バングラデシュ旅行記(クルナ)

この日の夜、今回の旅行最大の目的となるロケットスティーマーに乗り込むことになる。それまでクルナ市内をあちこち回って時間をつぶすことにしていたが、バングラデシュ第3の都市といってもそれほど見所があるわけではない。駅や船着場などの様子を、このページで紹介することにする。


朝10時にホテルをチェックアウトし、夜まで荷物を預かってもらうことにして、外へ出た。今回泊まった「ホテルローズガーデン」は、宿泊客はバングラデシュ人とインド人ばかりというローカルなホテルだったが、市街中心部にあるため散策には非常に便利だった。設備も悪くはないし、エアコンなしの部屋で一泊400円ほどなのだから、クルナに滞在する際にはお勧めのホテルといえる。

ホテルの前からリキシャに乗り、まずは最初の目的地のニューマーケットへ向かった。ガイドブックに記載がある数少ないスポットで、どういう雰囲気なのか興味があったので行ってみることにしていた。

ホテル前からは意外と距離があり、15分ほどで到着した。2階建ての大きな建物で、早速入ろうとしたのだが、なんと閉まっていた。近くにいた人に聞いてみたところ、この日はマーケット全体がクローズだという。ちょっと運が悪かった。

このマーケットの近くに “SAFE ‘N’ SAVE” という名前のスーパーマーケットがあったので、入ってみた。1階が食料品、2階が衣料品になっていて、品揃えはわりと豊富。2階にはカフェもあり、せっかくなので前日とは趣を変えてミートパイとカフェオレの朝食にした。

1階で水とジュースを買い、さらに周囲を歩いてみた。物乞いの老婆が多く徘徊していて、何人かに1~2タカ硬貨を渡しながら歩いたところ、ニューマーケットの裏手に不具者の物乞いが横たわっているエリアがあった。みんな足がなかったりして歩けない人たちで、ござのようなものを敷いてぐったりと寝ている。さすがに、ここの写真を撮ることはできなかった。

大通りの向かい側に大きな銀行があったので、中に入って両替ができるかどうか聞いてみたところ、ここでは両替業務は行っていないということだった。両替できる銀行の場所を教えてもらったので、そちらへ移動することにした。

ニューマーケット前からリキシャに乗り、教えられた方向へ移動。このクルナという町はエビの養殖が盛んだそうで、街中でエビのオブジェを見ることができた。リキシャで移動中に見かけただけなので、近くでよく見ることができなかったのは残念だが、右下の写真がエビのオブジェ。

銀行に到着し、窓口で両替を頼んだところ、なぜか事務所に通された。何人もの職員が忙しそうに働いている中、映画やドラマでよく見るようなガラス戸で仕切られた一画(部長室?)に入り、パスポートと米ドル札を何度も確認した後でようやくタカ札に両替してくれたが、なぜこのような応対を受けたのか、今でもよくわからない。対応してくれた人もなんだか偉そうなクラスの人だったし、予想以上に作業が長引くので途中で紅茶を出してくれたり、まるで VIP のような気分になった。まさかとは思うが、工作員か何かと疑われたのだろうか。

ガイドブック(旅行人ウルトラガイド)には、クルナ市内にインターネット店があるという記載がある。そこで、バングラデシュの街中でもメールを見ることができるかどうか興味があったので、行ってみることにした。銀行前からリキシャに乗り、5分ほどで到着。

それにしても、リキシャがあまりにも便利なので、もはや移動手段として頼りっぱなしになっている。前日の夜にルプシャ・ガットで会ったリキシャ引き以外、高い値段を吹っかけてくるリキシャ引きにはまったく出会わず、かなり安心して利用できる。

インターネットに関しては、まったく問題なく日本語が表示できた。バングラデシュの地方都市でもメールがチェックできたり、日本のニュースを見たりできるのだから、便利な世の中になったものだ。なお、ここの料金はよく憶えていないが、1時間で数十円というところだったと思う。


続いて、クルナ駅へ行ってみた。今回はここから列車に乗ることはないが、鉄道自体は好きなので、バングラデシュ滞在中に一度は列車に乗ってみたいと思っている。(鉄道については、旅行の後半、クミッラ~ダッカ間に乗ることができた)

閑散としているかと思っていたが、意外とプラットホームを歩いている人は多い。

プラットホーム間を移動するための陸橋があり、ここからは駅全体を眺めることができる。バングラデシュ西部の鉄道は広軌なので、見てわかる通り線路幅が広い(バングラデシュ東部は狭軌)。そして、線路が日本のように精密ではなく波打っていることもはっきりわかる。これでは列車内は振動が激しそうだ。

駅付近を散策していると、列車がやってきた。列車のスケジュールなどはもちろん知らなかったので、ここで列車の到着シーンを見られたのは幸運だった。

クルナはジョソール方面からの路線の終点なので、この列車もクルナ止まりである。乗客が降りた後、窓から内部を覗き込んでみたが、ローカル列車らしく座席などはかなり汚いものだった。

列車の先頭へ行ってみると、ちょうど機関車の取り外し作業が行われていた。機関車はいったん先方へ移動したあと、別の線路を戻ってきたので、その場面を写真に撮ってみた。かなり無骨な感じの機関車だと思う。

やはりここで外国人は珍しいので、作業を行っていた駅員にいろいろと話しかけられた。「列車に乗るわけではないが、鉄道が好きなので、駅と列車を見に来た」と話すと、駅員は少し嬉しそうにしていた。

この駅にはほとんど時間つぶしのために訪れたようなものだが、偶然にも列車を見ることができ、来てみてよかったと思う。この町を再び訪れることがあれば、ここから列車に乗ってみたい。


クルナ駅の近くに船着場があり、ロケットスティーマーはここから出航する。もちろん、夜にならないとロケットスティーマーはやってこないが、明るいうちに周囲の様子を見ておきたかったので、駅から歩いてみた。

左下の写真が B.I.W.T.C. オフィスで、ロケットスティーマーのチケットはここで購入することになる。今の時間は、建物の中には誰もいない。

船の利用者のための小汚い待合室があるが、この時間は閑散としている。歩いていると、少年3人が寄ってきて、いろいろと話しかけてきた。無論、私はベンガル語を話せるわけではないのでほとんど意思の疎通はできないが、それでも彼らは楽しそうにしていた。写真を撮っても特に金銭を要求してくるわけではなかったので、単に外国人と話してみたかっただけだろう。考えてみれば、クルナでは外国人をまったく見かけていない。

しばらく周囲を散策したあと、クルナの街中に戻ることにした。


泊まっていたホテルの近くまでリキシャで移動し、街中を散策してみた。その途中、ヒンドゥ教の寺院があったので、入ってみた。バングラデシュは約9割がイスラム教徒だが、ヒンドゥ教徒も1割弱を占めている。やはりイスラム教のモスクと比べてカラフルなもの。

4階建ての商業ビル(小さな電気店がたくさん入っていた)から見た、クルナの大通りの様子。通りがリキシャで埋め尽くされているのがわかると思う。今回のバングラデシュ旅行では、クルナ、首都ダッカ、東部のクミッラといった町に滞在したが、どの町もリキシャであふれていた。

これだけリキシャであふれていると客の奪い合いになるのではないかと思うかもしれないが、実はそうでもない。地元の人たちも頻繁に利用しているため、これだけ大量のリキシャにもちゃんと需要があるのである。そして、これがバングラデシュの治安がかなり良好な理由とされている。リキシャを1日こいでいれば何とか生活できるため、町に集まってきた失業者たちが犯罪に走る必要がない。「みんな貧しいものの、うまく金が回っている」という印象がある。

もちろん、治安がいいといっても最低限の注意は必要だが、今回の旅行中は首都ダッカでさえ夜に出歩いても特に危険を感じることはなかった。

街中にスイーツ店があり、パエシという菓子が並んでいたので入ってみた。パエシというのは米を牛乳と砂糖、さらに香辛料と一緒に煮たものだそうで、見た目はヨーグルトのような感じ。素焼きの小さな容器に入れられている。

予想ほど甘くはなく、なかなか上品な感じ。バングラデシュには、このパエシの他に「ミスティ」という異常なくらいに甘い菓子があるが、これは旅行後半にクミッラとショナルガオで食べることができた。


さらに散策を続け、薄暗くなってきたころにホテルに戻り、預けていた荷物を受け取った。ホテル前からリキシャに乗り、すっかり暗くなった午後7時に船着場に着いた。

B.I.W.T.C. オフィスに入ると、すでに男性旅行者が1人いてチケットの購入手続きを行っている。この町で見た初めての外国人で、話してみるとフィンランド人の旅行者だった。約3週間の一人旅の最中で、インドからバングラデシュに入ったという。30代の会社員だそうで、欧米では普通の会社員がこれだけ長く旅行できるというのがうらやましく感じられる。

フィンランド人男性に続いて、予約証と引き換えに2,380タカで1等船室のチケットを購入した。3,000円ちょっとで船内に2泊できるのだから、安いものだと思う。ちなみに、私の船室は11号室ということになった。

ロケットスティーマーは到着が遅れていて、乗船できるのは深夜になるという。まだまだ時間があるので、フィンランド人男性と一緒にオフィスの外に出て、並んでいる露店を回ってみた。なかなか話好きの男性で、私のつたない英語でも何とか会話が成り立っている。

小汚い露店の椅子に並んで座り、ミルクティを飲みながらいろいろと話してみた。毎年あちこちを旅行しているそうだが、日本には来たことがないという。私はすぐ近くのエストニアまでは行ったことがあるが、フィンランドには行ったことはない。私はいつか北欧でオーロラを見たいと思っていて、そのことを話すと「ラップランドでは見ることができると思うが、非常にまれな現象なので、実は自分もまだ見たことがない」ということだった。一生に一度は見たいものだが、はたして北欧を旅行するのはいつになるだろうか。

なお、このあたりの露店では「バング」も売られていた。手は出さなかったが、地元の人たちは普通に使用しているようだった。(バングが何かわからない人は、インターネットで調べてください)

B.I.W.T.C. オフィスに戻り、しばらくすると2組の外国人旅行者がやってきた。イギリス人男性とオーストラリア人女性のカップルと、オランダ人の若い夫婦で、ともに英語が堪能なバングラデシュ人ガイドと一緒だった。おかげで英語のレベルが急に高くなり、聞き役に回ることが多くなった。なお、オランダ人夫婦は数年前に長崎のハウステンボスへ来たことがあるそうで、私がハウステンボスから車で15分ほどのところに住んでいると話すと、奇遇に驚いていたようだった。

狭い待合室での会話はさらに続き、深夜0時近くになって、ようやくロケットスティーマーに乗船できるという案内があった。今回の旅行最大の目的なので、期待しながら船着場へ向かった。