萬佛寺と寶福山の訪問を終え、次の目的地は慈雲閣という寺院。インターネットで面白そうな寺院を探しているときに見つけ、今回の旅行で訪問してみることにした。
午後1時、沙田駅から地下鉄に乗り黄大仙駅へ。20分ほどで到着し、地上に出ると郊外のベッドタウンという感じの地区だった。ショッピングモールの中にあったスターバックスで昼食にして、続いてバス乗り場を探すことにした。
この地区では「嗇色園黄大仙祠」という寺院が有名らしく地元の人たちが大勢歩いていたが、今回は参拝しない。
バスについては、37A という路線に乗ればいいということは調べていた。黄大仙駅周辺にはバス乗り場が何ヶ所もあり、探し回ってようやく 37A という表示を発見。行き先に「慈雲山」と書かれているので、これで間違いない。
やってきたバスに乗り、山の上にあるらしい慈雲閣へ向かう。料金は3.8香港ドル。
バスはどんどん坂道を上がっていき、大きなマンションみたいな建物の前でしばらく停車。ここを出発すると、今度は坂道をどんどん下りていった。「なんか、元の方へ戻ってないか?」と思っていると、本当に出発地点に戻ってしまった。どうやら、先ほどの大きな建物のところで下りないといけなかったらしい。
それにしても、循環路線だったのはいいとして、マイクロバス程度の小型バスなのだから運転手には私の姿が見えていたはず。声を掛けてくれてもよかったんじゃないかと思う。
再びバスを待って慈雲閣へ向かったが、出発地点に戻ったからといって料金がゼロになるわけではないので、3.8香港ドルをまた払うことになった。まあ、これは仕方がない。
今度は坂道を上りきったところにある大きな建物(後で調べたら慈愛苑愛祥閣という名前だった)の前でバスを下り、数分歩いたところに目当ての慈雲閣を見つけることができた。
では、期待しながら寺院に入る。階段の横には、なぜかインド人みたいにターバンを巻いた石像が。何でいきなりシーク教徒なんだろう。
ここからは往路と復路が別の通路になっていて、往路は窓のない階段になっていた。
階段を上がると、最初に見えてくるのが(おそらく)位牌をたくさん並べた部屋。これだけたくさん並んでいると、ちょっと厳粛な気持ちにもなる。
こちらは骨壺だろうか。写真が貼ってあるものも多いので、どういう人が中に入っているのかがわかる。夫婦でひとつの壺に入っている人も多いようだった。
死んだ後に骨が混ざり合うなんて、仲のいい夫婦ですね。
位牌と骨壺の部屋を過ぎると、この寺院の中心らしい空間に出た。清虚天宮という文字が掲げられている場所に置かれているのが、おそらく本尊だと思う。
ここで参拝した後、寺院内をしばらく歩いてみた。わりと規模の大きい寺院で、山の斜面に作られているので通路のアップダウンが大きい。
手すりの支柱がどれも竹のデザインになっているところも凝っている。
そして、この寺院は人工の岩山や洞窟がふんだんに配置されているところが何より面白い。この景色が見たくて今回の目的地に慈雲閣を選んだので、この時点で満足。
「猛虎」「大鵬展翅」「山猫」などと書いてあるけど、これらって加工してあるわけではなくて自然石なんだろうか。どれもできすぎているような気がする。(自然の模様だったらすみません)
他にも洞窟があったりして、寺院内を歩いているだけで冒険しているみたいで面白い。洞窟から外を見ると、光の加減がガウディみたい。
屋上に上がると、東屋みたいな建物があった。
屋上からの眺め。林立する高層ビル群が、いかにも香港という感じ。
というわけで寺院内を歩いているだけでも楽しめるのだが、ここには目玉といえるエリアがひとつある。それが、こちらの階段。
階段横のガラスの向こうに何が作られているかというと、もちろん地獄風景。地獄めぐりは大好きなので、この階段は本当に楽しかった。
まずは地獄の役人。
続いて亡者たちの阿鼻叫喚シーン。いい感じの責め苦が続いていて、こちらはスパっと真っ二つにされる亡者。丸い中華まな板に乗っている下半身が面白い。
投げられたり股間を杵で突かれたり。
さらに胸を切り開かれたり釜で茹でられたり。釜茹でにされる亡者の表情を見ると「意外と適温なのでは?」なんて思える。
しかし股間の切断は特に痛そう。
慈悲を期待するかのような目で役人を見上げている亡者もいた。
亡者の中でも、笑ってしまうほど異色だったのがこの人。誰かとキスしようとしているのかね。
地獄といえば、欠かせないのはもちろん謝将軍の姿。ただ、この謝将軍はちょっと舌が短いかも。
「天国への階段」というのはよく聞くフレーズだが、この地獄階段も本当に楽しかった。
地獄の最後にあるのが、こちらの門。亡者が生まれ変わり先を告げられて出ていくというもので、これで地獄風景は終わり。
この地獄風景は、こちらの先生たちが製作したものらしい。素晴らしい地獄を見せてくれたことに感謝。
地獄を出て、さらに寺院内を散策。いろんなオブジェも造形が凝っていて面白い。
しかし、この大量のゴミ袋は何だろう。
1時間半ほど寺院内の風景を楽しみ、そろそろ帰ることにした。階段を下りると、ここには古来からの親孝行の図がいくつも掲げられていた。
親孝行の中で、一番好きなのがこれ。歯の抜けた老母に飲ませているというもので、子供が「自分にも!」といって裾を引っ張っているのが笑える。
これでめぼしいエリアは終わりかと思ったら、最後にこういう回廊があった。
「古國神廊」という名前から、おそらく古来の神像が並べられているものと思って入ってみた。そして、その姿の異様さに驚愕。こんな神様が本当にいるのかね。
馬や龍はまだわかるが、蛇や鳥というのはなかなか見ない。特に爬虫類嫌いの人にとっては、蛇神なんて夢に出てきてうなされそう。
こちらは七福神の由来になった神様(多分)。日本に伝わってくる前の姿かもしれないが、弁財天(?)のおばさんぶりがリアルすぎ。あと満面の笑みを浮かべる福禄寿というのも面白い。
ようやく、これで寺院内を全部見たことになる。満足して出口へ。
いやー、面白い寺院だった。個人的に香港で一番面白い寺院は萬佛寺だと思っているが、この慈雲閣も負けていない。香港でちょっと変わった観光をしたい人は、ぜひとも萬佛寺とセットで訪れてみてほしい。自信を持っておすすめできるスポット。