マレーシア&台湾旅行記(キナバル登山 / 2日目)

キナバル登山2日目、そして山頂にアタックする日になった。最高峰ロウズピークに立つことが今回の旅行の目的なので、なんとしてもアタックを成功させたい。


深夜2時に起床。食堂へ行くとコーヒーと軽食が用意してあり、ここでガイドさんと合流した。2時45分に外に出て、大勢の登山客と一緒に山頂を目指して出発。

緯度としては赤道直下だが、何しろ標高3,000mを越える地点なのでかなり寒い。ヒートテック、ウィンドブレーカー、ニット帽などの防寒対策を十分に行い、ヘッドライトの明かりを頼りに山頂へ向かう。

出発してしばらくは、自分の前方と後方にヘッドライトの列が続く。ただし、歩く速度がそれぞれ違うため、登るにしたがって次第に明かりがまばらに見えるようになってくる。

登っている途中、後ろを振り返って山小屋の方向を眺めてみた。遠くに明かりが見え、そして月がきれい。

山小屋から、つづら折れの登山道に沿ってヘッドライトが川のように続いているのが見える。

前日の疲労はもちろん残っていたが、途中の Sayat-Sayat Hut というチェックポイントまではそれほど疲れずにたどり着くことができた。この時点で時刻は4時15分で、出発から1時間半が経ったことになる。山小屋からの距離は1.5キロほど。

ここで少し休憩し、山頂へ向かって出発。そして、ここからの登りが本当に大変だった。真っ暗な中、標高4,000m近い高所にある岩場の斜面をロープに沿ってひたすら歩く。

下の写真のようにずっと真っ暗なので、先が見通せない。この斜面がいったいどこまで続くのかがわからないため、精神的にもつらい。次第に一歩が短くなってくるのが自分でもわかる。

このあたりまでくると、歩く速度が違うため登山客たちの位置もバラバラ。自分とガイドさんのヘッドライト以外は完全に闇。

永遠に続くかと思われた岩場の斜面を歩き、EMERGENCY ASSEMBLY POINT という案内板がある場所までたどり着いた。

「KM 8」と書かれているが、これは登山口からの距離が8キロという意味。登山口からロウズピークまで8.7キロなので、残りの距離は700メートル。

ここからも、岩場の斜面をひたすら歩く。次第に空が白んできて、山の稜線が見えてきた。

次第に周囲の状況が見えてくると、実は自分が絶景の中を歩いていたことがわかった。見渡す限りの岩場。

下の写真の尖った山がロウズピークかと思ったが、他の登山客はここへは向かっていない。後で調べたら、この山はセントジョーンズピーク(標高4,091m)だった。

ロウズピークは、このセントジョーンズピークの近くにあった。疲労もすでにピークだが、最後の斜面を登り、出発からちょうど3時間、午前5時45分に登頂成功。

ここがロウズピークの頂上。標高4,095m地点になる。こんなところまで登ってきたことに自分でも感動した。なんといっても、ここは標高4,000m越えの地点。

相当に疲れたが、ここに立つと「来てよかった!」と心から思えた。これはもう、涙が出るほどの感動。

旅行前は本当に登れるか不安もあったものの、やってみると無事に成功した。何事も、まず行動を起こしてみたら何とかなるものです。

しばらくは感傷に浸りたいところだが、頂上はそんなに広くない。次々と登山客が登って来るので、写真を撮って少し景色を眺めてからピークの下まで下りることにした。登頂を終えた登山客たちが周辺を歩いていて、ここからの眺めも絶景。

日の出は午前6時ちょうど。ぎりぎりで間に合ってよかった。

それにしても、ロウズピーク付近がこれほどの絶景だとは思わなかった。ここへ来ないと決して見ることができない、本当に素晴らしい眺め。

振り返って、山頂の方を眺めてみた。ぎりぎりで日の出に間に合った人たちが登っている。

少し座って休憩。空が明るくなってきた。

それにしても、すごい眺め。写真では十分に伝わらないと思うが、こんな雄大な景色は滅多に見られない。

そして、午前6時に雲の間から太陽が現れた。

ロウズピーク付近から眺めた日の出。自分にとって、今まででもっとも神々しい日の出になった。

私はまだ富士山には登ったことがない。いつか登ってみたいと思っているので、山頂で日の出を見ることができたら、そのときはキナバル山の日の出を思い出すことになるはず。

では、名残惜しいがそろそろ下山開始。ロウズピークが少しずつ遠ざかっていく。

セントジョーンズピークを背景に記念撮影。

しかしセントジョーンズピークの眺めも本当にすごい。周囲は完全に岩場に覆われていて、本当に絶景。

振り返ると、ロウズピークがさらに遠くへ。

ここからは、周囲の景色を楽しみながらガイドさんと一緒に下山。下り勾配というのもあるが、景色がすごすぎて疲れを感じている暇がない。それくらいの絶景。

地球上にこんなすごい場所があるんですねえ。

下りていく途中、ロウズピークを横から眺められる場所を通った。

あの山頂がロウズピーク。先ほどは、あの場所に立って記念写真を撮っていた。

さらに下山。周囲はすっかり明るくなった。

振り返ってロウズピークを眺めてみた。今回は最後の眺めになるが、いつかまた登ってみたい(と、このときは無邪気に思っていた)。

登っているときは真っ暗だったので、こんな絶景の中を歩いているとはまったく気付かなかった。ライトに照らされたロープ付近しか見えていなかったが、まさかこんな広大な空間が広がっていたとは。

8キロ地点の案内板まで戻ってきた。

さらに岩場を歩いて下山。

後ろを見ると、歩いている登山客があんなに小さく見える。

やがて、山小屋付近が眺められるようになってきた。

午前7時、チェックポイントに到着。

真っ暗なときに見たチェックポイントとは、ちょっと雰囲気が違う。こんな形の建物だったのか。

チェックポイントを通過し、さらに下山。

このあたりで振り返ったときの眺め。いつかまた、ここを登ってみたいが、その機会はあるだろうか。

山頂付近だけでなく、麓の方向の眺めも本当にすごい。まさに雄大そのもの。

ただ、このあたりで「下り勾配は予想以上に疲れる」ということがわかってきた。地面が岩場というのもあるが、足への衝撃がかなり大きい。登山といえば初心者は「登りの方がきつい」と考えるはずで、私もそう思っていた。しかし、この時点でこれほど疲れるということは、山小屋から先はさらに大変なことになりそう。

チェックポイントから1時間、朝8時に山小屋に帰り着いた。

すぐに朝食。これから下山するので、ここではたくさん食べておいた。食料品や燃料をここまで運んでくれている人足の人たちに感謝。

朝食後、テラスから外を眺めてみた。

ガイドさんによると、出発は9時。部屋に戻って休憩し、下山の準備を行った。


9時に山小屋を出発。「PANALBAN」という碑がある広場で、山小屋エリアを眺めてみた。これほどの高地だというのに、滞在は快適だった。人足やスタッフの人たちに感謝。(シャワーの水が死ぬほど冷たかったが、そこまで求めるのは贅沢)

では、下山開始。前日の登山風景と同様、下山中の写真も載せたいところだが、実はここから登山口までの写真はほとんど撮っていない。その理由は、下山がとにかく大変で写真を撮るような余裕がなかったから。

正直言って、下山を甘く見ていた。下り勾配が続くから楽だろうと考えていたが、とんでもない。プロの登山家なら楽な下り方を知っているのかもしれないが、何しろ素人同然なのでとにかく足への衝撃が大きい。

特にキナバル山は登山道が坂道ではなく石段になっているところが多く、ここをゆっくり下りようとすると足にかなり力を入れないといけない。といって、力を抜いて下りようとすると着地の際に足に大きな衝撃が加わる。

特に膝への衝撃が大きくて、下山中に何度も膝から崩れ落ちそうになった。というわけで、自分への教訓は以下の通り。

登山は登るときよりも下りるときの方がずっと大変

いやー、まさか下山がこれほど大変だったとは。それに、ここで告白しておくと実はトレッキングポール(ストックのこと)を持っていなかった。必要ないだろうと思って購入していなかったのだが、甘すぎた。登るときは使わなくても、下りるときは必須。

途中からガイドさんが自分のトレッキングポールを貸してくれたが、それでも周囲を眺める余裕もないほど大変だった。シェルターでの休憩中も疲労困憊で、下山中に撮った写真は唯一これくらい。

登山道から眺めた景色については、キナバル登山1日目のページにたくさん載せているので、そちらを参照してほしい。

登山道には0.5キロおきに登山口からの距離を記した案内板が設置されているが、この数字が減っていくのが遅すぎて、なんとももどかしかった。「まだゼロにならないのか!」と思いながら歩き続けたが、まさに地獄。登山は登頂した時点で目的を達したと思いがちだが、実はまだ行程の半分ということを嫌というほど痛感した。

山小屋を出発してから4時間、午後1時にようやく登山口に到着した。下山が本当に地獄だったので、この建物が天国への門に見えた。

これからキナバル山へ登ることを考えている人は、下山の方が大変ということを知っておいてほしい。私のように失敗せず、トレッキングポールもしっかりと準備しておくことをおすすめする。

登山口からキナバル公園の事務所までは車で移動。そして、この車に一緒に乗ったのが山小屋で同室だった若いフランス人女性だった。私よりも少し先に下山していたようで、奇遇に驚いた。女性一人で登山旅行というのもすごいが。

事務所へ戻ると、ガイドさんが登頂証明書を持ってきてくれた。

3つ折り形式になっていて、開くと登頂証明書が収められている。自分の名前入りで、実際に登頂した人しかもらうことはできない。登頂に成功したかどうか、ガイドさんから連絡を受けてから作成されるためで、これはすごい記念品になる。

この登頂証明書を見たとき、やはり登ってよかったと思えた。宝物としてずっと持っておきます。

ガイドさんとは、ここでお別れ。50リンギのチップを渡し「いつかまた来たい」と伝えてから、握手して別れた。地獄のような思いをしたのにまた行きたいのかと言われそうだが、大変だった記憶は次第に薄れていくものだし、本当にまたいつかここへ来そうな気がする。

その後、公園内のレストランで昼食。この費用もツアー料金に含まれているので、無料で食べることができた。

それにしても、麓はさすがに暑い。山頂はかなり寒かったので、2日間で夏~秋~冬~春~夏と体験してきたようなもの。短期間で1年歳を取った気分。


午後2時、バスでキナバルパークを出発し、コタキナバルへ。2日ぶりにホテルに戻り、部屋でしばらく休憩した。

午後6時に外出したが、やはり足が痛くて歩くのがきつい。遠くまで歩く気力がなくなったので、近くのKKプラザのフードコートで夕食にした。ナシゴレンとジュースで12リンギ。

夕食後にスーパーマーケットで少し買い物し、それ以上歩くのはやめてホテルへ戻った。翌日はサピ島でのダイビングの予定で、それに備えて夜10時に就寝。