ジョージア旅行記(トビリシ~カズベギ)

今回のジョージア旅行前半は西部に滞在してアブハジアに入ってみたが、後半ではロシアとの国境に使い北部へ行くことにしていた。西部とは景色が一変し、雪に覆われた寒冷な地域を見ることができた。

トビリシからロシア国境へ向かう道路は「ジョージア軍用道路」と呼ばれていて、かなりの絶景を眺めることができるハイウェイとしても有名になっている。この景色を見るのも楽しみ。


朝7時に起床。外を眺めると、まだロープウェイは動いていないのでゴンドラは止まっている。ちょっと面白い風景。

グレードの高いホテルに泊まっているだけあって朝食も質が高く、おいしい料理を楽しめた。この日に滞在する予定のカズベギの町ではホテルは予約していないので、おそらく安宿に泊まることになるはず。昼食と夕食もどうなるかわからないので、ここでたくさん食べておいた。

9時にチェックアウト。雨が降りそうな天候の中、歩いて地下鉄のアヴラバリ駅へ移動。カズベギからトビリシへ戻ってきたときはそのまま空港へ向かうことになるので、旧市街の風景はこれで見納め。

アヴラバリ駅からディドゥベ駅へ移動。ディドゥベ駅の近くに、ジョージア各地への長距離バスが発着するディドゥベ・バスターミナルがある。5日前にトビリシからクタイシへ移動したとき以来の再訪なので、ちょっと懐かしい。

最初はマルシュルートカでカズベギへ向かうつもりだったが、ターミナルに着くとすぐにタクシー運転手が寄ってきた。人数が集まれば乗り合いタクシーという手段もあり、途中の観光スポットにも寄ってくれることになる。考えてみればマルシュルートカよりも魅力的に思えたので、タクシーに乗り込んで他の乗客が集まるのを待つことにした。

さすがにジョージアでも有名な観光地だけあって、観光客が何人も集まってきた。20分ほどで5人が集まり(車はセダンではなくミニバンだったので)、カズベギへ出発。私以外の4人の乗客のうち、2人は若い日本人女性だった。

乗り合いタクシーの料金は20ラリ。帰りにカズベギからトビリシまでマルシュルートカで移動したときは10ラリだったので2倍だが、しかし以下で紹介する観光スポットに立ち寄ってくれることを考えれば、片道は乗り合いタクシーを利用するのがおすすめ。

ジンヴァリ貯水湖展望台

最初に立ち寄ったのはジンヴァリ貯水湖の展望台。ダム湖を見渡せる展望所で、景色はきれい。

ダム湖の全景。天候が小雨でなければ、さらにきれいな景色が眺められるはず。しかし、これはこれで幻想的な雰囲気。

土産物店のまわりには、なぜか犬が多かった。

犬に別れの挨拶をして、北へ向かって出発。

アナヌリ教会

次に立ち寄ったのは、ジンヴァリ貯水湖のほとりに建つアナヌリ教会。ここは有名観光スポットなので、30分ほど滞在することになった。トビリシを出発してからここまでの所要時間はちょうど1時間。

ここは17世紀に建てられた要塞教会で、城壁の中に2つの教会がある。このため、外から見ると教会というより完全に中世の城という感じ。

城塞の中に入り、しばらく歩き回った。2つの教会の屋根は、形は同じだが趣が違っている。

城壁の一画にある「シェウポヴァリ塔」という見張り塔は、上に上がることができる。狭い階段を注意しながら上がってみた。狭い開口部から入ってくる光がきれい。

見張り塔の上は、こんな感じ。元々は要塞として建てられているので、下向きに開けられた穴は敵を攻撃するためのものだろうか。

塔の上からの眺め。手前にあるのが17世紀初頭に建てられたイエス・キリストに捧げる教会で、湖側が1689年に建造された聖母マリアに捧げる教会になる。ネット上では湖をバックにしたきれいな風景を見ることができるが、このときはダム湖が渇水状態だったのか、湖というより川という感じだった。

晴天で湖が水をたたえていれば、かなりの絶景だったはず。しかし、これはこれで珍しい眺めだと思う。なんだかデルタ地帯みたい。

塔の上から下を見下ろしてみた。

しばらく景色を眺めた後、注意しながら階段を下りる。まるで RPG のダンジョンみたい。

中庭を散策。傘をさしている人がいるが、少し雨が降り出している。

城壁の上も、一部は歩くことができる。城壁の隅にあった丸い塔は、中を覗き込むことができた。大きな井戸みたいな感じ。

外を散策した後、教会の中にも入ってみた。なお、2つある教会のうち、入れるのは新しいほうのみ。

派手さはないが、祭壇の後ろにある大きなイコンが見事(アッシリアの十三士が描かれているそう)。柱にはフレスコ画もあった。

天候が小雨なので、ネット上で見られるようなきれいな景色とは異なっていたが、しかし「要塞教会」という独特の雰囲気が面白かった。トビリシからカズベギへ向かう際には、ぜひ立ち寄ってほしい観光スポット。

ジョージア軍用道路

アナヌリ教会を出発して、さらにジョージア軍用道路を北上する。小雨ということもあって、次第に寒そうな景色に変わってきた。

寒いからなのか、トイレのピクトグラムも思い切り我慢してる。

遠くに見える山が雪に覆われてきた。

登り勾配が続くので、トラックなどはスピードが出ずところどころに渋滞が発生していた。

そして、この覆道を抜けたところから、景色が大きく変わることになった。

ここからは、周囲は完全に雪山。今回の旅行前半でジョージア西部に滞在していたときは、まさか旅行後半でこういう景色を見ることになるとは思っていなかった。

雪景色の中を走り、遠くに建造物が見えてきた。ここも観光スポットなので、少し停車してもらえることになった。

車を下り、崖の上にあるモニュメントを眺めてみた。景色から想像できる通り、かなり寒い。

歩いてモニュメントへ。これは「ロシア・ジョージア友好記念碑」で、1983年にロシアがジョージアとの友好200年の記念として建てたモニュメント。アブハジアと南オセチアをめぐって紛争を起こし、その結果ロシアに完敗したジョージアだが、かつてはこういう時代もあったということ。

モニュメントに描かれている絵は、かなりカラフルできれい。様々な角度から眺めてみたが、聞くところによると女性がロシアで男の子がジョージアを表しており、つまり「ロシアに守られるジョージア」という意味らしい。ジョージアの人たちにとっては、ちょっと微妙。

崖の上に建っているので、ここからの眺めは雄大。

それにしても、どの方向を眺めても寒そう。

10分ほど滞在してから出発。同じ車内の日本人女性2人は、寒いからなのかモニュメントまでは歩いていなかった。もったいない気もするが、まあ人それぞれ。

ここから先は、さらに雪が深くなる。ときどき、車の前方の眺めがホワイトアウトしてしまうほど。

ついに雪の壁が出現。これを見たときは「立山黒部アルペンルートかよ!」なんてことを思ってしまった。

もっとも、私は立山黒部アルペンルートの「雪の大谷」は見たことがないので、適当なことを言っているだけ。本物の雪の大谷はもっとすごいはずなので、いつか見てみたい。

ジョージア軍用道路の最高地点ジュヴァリ峠(標高2,379m)を越えると、さすがに雪の壁はなくなってきた。それでも周囲は一面の雪景色。

久しぶりに人家が見えてきた。そろそろカズベギの町らしい。

トビリシを出発してからちょうど4時間、午後2時過ぎにカズベギに到着した。ロシアとの国境まで8キロという辺境の町で、長い移動だったが途中で観光スポットにも立ち寄れたし、何より景色がきれいなので疲れなかった。移動にマルシュルートカではなく乗り合いタクシーを選んでおいて、本当によかったと思っている。

カズベギ(ステパンツミンダ)

到着したのは町の中心にある広場。日本人女性2人はカズベギには宿泊せず日帰りだそうで、丘の上にあるツミンダ・サメバ教会へすぐにタクシーで向かうということなので、ここで別れた。

この広場に面してマルシュルートカ乗り場があったので、翌日の出発時刻を確認しておいた。午前中は7時から12時まで1時間おきの出発で、飛行機の時刻を考えると9時の便に乗るのがいいはず。

今回の旅行では、このカズベギだけが事前に宿泊先を決めていない。なのでホテルかゲストハウスを探さないといけないが、その前に遠くに見えるツミンダ・サメバ教会(聖三位一体教会)を眺めてみた。

実をいうと、カズベギではこの教会までのトレッキングをやってみたいと考えていた。しかし、こちらは登山のプロでもないし、この雪の状況ではほとんど無理。まさか5月にこんな雪が積もっているとは思わず、これは考えが甘かった。

まずは宿泊先探しだが、当初は町の中心にゲストハウスがあるのだろうと考えていた。ところが、周辺を少し歩いてみてもゲストハウスの表示は見つからない。代わりに WiFi があるレストランがあったので、情報収集と昼食を兼ねて入ってみた。

レストランの名前は「ステパンツミンダ(Stepantsminda)」。カズベギ(Kazbegi)とはソ連時代からの名前で、2006年にステパンツミンダというソ連以前の名前に戻されたということだが、今でもこの町は一般的にはカズベギと呼ばれている。

スープハルチョー、パン、コーヒーの昼食(18ラリ)の途中、ネット検索でカズベギの地図を見たところ、ゲストハウスは広場の東側の斜面に並んでいることがわかった。WiFi って本当に便利。

レストランを出て、ゲストハウス探しに出発。犬はいいとして、牛まで普通に歩いている。

そして、牛以上に驚いたのがこちら。馬が街中を普通に歩いている景色なんて、他では見たことがない。

蹴られないように注意しながら馬の横を通り抜け、町の東側を眺めてみた。この先にゲストハウスが並んでいるはず。

この通りを歩いていくと、たしかにゲストハウスが何軒もあった。ところが、まだシーズンオフなのか開いていないところも多く、またオープンしていても満室続き。これは困ったことになった。

下の写真は、泊まるところを探して歩き回っているときに眺めた風景。天候が快晴なら、さぞ絶景のはず。

ゲストハウスというよりも個人が部屋を貸しているんじゃないかと思えるような「ELIA」と表示された家に入ってみたところ、年配の女性(おそらく、この人が ELIA さん)が対応してくれて、ここでようやく空き室を見つけることができた。ほっと一安心。

こちらが宿泊した部屋で、料金は70ラリ。部屋は十分に快適。

部屋からの眺め。広場から坂道を上がってきたので、景色はきれい。

遠くの山頂にツミンダ・サメバ教会が見える。この時期にトレッキングなんて、無謀な考えだった。次は夏にカズベギへ来たい。

部屋で少し休んでから外出。空き地を牛が普通に歩いている。

ゆっくりと坂道を下りて、広場まで戻ってきた。

広場に建っているのが、町の名前の由来になったジョージアの作家アレクサンドル・カズベギ像。

本来なら広範囲に歩き回りたいところだが、何しろ寒い。広場の近くにあった教会付近だけを散策してみた。

名前もわからない教会の建物と鐘楼。

教会の近くにあったスーパーマーケットで翌日の朝食としてパンと飲み物を買い、続いて Stancia というホテルのレストランで夕食にした。この写真を見て「広場に快適そうなホテルがあるじゃないか」と思うかもしれないが、今回はゲストハウスを見てみたかったのでホテルはパスした。もちろん、事前に予約しておいてホテルに泊まるという選択もあり。

レストランからの景色。天候が良ければ、ツミンダ・サメバ教会の背後にカズベク山(標高5,047m)が眺められたはず。

注文したのは赤ワイン、スープハルチョー、ポークバーベキューで、これに食後のカプチーノを合わせて46.6ラリ。味はもちろんうまい。

特にポークバーベキューは絶品だったので、カズベギではこのレストランはおすすめ。

夕食後、少しだけ散策。

ゲストハウスの前まで戻ると、先ほどは牛がいたがこのときは犬がいた。

午後8時前にゲストハウスに戻った。翌日は早朝にツミンダ・サメバ教会へ行ってみて、それからトビリシへ戻ることになる。この日は11時に就寝。