アルメニア旅行記(オールドゴリス)

ゴリスの町外れにオールドゴリスという地域がある。かつてはこちらがゴリスの集落だったそうで、前日にフンゾレスク渓谷で見たような岩山が並んでいる。こちらもゴリスで見てみたかった場所なので、タテヴ修道院から戻った後、出かけてみた。


タテヴ修道院から戻った後、いったんホテルに入り、部屋でしばらく休憩してから外出した。雲は厚いが、雨が降っていないのは助かる。

オールドゴリスの詳しい場所は知らなかったが、とりあえずは町外れの方向へ行けばいいだろうと思い、のどかな街中を歩いていった。

「アルメニアのカッパドキア」と言われているだけあって特徴的な岩山が見えたり、道端を牛が当然のように歩いていたり、途中の風景もかなり楽しめた。

特に気に入ったのが、この家。岩山を掘って住居にしているような感じで、最上階の入口へ階段を使って上がるようになっているところが面白い。住んでいる人が羨ましいし、よくこんな家を考えたものだと思う。

こんな感じで周囲の景色を楽しみながら歩いているうちに人家もまばらになり、遠くにオールドゴリスらしい岩山が見えてきた。

近づいてみると、前日にフンゾレスク渓谷で見たような穴が開いた岩山があり、その麓は墓地になっていることがわかった。まずは墓地を見てみることにした。

墓地といっても古い時代のものではなく現代の墓地。麓の広い範囲に作られているので、散策しながら墓地を観察してきた。

この辺りの墓地の特徴は、墓石に故人の肖像が刻んであること。それぞれに特徴があって、部外者にもどういう人の墓石なのかがよくわかって面白い。日本でも変わった墓石を作る人はいると思うが、こういうものは見ない。

墓石として何十年もずっと残しておくというのに、ずいぶんとラフな格好をした人。亡くなった人の生前の性格までわかる。

こちらは、おそらく奥さんが先に亡くなった夫婦の墓。しかし、こういうものがあると残されたほうは自分が死ぬのを待たれている気持になるような気がする。自分が夫の立場だったら、ちょっと落ち着かない。

ちょっと悲しい気持になったのがこちら。おそらく、姉(1976年生まれ、2002年没)と弟(1982年生まれ、1988年没)の墓だと思う。いったい何が原因で亡くなったんだろう。

ちょっと気になったのが、柵に付いていたこのマーク。

「なぜ菊の紋章?」と思ったが、ここにあるのは花弁が17枚なので皇族の紋章とは違う。おそらく、偶然同じマークになったのだろう。

墓地の端まで来ると、点々と穴が開いた岩山がよく見えるようになった。あれが昔のゴリスの集落と言われても、いったいどうやって住んでいたのか想像できない。2002年のトルコ旅行ではカッパドキアへ行けなかったので、「アルメニアのカッパドキア」と言われても本物と比較はできないが、トルコのほうはかなり穴に奥行きがあると聞いている。こちらは大して奥行きもなさそうだし、本当にどうやって生活していたんだろう。

振り返ると盆地の底にゴリスの町が見えた。あちらのほうがよほど住みやすそうなのに、何でわざわざこんなところに集落を作っていたんだろう。昔の人の考えることはよくわからない。

岩山を眺めながら、しばらく周囲を散策。昔の集落はイメージできないものの、奇妙な形の岩山を見ていると面白い。

特に面白かったのが、こちらの円錐形の岩山。穴の中はいったいどうなっているんだろう。

1時間半ほどオールドゴリスを散策したが、まったく誰とも出会わないし、閑散とした雰囲気が楽しめた。肖像付きの墓石も、生前の様子を想像しながら歩くと面白い。現在のゴリスの町の眺めもきれいだし、ちょっと穴場的なスポットといえる。


先ほどはホテルから直接オールドゴリスへ向かったが、帰りはゴリスの中心部のほうへ歩いてみた。その途中、学校らしい建物と生活感のあるアパートが並んでいる地域があった。学校はかなり古びているが、廃墟ではないと思う。

しかしゴリスでは通りを牛が普通に歩いている。どちらを見ても背後に山があるし、「ここはネパールの山の中か?」と言いたくなるような風景。

ちょっと道を間違えて遠回りになったりしたが、ゴリスの中心部に戻ってきた。中心部といっても、小さな町なのでそんなに賑わってはいない。昨日に続いて遊園地へ来てみたが、やはり誰も歩いていないし遊具も動いていない。もしかしたら、ここがオープンするのは週末だけなのかもしれない。しかしディズニーの許可を取ってあるのかは不明。

この日は遊園地のすぐ横にある Deluxe Lounge Cafe で夕食にした。ゴリスで一番高そうなレストランだが、この町の人たちは外食する習慣がないのか、レストランがまったくといっていいほど見つからないので仕方がない。

注文したのは以下の料理。名前は覚えていないが、牛肉をチーズに絡めて焼いた料理、ピラフ、スープの3品。この牛肉料理はなかなか絶品だった。これにビールを合わせて値段は4,500ドラム。普段はほとんど酒は飲まないが、旅行中はときどきビールを飲んだりする。

夕食後、雨が降ってきたのでホテルへ戻った。翌日は、いよいよ未承認国のナゴルノ・カラバフ共和国に入ることになる。この日は夜11時に就寝。