朝8時に起床。この日の午前中の列車でダッカへ戻ることになる。1泊130円の安宿は、窓が割れているため蚊取り線香に火をつけたまま寝たら喉が少し痛くなったが、それ以外は特に問題はなかった。こういう場所ばかり泊まりながら旅を続けるのは少々きついが、話のネタに時々こういう安宿に泊まるのはいいものだと思う。
ホテルを出る前に、屋上に上がって景色を眺めてみた。昼間のクミッラは雑然とした町だが、朝の景色は意外ときれいに見える(と思ったのだが、写真を見るとやはり薄汚い)。
朝9時半にホテルを出て、歩いて駅へ向かう。駅前の安食堂でミルクティー(5タカ)を飲んでから駅構内に入ると、さすがにダッカ行きは乗客が多いらしく、ホームでは大勢の人たちが列車を待っている。しばらくは、駅を探索することにして、あちこちを歩き回ってみた。
下の写真は、陸橋から眺めた駅の様子。数日前にクルナ駅で見た景色と同様、線路が波打っているのがわかる。また、クルナとは違ってバングラデシュ東部は狭軌なので、線路幅が狭い。
私のように陸橋を使って反対側のホームへ渡る人はまれで、ほとんどの人は線路上を歩いて渡っている。線路のアップ。
予定では10時にクミッラを出発することになっているが、その時間になってもなかなか列車が来ない。特にアナウンスもないため状況がよくわからないが、列車が遅れるのはよくあることらしく、周囲の人たちはみんなのんびりと待っている。駅舎内に1等乗客用のちょっといい待合室があったので、ここに座って列車を待つことにした。もっとも、こういうところにもときどき物乞いがやってくる。
結局、定刻から35分遅れの10時35分、列車が到着した。意外と長い編成で、ベンガル語表記だけなので1等車両がどこなのかわからないが、停車時間がどのくらいかもわからないので早く乗らないといけない。とりあえず目の前の車両に乗り込んでみたところ、エアコンがないので別の車両ということはわかるが、どちらへ行けばいいのかわからない。動き出した列車の中で乗務員を探し、ようやく1等車両の方向がわかった。
それにしても、予想はしていたことだが列車内は振動が激しい。そのため通路をまっすぐに歩くことができず、それに3等車両などは通路も人であふれているため、なかなか列車内を移動できない。結局、1等車両への移動に15分かかり、座席に座ったときはほっとした。
座席から眺めた列車内の様子。1等車両はエアコンつきのリクライニングシートで、快適なものだった。
窓があまりきれいではないのが残念だが、移動中は下のようなベンガル・デルタの水田地帯を眺めることができる。
ダッカへの所要時間は約4時間。車窓風景はほとんど変わらないが、もともと鉄道は好きなほうなので退屈することはなかった。今回のバングラデシュ旅行ではこの区間しか鉄道に乗ることができなかったので、次回は夜行列車などにも乗ってみたい。
午後2時半、ダッカ中央駅に到着した。乗ってきた列車の先頭に移動し、機関車の写真を撮ってみた。
バングラデシュ東部は狭軌、西部は広軌なので、両方向の列車が発着するダッカ中央駅付近の線路はこの通り、レール幅の違う線路が混在している。三線軌条というのは鉄道ファンにとってはかなり興味を惹く光景だと思うが、世界でもこういう線路はなかなか見られないのではないだろうか。
改札を出て駅の外へ。ダッカ中央駅自体はわりと新しい建物のようで、かなりきれいなものだった。
前日の朝、長蛇の列ができていたチケット売り場を過ぎ、リキシャがたむろしている駅前に向かった。
この日の宿泊先については、ロケットスティーマーで一緒だったフィンランド人男性が「ロムナ」というホテルを勧めていたので、そこへ行ってみることにしていた。
そこで、駅前に大勢待機していたリキシャ引きに「ホテル・ロムナ」と伝えたのだが、誰も場所を知らない。ホテルがグリスタン・バスターミナルの近くにあることはわかっていたので、とりあえずそこへ向かってもらうことにした。料金は30タカ。
バスターミナルが近づいたところで、周囲を注意して眺めていると道路沿いに “HOTEL RAMNA” という表示が見つかった。予想よりもずっと大きなホテルで、下の写真はこの後出かけたときに少し離れた位置から撮ったもの。
フロントで部屋があるかどうか聞いたところ、問題なく泊まれるということだった。宿泊料金は400タカ。
部屋は簡素だが、テレビやシャワーもあるし、設備は問題ない。もっとも、部屋で休んでいるとベッド周辺でときどき黒くて小さな虫を見かけたので、クミッラで買った蚊取り線香をベッドの下に置き、しばらく燻してみることにした。
効果があったのかどうか、夜は虫は見なくなった。
出かける前に、ホテルの廊下から大通りを眺めてみた。近くにグリスタン・バスターミナルがあることもあり、バスやリキシャや CNG(天然ガスで走る三輪タクシー)で大混雑している。大きな交差点でさえ信号がないので、交通にまったく秩序がなく、クラクションが絶えない。
交差点付近の動画を下に載せておく。こういうところでは、クラクションなど気にせず強引に運転しないと交差点にも入れないような気がする。
カオス状態の交差点の光景をしばらく眺めた後、周辺の散策に出かけることにした。
ホテルの前にはたくさんの露店が出ていて、大勢の人が歩いている。ホテル周辺の通りは、どこもこのような感じだった。
グリスタン・バスターミナルの辺りまで歩いてみたが、とにかく人が多い。なお、翌日はここからショナルガオ行きのバスに乗ることにしている。
しばらく散策した後、リキシャに乗って移動することにした。目的地は「シシュパーク」という遊園地で、旅行前にダッカの観光スポットを調べているときに見つけ、面白そうだったので行ってみることにしていた。ダッカ郊外には「ファンタジーキングダム」や「ノンドンパーク」という大型のテーマパーク型遊園地があり、そちらにも興味はあったのだが、見るのに丸1日かかるため時間的に無理。このシシュパークは、規模は小さいものの庶民的な遊園地で、街中にある。
10分ほどで到着し、入口の辺りに並んでいる食堂でミルクティーを飲んで少し休憩してから中に入ることにした。なおシシュパークの入場料は8タカで、約10円という値段を見ても庶民的ということがわかる。
わりと広い園内を一回りしてみた。意外と遊具類はそろっていて、家族連れでかなりにぎわっている。もっとも、芝生の上にゴミが散乱しているところなどはバングラデシュらしい。
以下、主な風景を載せておく。
観覧車に乗って上からシシュパークを見渡してみたかったのだが、ちょうど点検中だったのか、この日は動いていなかった。残念。
B級スポット的な雰囲気を予想していたのだが、かなりしっかりとした遊園地だった。しかしながら、外国人が来るような場所ではないらしく、園内では外国人はまったく見なかった。庶民の娯楽を見ることもできるし、ダッカ滞在中に訪れてみて損はないと思う。
シシュパークを出て、続いてこの日最後の目的地へ行くことにした。シシュパークから2キロほど北にある「ボシュンドラシティ」という大型ショッピングモールである。2004年にできた南アジア最大級といわれる大型施設で、その巨大ぶりに興味があったので訪れてみた。
下の写真がボシュンドラシティの正面。今までバングラデシュ各地で見てきた景色とはあまりにも違う立派さに驚かされる。
さすがにここはダッカでも特別な施設らしく、入口には空港のような金属探知機があり、さらに手荷物検査もある。私は外国人ということもあって特に詳しくは調べられなかったが、地元の人たちは荷物の中まで調べられているようだった。
こちらがボシュンドラシティ内部の風景。入口で検査があるため、それなりにちゃんとした身なりの人しか歩いていない。外に出れば小汚い屋台が並んでいて物乞いもいるというのに、この中はまさに別世界となっている。
衣料品や装飾品や電気製品などの各テナントが並んでいて、東南アジアなどでよく見かけるショッピングモールと同じような感じだが、それにしても規模はすごい。最上階の8階には大きなフードコートやシネマコンプレックスもあり、失礼ながらここがバングラデシュとは思えないほど。
フードコートには南アジアや東南アジアなどの料理が並んでいて、ここで夕食にした。さすがにここは手ではなく、みんなフォークなどの食器を使って食事をしている。前日のクミッラでの夕食とはあまりに違う雰囲気に驚かされる。
食後も、しばらく館内を歩いてみた。オーダーメイドの民族衣装店や、後は携帯電話店やDVD店(ただし海賊版がほとんどという噂)などが多く、どの店も客でにぎわっている。夜8時半ごろ、ちょっと圧倒されながらボシュンドラシティを出た。
外へ出ると、いつものバングラデシュの風景に戻る。社会の格差をこれほど強く感じる場所も、そうはないだろう。
周辺の道路は、ボシュンドラシティから帰ろうとしている人が多いのか大混雑している。ここからホテルまでは結構な距離があるので、リキシャではなく三輪タクシーを使うことも考えたが、うまくリキシャが見つかった。しかしながら、乗り込んだものの大渋滞のためなかなか進まない。ボシュンドラシティ周辺を抜けたらスムーズに移動できるようになったものの、結局ホテルまでは1時間ほどかかった。
リキシャ料金は50タカとしていたが、かなり長い距離を走ってもらったことと、渋滞のため時間がかかったことから、少し多めに60タカを渡した。日本円にすれば10円ちょっと多く渡しただけなのだが、リキシャ引きはかなり嬉しそうにしていた。
部屋に戻り、しばらくテレビを見た後、シャワーを浴びて寝ることにした。バングラデシュ滞在も残り2日になり、翌日はダッカ近郊のショナルガオを見ることにしている。