キルギス旅行記(バラサグン遺跡 / ブラナの塔)

いよいよキルギス滞在最終日になった。翌日の早朝、キルギスを出発してウルムチへ向かうことになる。

今回の旅行ではアルティン・アラシャンへのトレッキングをやったり、チョルポン・アタでルフ・オルドというB級スポットにも遭遇したりと内容が豊富だったため、キルギスに入国したのがずいぶん前のような気がする。

最終日は、朝からトクマクへ移動してバラサグン遺跡を見て、ビシュケクに戻ってからオシュバザールとサーカスを見ることにしていた。


朝7時半に起床。宿泊料に朝食が含まれているため、1階の会場に入ったところ客が誰もいない。結局、最後まで閑散とした中で朝食(パン、オムレツ等)を食べることになった。まさか宿泊客が私1人だったというわけではないと思うが…

8時半にホテルを出て、東バスターミナルへ歩いて移動。6日前と同様にミニバスでトクマクへ移動した。見覚えのあるバスターミナルで下りると、前回と同様にタクシー運転手たちが「ブラナ?」と言いながら寄ってきた。バラサグン遺跡へのミニバスはなく、移動手段はタクシーしかない。

天候は曇りだが、ところどころに晴れ間も見える。6日前、雨のためバラサグン行きを諦めてこの日に延ばしたことが結果的に正解だった。

タクシーはメーターはなく交渉制だが、バラサグンまではどの運転手も500ソムと言ってきたので固定料金らしい。(帰国後に調べたところ、たしかに相場は500ソムだった。ここの運転手はみんな良心的だったらしい)

バスターミナルからしばらくは大通りを通り、途中から未舗装の脇道に入る。バスターミナルから10分ほどでバラサグン遺跡の入口に到着した。

タクシーにはここで待ってもらうことにして、遺跡内へ。なお、駐車場にミニバスが停まっていて「本当はミニバスでも来れたのか?」と思ったが、これは路線バスではなくスクールバスだったということが後になってわかった。

中に入ると、先のほうにブラナの塔が見える。

こちらが、この遺跡でほぼ唯一の見所と言っていいブラナの塔。11世紀に建てられたというミナレットで、かつては45メートルの高さがあったそうだが15世紀の地震で倒壊したため現在は24メートル。その影響なのか、少し傾いている。

普通に考えれば24メートルというのはそれほど高い塔ではないが、この通り大草原にぽつんと建っているため、かなり目立っている。空をバックにして、かなりいい写真が撮れた。

表面のアップ。ソ連時代に何度も修復されているため、表面の模様はきれい。

ブラナの塔には登ることができる。入口でチケットを見せ(チケットは近くにある小さな土産物店で購入)、中に入る。

階段はかなりの急勾配。とてもすれ違えるような広さはないので、上から誰も下りてこないことを願いながら這うように階段を上がる。もっとも、高さは24メートルしかないので、それほどきつい思いをすることはない。

これが頂上からの眺め。周囲はすべて地平線まで草原が広がっていて、いかにも中央アジアという風景。この眺めは本当にきれいなので、これを見るためだけでもバラサグン遺跡へ来る価値はある。

6日前の雨の日ではなく、この日に延期しておいて本当によかった。

頂上はそれほど広くはなく、学校の行事として訪れたらしいグループで賑わっていた。下の写真に写っているピンク色のジャージの女性(多分ロシア系)が超絶の美人で、こっそりとアップで写真を撮るチャンスを伺っていたのだが、うまく撮れずにいるうちに下へ降りていってしまった。これだけが今でも残念。

頂上から下を見下ろしたところ。ここで自分の足先が写るようにして写真を撮るのが当サイトの定番だが、さすがにここではそういう写真は危険すぎて撮れなかった。

では、こちらも下に降りることにする。上から見下ろすと、通路は本当に狭い。

ブラナの塔を下り、続いて近くの草原へ。ここには「バルバル」という石人の像が集められている。ブラナの塔以外では、ここくらいしか見るものはない。

旅行人ノートによれば、バルバルは「北ユーラシアの遊牧文明圏に広く分布する人型の石像で、主に貴人の墓所に建てられた」「以前はこの辺りの草原地帯ではよく見られたようだが、ロシア人の入植と農地化の過程で大半が撤去されてしまった」「ここにあるのは、その中でも保存状態のよいもの」だという。よく見ると人相が面白い。

上の写真に写っている平べったい顔を見たときは、ドグラ・マグラ の桂枝雀を思い出した。昔話をすると、学生時代にあの原作をどうやって映画化したのか不安に思いながら映画館で見て、予想以上の傑作だったことに感動したのを憶えている。しかし今は DVD が廃盤でプレミアがついているのが驚きで、7年前に買っておいてよかった。呉モヨ子役の三沢恵里は今どうしているんだろう。

(※)2020年の時点で DVD と Blu-ray が再発されているようです

遺跡とは関係ない話はこれくらいにして、スクールバスで来た人たちは遺跡についての説明書きに見入っていた。

近くには、ごく小さな展示室もある。下の写真は修復が行われる前のブラナの塔だと思う。しかし塔の補強は別にして、この写真を見ると表面はあまりきれいに修復しないほうが味があってよかったような気もするが。

それから、かつて交易で栄えていたころを再現した絵もあった。地震で倒壊する前はこんな姿だったのだろう。かつて栄えていた都市が今では大草原なのだから、この絵を見ていると「兵どもが夢の跡」という感じ。

これで遺跡内を一通り見たので、トクマクへ戻ることにした。正直言ってブラナの塔以外は大して見るものはなく、塔も少しきれいに修復されすぎている感もあるが、塔の上から眺める大草原は迫力がある。ビシュケクで半日ほど時間があれば、訪れてみてほしい。

遺跡を出て、待機してもらっていたタクシーに乗り、再びトクマクへ。ここでミニバスに乗り換え、ビシュケクに戻った。