクしている Wikipedia には「クルベラ洞窟のあるアブハジアは現在ジョージアからの分離を求めて事実上独立状態にあり、ジョージアからの通行は事実上不可能な状態となっている」と書かれているが(2021年時点)、当サイトを見ている人にはわかる通りアブハジアはジョージアから普通に入れる。建前と実際が違うのはよくあること。

YouTube にクルベラ洞窟の動画があったので載せておくが、こんなものすごい縦穴を見てみたい。しかし、やはり一般人には無理。

メイドインアビス の深界三層「大断層」って、こんな感じなんだろうか。(マニアックな話題ですみません)

洞窟見学を終え、ここから入口まで列車で戻る。来たときとは違い、帰りの出発は Anakopea 駅から。

やがて列車がやってきた。

列車の到着シーンを下に載せておく。

列車に乗り込むと、すぐに動き出した。帰りもアトラクションのように楽しい約1.3キロの列車移動を終え、洞窟入口の駅に戻ってきた。時刻は4時半で、洞窟内に1時間半ほどいたことになるが、あっという間だった。

列車にはアブハジアの国旗が大きく描かれている。

名残惜しいが、これで洞窟観光は終了。久しぶりに太陽の光を見て、ほっと一息ついた。遠くに見えているのは修道院。

館内にパンを売っているコーナーがあったので、パンとジュースを買って休憩。その後、ここでトイレに行こうと思ったがトイレの表示が見つからない。

館内にフリー WiFi があったのでロシア語の旅行用会話が紹介されているサイトを探し、「トイレはどこですか?」という文章をパンコーナーの女性に見せたところ、トイレは屋外にあるということをジェスチャーで教えてくれた。トイレがあるのは、上の写真で緑色の長い屋根がある建物付近。

トイレに行った後、近くに土産物店が並んでいたので、アブハジアの国旗と国章がデザインされたマグカップを買ってみた(130ルーブル)。

このマグカップだが、ジョージアに戻ってからは見つかったらまずいかもしれないと思い、隠し持つことになった。今は自宅でアブハジアを感じながら使っている。

その後、ノヴィ・アフォンの公園付近に戻り、しばらく散策。再び、この町を訪れる機会はあるだろうか。

そろそろスフミに戻ることにして、黒海沿いの大通りでマルシュルートカを待つことにした。マルシュルートカ乗り場は巻貝の形をした建物になっていて、下の写真は昼間に黒海沿岸を歩いているときに撮ったもの。

午後5時15分にマルシュルートカがやってきて、確認したらスフミ行きだったので乗り込んだ。風光明媚な景色を眺めながら、スフミへ移動。運賃は来たときと同じく100ルーブル。

約35分でスフミ駅に到着した。何度も見ているのでおなじみになったスフミ駅。

ここからタクシーでホテル近くへ移動。このとき乗ったタクシーはフロントにCDが何枚も貼られていて、装飾なのかもしれないが「視界が狭くなって危ないんじゃないの?」なんてことを思った。まあ、ここは日本ではないし、何をやっても運転手の自由。

タクシーを下り、ホテルに戻る前に領事館へ行ってみた。すると、朝とは違って柵は開いている。これはビザが取得できるも、と期待して中に入ったのだが、建物に近づいたところで職員から注意された。もちろんロシア語なので完全には理解できないが、どうやら建物は開いていないらしい。結局、この日のビザ取得は諦めることになった。翌日がビザ取得の最後のチャンス。

ホテルに戻っていったん休憩し、6時半に外出。前日と同じく Cegem というトルコ料理の店で夕食にした。ボリュームのあるケバブとスープ、アイランで550ルーブル。味は十分うまい。

夕食後、黒海沿岸を散策。暗くなっても危険な雰囲気はなく、治安は良好。

アブハジア最後の夜なので、この店に入ってアブハジアビールを飲んでみた。普段は酒をほとんど飲まない人間だが、旅行中はときどき地元のビールを飲んだりする。値段は100ルーブル。

ビール1杯を飲んでから店を出て、少しだけ散策。酒飲みではないので、何杯も飲んだりはしない。

夜8時過ぎにホテルに戻った。テレビでも見て休もうかと思ったところ、何か気になる。しばらく考えた結果、先ほどビールを飲んだ店にバッグを忘れてきたことに気付いた。旅行先ではこういうことがないように気を付けているつもりだが、酒を飲んだせいか、うっかりしてしまっていた。

すぐに外出して先ほどの店まで戻ると、幸いまだ開いていた。店に入ると、店員がすぐにバッグを渡してくれて、ほっと一安心。店員がバッグを見つけて保管してくれていたらしい。特に貴重品は入れていなかったものの、このときの店員の対応には感謝している。民度が低い国なら「知らない」と言われるだろうから、アブハジアはそういう国ではないことが確認でき、好感度アップ。

こういう出来事を経て、8時半に再びホテルに戻った。この日は0時半に就寝。