キナバル登山を主目的としたマレーシア滞在を終え、台湾へ移動してきた。台湾は大好きな旅行先なので、あえてマレーシア滞在を1日少なくして台湾滞在日を作り、台湾北部を回ってきた。
朝9時過ぎ、台北に到着。コタキナバルからはLCCのエアアジアを利用したわけだが、値段も安いし旅行者としては助かる。今後も、東南アジア方面の旅行にはエアアジアを使う機会が増えると思う。
9時半、5日ぶりに台湾に入国した。繰り返すが、台湾は大好きな旅行先なので入国するだけで高揚した気持ちになる。
台湾出発は翌日の夜なので、さすがに台湾南部へ行くには日数が足りない。台北に滞在することも検討したが、今回はまだ行ったことがない基隆(キールン)を訪れてみることにしていた。
台北へ移動する前に、空港に荷物を預けておく必要がある。登山道具などは台湾では必要ないので、旅行前に荷物預かり所について調べたところロッカーに置いておけばいいことがわかった。ターミナルからMRTの駅へ向かう途中にロッカーが並んでいて、ここに荷物を入れて身軽になった。ロッカー料金は取り出すときに支払うことになる。
MRTで台北へ移動し、ここから台湾国鉄の台北駅へ。滞在するのは基隆だが、この日に見て回りたいのは金爪石という町。基隆近郊の観光地といえば普通は九份だと思うが、今回は「黄金博物園」というのが面白そうだったので、あえてマイナーな金爪石へ行くことにしている。
金爪石の最寄り駅は九份と同じく瑞芳駅。自動券売機で料金を見ると各駅停車で49元。ついそのまま券売機で切符を買ったが、考えてみればMRTと同じく Easy Card が使えるはず。何をやっているんだろう。
地下ホームへ行くと、自強号が入線してきた。もちろん、今回は特急列車には乗らない。
12時10分発の各駅停車で台北を出発。40分で瑞芳駅に到着した。
駅を出て、バス乗り場を探す。下の写真は瑞芳駅の正面風景。
駅周辺の風景。こういうところを歩くのも楽しい。
ちょっと面白い名前の店があった。文具や生活用品を売っている金玉堂。
バス乗り場はすぐに見つかり、基隆客運で瑞芳を出発した。この路線は途中に有名観光地の九份があり、ここで多くの乗客が下りていった。バスから眺めていても観光客が多く、ここを通過する旅行者は珍しいかもしれない。
瑞芳駅前から20分で金爪石に到着した。このバスも Easy Card が使える。窓に描かれているキャラクターはくまモンと高雄熊の親戚、台湾観光局の「喔熊(Oh! Bear)」。
では、ここから金爪石を観光。周囲を眺めると、深い山の中にある町という感じ。
金爪石は、かつて金瓜石鉱山という金鉱山で栄えた町で、今は廃鉱になっているが日本統治時代の施設などが「黄金博物園」として観光地化されている。日本人としては、やはり見てみたいもの。
博物館の方へ歩いて行くと、こういう日本風の建物が並んでいた。台湾はこういう建物を大切に残してくれているところが嬉しい。
このあたりから遠くを眺めると、寺院みたいな建物が見える。
実をいうと、あの寺院を見ることが今回金瓜石へ来た最大の目的。何やら大きな像みたいなものが見えるが、それについては後ほど。
まずは、あの寺院へ行ってみることにした。途中にあったのがこちらで、日本統治時代を舞台にした映画の宣伝だろうか。
寺院は谷の向こう側にあるので、いったん坂道を下りてから登る必要がある。
坂道を下りていくときの風景も、すごくいい雰囲気。赤い提灯が下げてあったりする。
周囲を眺めると、緑に覆われた風景がきれい。
一番下まで下りると、犬が迎えてくれた。外見からバイオハザードのケルベロスを連想してドキッとしたが、近寄ってみると大人しい犬だった。
ここからカラフルな階段を上がって寺院へ。
やがて寺院の門が見えてきた。
ここが「勧済堂」という寺院で、今回どうしても見たかった目的地になる。
勧済堂
ここは金瓜石地区の守り神である関聖帝君(関羽)が祀られている寺院。というわけで、先ほど遠くから眺めた大きな像は関羽像。
門をくぐり、本堂へ。かなり立派な建物で、赤い柱と提灯がきれい。
こちらのレリーフには関羽の生涯が描かれていた。よく作り込まれていて、馬などは躍動感が見事。
関羽像はどこにあるのかというと、建物の上。正面ではなく少し斜めに立つと、巨大な関羽像が鎮座しているのが見える。
近寄ってみると、その巨大さに驚かされる。
いやあ、これはすごい。説明書きによると「高さ10.5メートル、重さ25トンの純銅製関羽像」だそうで、左手に持っている春秋の書物が1.5メートルの大きさ。近くから見ると、かなりの迫力。
これだけの大きさのものがブロンズ製ではなく純銅製というのも、かなり珍しいのではないかと思う。純銅なのでブロンズのように緑がかった色ではなく、明らかな銅色。この関羽像を見るために金瓜石へ来たようなものなので、十分に満足できた。
続いて、本堂に入ってみた。
本尊は赤い顔に金色の目をした関聖帝君。こちらも迫力ある姿なので、丁寧に参拝。
寺院の奥へ進むと、龍の池が作られていた。
この近くに階段があり、2階からも屋外に出ることができるようになっていた。
ここで関羽像を見上げていると、なんだか周囲が暗くなってきた。「これは雨になるかも」と思っていたら予想通り天候が急変し、周囲は激しい雨。本堂内に戻り、置いてあった椅子に座って休むことにした。
地面が泡立つほどの雨だが、熱帯地方のスコールは始まりと終わりがすごくはっきりしているのが特徴なので、そのうちに止むはず。そう思っていると30分ほどで急に雨足が弱くなり、やがて完全に止んでしまった。スコールは屋外で遭遇してしまうと大変だが、雨宿りできる場所だったらしばらく待てばいいので助かる。
再び屋外に出て、周辺を歩いて見た。関羽像が見下ろしている眺め。
屋根の上も、龍やら馬やらの装飾が見事。
関羽像も、少し近くで見ることができた。かなり威厳のある表情。
寺院の奥には庭園みたいなエリアがあり、遊歩道が作られていた。そして、この林の中にも今回見たかった「日本に関する物件」がある。
歩いていると、その姿は木々の間にひっそりとたたずんでいた。
それにしても、まさか台湾でこの姿を見ることになるとは。といっても、私は小学校の校庭で二宮金次郎像を見ていたような世代ではないので、懐かしいという気持ちにはならない。そうではなく、この石像を大切に保存してくれていた台湾の人たちへの感謝の気持ちが強い。
二宮金次郎(二宮尊徳)のアップ。書物の上になぜか硬貨が乗っていた。
日本でもほとんど見かけなくなった二宮金次郎像が台湾には残されているのが驚き。この後、太子賓館を見学していたときにも思ったが、台湾の人たちは日本統治時代を否定せず大事に残してくれているところが嬉しい。
庭園を出て本堂に戻り、寺院を正面から眺めてみた。晴れ間が出ていて、先ほどまで激しい雨が降っていたとは思えない風景。
少し離れたところから、関羽像をアップで撮ってみた。こんな姿を拝める場所は世界にもそうはないはずで、本当に見事なもの。
寺院の周辺には何軒か食堂があった。ここで昼食にすることにして、写真左側の客が入っている方を選んでみた。
注文したのは「海鮮粥」と「菜脯蛋(切り干し大根入りの玉子焼き)」で、値段は各80元。壁にメニューが貼ってあり、台湾の漢字はわかりやすいので助かる。中国本土の漢字は簡略化されすぎていてわかりにくい。
味はもちろんうまいが、先ほどの大雨の後に晴れているので湿気がすごい。特に海鮮粥などは大汗をかきながら食べることになった。
昼食後、再び本堂に戻って周辺を少し散策。そろそろ戻ることにした。いつかまた関羽像と二宮金次郎像に再会したいと思いながら階段を下りる。
雰囲気のいい路地を歩き、金爪石へ。
再び黄金博物園エリアに戻ってきた。
太子賓館
続いて、太子賓館に入ってみた。入場は無料。
ここがどういう建物かというと、当時の皇太子(後の昭和天皇)が金瓜石の鉱山産業を視察する際に、迎賓館として建設されたもの。なので純日本風の建物になっている。
建物には入れず庭園を散策しながら中を覗き込むだけだが、きれいに手入れされているので雰囲気はすごくいい。まるで京都あたりにいるような気分。
朝鮮半島あたりとは違って、台湾では日本統治時代の建物を大切に保存してくれているところが嬉しい。
景色を楽しんだ後、迎賓館を出て歩いていると「金水茶坊」というカフェがあった。昼食直後なので通過しようとしたが、人形だけは面白かったので写真を撮ってみた。
今までは触れずにいたが、黄金博物園エリアのメインと言えるのは「黄金博物館」という施設。金塊の実物があったり、実際の坑道の中に作業員の人形などが展示されていて、かなり充実した内容だそう。ではなぜ紹介しないのかというと、入らなかったから。
先ほどの勧済堂と太子賓館に滞在しすぎて、時刻はすでに4時過ぎ。黄金博物館は午後5時までで(土日は6時までだそうだが、この日は金曜日)、全部見るのに2時間はかかるという施設を大急ぎで見学するのはもったいない。
自分でも驚くような失敗だったが、それだけ勧済堂の関羽像が魅力的だったということ。仕方がないので、インフォメーションセンターでパンフレットだけもらってきた。
金爪石にはまた来る機会があるはずなので、そのときの楽しみとして残しておくことにする。
午後4時45分、バスで金爪石を出発。このバスは基隆行き。
途中で有名観光地の九份を通った。さすが、こちらはかなりの人出で混雑していた。
基隆近郊の観光地といえば普通は九份で、九份へ行った人が「他に面白そうな観光地は?」と思って訪れるのが金爪石だと思う。私のように九份を通過して最初に金爪石へ行く人は珍しいはず。
もちろん、いつか九份にも行ってみたいと考えている。次回の基隆滞在では、九份と金爪石の両方を回りたい。
基隆の風景と廟口夜市については、次のページで。