宇佐のマチュピチュを見た翌日、別府を出発して大分県南部にある豊後大野市へ。ここに稲積水中鍾乳洞という観光地がある。もともと鍾乳洞を見るのは好きなので、この機会に行ってみた。
別府駅から国道10号線を南へ。鍾乳洞は一般的に山の中にあるので、ここも豊後大野市街を抜けて県道45号線に入ると周囲はのどかな山の風景になった。別府から約1時間半で到着。
「稲積水中鍾乳洞」という名前の観光地なので、普通は「水中にある鍾乳洞がメインなんだろうなあ」と思うはず。それも間違ってはいないが、実はこの観光スポットの面白さは鍾乳洞以外の部分にある。そのひとつが、駐車場に看板がある大観音。
いや、決して鍾乳洞に魅力がないと言っているわけではなく、楽しめる要素がそれ以外にも満載ということ。例えば、駐車場から見えるこちらの建物。
この時点で、ここがB級スポット的な面白さのある観光地だと想像できると思う。
水中鍾乳洞
では、まずはメインとなる鍾乳洞へ。料金は1,300円。
入口のところで「水中洞」と「新生洞」の2つの洞窟に分かれていて、まずは水中洞の方へ。
水中洞という名前だけあって、洞内はとにかく水が豊富。あちこちに池や地底湖があり、いまだ成長過程にある鍾乳洞だと思う。
底なしの渕といっても底はあると思うが、水深はどのくらいなんだろう。
以下、洞内の主な風景を載せておく。
底なしの渕に続いて、こちらは久遠の渕。
ずっと見ていると吸い込まれそう。
ここが観光洞の最奥部にあるのが「示現の淵」。先ほどまでの「渕」と違って、ここだけは「淵」が正式名称。「この先、開発予定!」と書かれているが、観光化されるのはいつだろう。
ここで引き返して入口の方へ戻り、続いて新生洞に入ってみた。山口県秋芳洞の黄金柱ほどの規模ではないが、ここにも黄金柱があった。
名残りの池。先ほどの水中洞と違って、こちらには深い地底湖はない。
新生洞の最奥部までくると、こういう電飾があった。ライトアップではなくまばらな電飾というのが、なんだかB級スポットみたいでいい感じ。
もちろん、電飾以外にライトアップもそれなりにあるが、なんだかチープ。
ここで折り返して、鍾乳洞の入口へ戻った。
鍾乳洞の風景については軽く触れただけだったが、もちろん日本の鍾乳洞としてはトップクラスに美しいといえる。特に地底湖の神秘的な雰囲気については、私が今までに見た鍾乳洞の中では岩手県の龍泉洞と双璧をなすと思う。洞窟めぐりが好きな人は、ぜひとも訪れてほしい。
ただ、これから紹介する「鍾乳洞以外の部分」が濃すぎて、もはやどちらがメインかわからなくなっているのも確か。こういう変わった鍾乳洞は、おそらく日本でここだけだと思う。
昭和タイムトリップ ロマン座
鍾乳洞から地上に戻ってきたが、しかしすぐに外に出られるわけではない。通路は「昭和の町通り」に続いている。駐車場から見えた「ロマン座」の中を通らないと、屋外に出ることはできない。
では、昭和の町通りの中へ。名前からわかる通り、昭和の雰囲気を再現した街並みが続いている。
私は1969年(昭和44年)生まれなんだが、さすがに子供のころにもこれほどレトロな街並みを見た記憶はない。おそらく、イメージとしては昭和30年代くらいの街並みだと思う。
街並みを過ぎると、レトロなグッズがいっぱい。
映画のポスターもたくさん貼ってあった。「男の牙」も気になるが、「性と人間」ってどういう内容なんだろう。「全国民必見性教育映画決定版」という宣伝文句がすごい。
内容は「恋愛編」「結婚編」「妊娠編」「分娩編」「育児編」の5つのパートに分かれていて、それぞれの説明がちょっと怖い。今でもフィルムが現存している映画なんでしょうかね。(ポスターのアップ)
白蛇堂
ロマン座の内容に圧倒されながら、ようやく外に出た。白蛇が飼育されている白蛇堂は「脱皮した白蛇の皮を入れたお守りが大人気」だそう。興味のある人は買ってみてほしい。
白蛇堂の近くには大きな龍がいた。白蛇が成長した姿なんだろうか。
白蛇堂の周辺に、いくつかのスポットが点在している。その中から、大きな弘法大師像と六地蔵。
こちらはぼけ封じ観音。私も最近、物の名前や人名がとっさに出てこないことがあるので、他人ごとではない世代になってきた。
十二支御守本尊霊場という建物があって、私は酉年なので守護神は不動明王。その前で丁寧にお参りしてきた。
ぼけ封じ観音と不動明王に続けて祈願したことで、効果があることを期待したい。
開世美術館
施設内に開世美術館という建物がある。軽い気持ちで入ったのだが、ここの内容が一番すごかった。
壁にたくさん展示されている絵画を何気なく見てみたところ、ダリやシャガールやピカソやルノアールなどのビッグネームばかり。思わず「えー???」と声が出てしまったが、まさか本物ではないよね。
例えば、これはダリの「マドンナ」という作品。
これらの作品はピカソの「射される雄牛」と「想像の中の肖像」。
こちらはルノアール「ピアノに寄る娘たち」とシャガール「ブーケと恋人たち」。
こういう画家に混じって、ジョン・レノンとアンディ・ウォーホールも。
外国だけでなく日本のビッグネームもあった。岡本太郎の「夜の会合」と山下清の「花火」。
ビッグネームと言っていいのかわからないが、工藤静香の「ピュアスノー」と「アンバーローズ」。
こちらは尾崎豊の4作品。尾崎豊って絵も描いていたんですね。知らなかった。
展示品のあまりのすごさに感嘆しながら美術館を出ようとすると、「只今、ご希望の美術品を安価にてお譲り致しております。ぜひ、この機会にお買い求めくださいませ」と書かれていた。
まあ、本物じゃないのは見ていてもわかったから(全部本物だったら、総額いくらになるんだろう)、有名画家の作品を安く買いたい人はぜひ来てみてほしい。これほどの絵画を一度にまとめて見られる場所は、世界にもそうはないはず。
アンティークショップ
こちらはアンティークショップ。「稲積水中鍾乳洞所蔵の品々を大放出」と書かれていて、目立っているのは映画のポスター。他にもレトロな玩具やキーホルダーもたくさんあったが、これらについては鑑定能力は持っていないからガラクタに見える。おそらく、中にはお宝もあるんだろう(多分)。
「新・同棲時代(愛のくらし)」ってどういう映画なんだろう。「女と味噌汁」ってずいぶんと庶民的なタイトルだな、と思って検索してみたら Wikipedia があったので内容はわかった。一話完結型のラブロマンスドラマだそうで、ちょっと見てみたい。
こちらはドランクドラゴン塚地主演の映画。ではなくて三波伸介主演の「ダメおやじ」。私は三波伸介が笑点の司会をやっていたのを知っている世代だが、今は三波伸介といっても知らない人が多いかもしれない。急逝しなければ今でも活躍していたはずなんだが。
先ほどのロマン座と並んで、ザ・昭和という雰囲気が楽しめた。昭和生まれとしては、つい長居してしまう居心地の良さ。
稲積昇龍大観音
鍾乳洞を出てから相当に遠回りしてしまったが、ようやく鍾乳洞と並んでここの2大看板といえる大観音像へやってきた。
公式サイトによれば、高さ22メートルで大分県で一番高い観音菩薩立像だそう。閉鎖された西海楽園(長崎県)の観音像と比較したら半分程度だが、しかし見上げると迫力がある。それに、足元に龍が絡みついているのも格好いい。
台座のまわりは、地蔵さんがくるりと囲んでいる。
青空をバックにした観音菩薩の笑み。
観音像のまわりは、七福神の像が囲んでいる。
中に入れるわけではないので見上げるだけだが、さすがの迫力だった。
蓮の池
最後は大観音像の横にある蓮の池を散策してみた。合鴨と鯉が泳いでいて、のどかな雰囲気。
と思いながら歩いていると、急に恐竜が現れるので気を抜けない。
蓮と何の関連があるのか、池ではサイが水浴びしていたりする。この脈絡のなさも魅力。
エサを期待しているのか、集まってきた合鴨を眺めながら池を一回りしてみた。
これで施設内を一通り見たので、アンティークショップなどをもう一度見てから土産としてトルマリン鉱石を買い、稲積水中鍾乳洞を後にすることにした。ここは大分のガイドブックにも載っているようなちゃんとした観光地ではあるものの、鍾乳洞と関係ないような施設も多く、B級スポット的な楽しさがあった。ここはおすすめ。
公式サイトはこちら。
上記公式サイトを見てみると、洞窟内でダイビングができるらしい。メキシコのセノーテに潜って以来、ケイブダイビングには非常に興味があるので、いつかやってみたい。
この日の後半に訪れた幸徳観音については、次のページで。
(2014.5.6)