マレーシア旅行記(香港編)

今回の旅行は、初日はまだマレーシアには行かず香港で1泊することになる。当初の予定では、香港到着が午後3時なので夕方まで香港の寺院めぐりをやってみるつもりだった。しかしながら、予想しない事態により予定が大きく狂ってしまった。


朝9時前に福岡空港に到着し、キャセイパシフィック航空のカウンターでチェックインの列に並んでいると、経由地の台北へ行く乗客だけが別のカウンターに案内されていった。ちょっと不思議に思っていると、チェックインのときに「航空機の整備に時間がかかっていて、出発が午後になる」ということだった。何やら油漏れなどのトラブルが発生していて、出発時刻がまだはっきりとは決まらないらしい。出発が遅れるために台北には寄らずに香港へ直行することになったようで、それで台北行きの乗客が他社の便に振り替えられたということだった。

予定では10時50分に福岡を出発して台北経由で午後3時に香港到着、それから香港の寺めぐりを少しやってみるつもりだったが、これでは寺を見る時間がなくなってしまう。それに、あまり遅く着くと香港で泊まる場所を見つけられるかどうかも心配になる。

しかし、今から考えても仕方がないので、このまま空港内で待つことにした。航空会社からもらった食事券(1,000円分)でちょっと豪華な昼食をとり、ガイドブックを読みながらひたすら待機。結局、午後4時近くになってようやく搭乗が始まり、定刻より5時間遅れで福岡空港を出発した。

台北へ行く乗客と、おそらくは香港で乗り継ぎがある乗客が別の便に振り替えられているため、機内はこの惨状。

もう20回近く海外旅行をやっているが、これほどガラガラの飛行機に乗ったのはちょっと記憶にない。

台北は経由せず、午後6時に香港国際空港に到着した。もう香港で寺めぐりをやる時間はない。とりあえず夜景でも見ることにして、2年ぶりに香港に入国した。

香港ドルを入手し(1香港ドルは約14円)、エアポートエクスプレスで九龍駅へ向かう。当初は午後3時に到着の予定だったので、前回来たときと同様に有名な安宿集合ビル「重慶大廈(チョンキンマンション)」でゲストハウスを探すことにしていて、宿泊先は予約していない。さらに、これは旅行直前になって気づいたのだが、この翌日の5月2日は香港で北京オリンピックの聖火リレーが行われることになっていて世界中から歓迎したい人や抗議したい人などが集まっていることが予想される。そのため、この時間でもまだ空いている部屋があるかどうか、実はかなり不安に思っていた。

九龍駅からシャトルバスに乗り、ホテル「ホリデーインゴールデンマイル」で降りて重慶大廈へ歩く。数分で、見覚えのある外観が見えてきた。約2年ぶりなのでちょっと懐かしい。

下の写真が香港に残る最後の魔窟と言われている重慶大廈。

重慶大廈に入ると名物のエレベーターが並んでいる。どのエレベーターも行列ができていて、エレベーター自体もちょっと狭いため、乗るまでにかなり時間がかかることで有名になっている。

この重慶大廈は一見するとひとつのビルのように見えるが、実は上のほうの階はA座~E座という5つの棟に分かれていて、上層階では各棟の間を行き来することはできない。そのためエレベーターもA座行き、B座行きなどに分かれていて、さらに(おそらくは混雑を避けるため)各棟で偶数階行きと奇数階行きに分かれている。

まずはB座の上層階で各ゲストハウスをあたってみたが、どこも満室。いったん地表階に下り、続いてA座の上層階へ行ってみたがこちらもことごとく満室。これは困った。

やはりこの時間に空いているゲストハウスを見つけるのは無理なのかもしれない。泊まるのは諦めて空港に戻り、待合所で仮眠することも考えたが、最後の望みとしてA座の最上階(16階)にあった Travellers Hostel へ行ってみることにした。ホステルなのでドミトリーだと思うが、仕方がない。

16階で降りると、目の前に Travellers Hostel がある。ここで泊まれるかどうかを聞いたところ、ベッドに空きがあるということだった。部屋に案内してもらうことにする。

実を言うと、私は今まで海外旅行中にドミトリーには泊まったことがない。この歳になってドミトリー初体験ということになった。

ここが今回泊まることになったドミトリーで、2段ベッドが5台に1段ベッドが1台、さらに床にも1人分のマットレスが敷かれていたので合計12人部屋。

宿泊料金は60香港ドル(宿泊料)+20香港ドル(ロッカーの使用料)で、チェックアウトのときにロッカーの鍵と引き換えに20香港ドルは返却される。いわばデポジットといったところ。

宿泊料金が高い香港で1泊約840円とは、まさに破格といっていいだろう。もちろんシャワーとトイレは共同だが、シャワーはちゃんとお湯も出る。なぜか日本人はまったく見かけなかったが、帰国後にインターネットで調べてみたところ、ここは欧米人バックパッカーの間でかなり有名なホステルということだった。

何とか寝る場所も確保でき、少し外出することにしてエレベーターで地表階まで下りる。下の写真はエレベーター内に貼ってあったシール。ちゃんと許可は取ってあるのだろうか。

重慶大廈を出て運河方面へ歩く。本当は香港島に渡ってビクトリアピークから夜景を眺めたかったが、もう時間が遅いので運河沿いの遊歩道から香港島方面を眺めるだけにしておいた。ここからの眺めもかなりきれいで、北京オリンピックが近いので “BEIJING 2008” という文字も見える。

30分ほど夜景を眺めた後、近くにあったそごう地下のフードコートで夕食を取り、重慶大廈に戻ることにした。

途中、こういう名前の眼鏡店があった。

たしかに眼鏡をかけていた人だったようだが、しかし満州国皇帝が店の名前に使われているというのが驚き。中国の人たちは溥儀に対してどういうイメージを持っているのだろうか。

近くにあったセブンイレブンでちょっと買い物をした後、重慶大廈に入った。エレベータの行列に並び、16階の Travellers Hostel に戻ると、この時点で部屋にいたのは5人。すでに寝ていたり、日記らしいものを書いたりしていた。みんな欧米人のバックパッカーで、中には明らかに40代だろうという人もいて「その歳になってバックパッカーか?」という気持ちになった。こんな安宿ではなく歳相応の快適なホテルに泊まったらどうなのか、などと思ったりもしたが、まあ私も似たようなもの。

最近、どうしてこういう安宿に泊まりたがるのか、自分でも不思議に思っている。日本で普通に働いているわけだからハイアットリージェンシーでもシャングリラホテルでも十分に泊まれるだけの金は持っているのだが、なぜか安いところに泊まると喜びを感じてしまう。あまり高いところに泊まると自分がなんだか場違いな所に来たような気がして落ち着かないというのもあるが、そろそろ優雅な旅行に変えていきたいという気もする。

シャワーを浴びた後、翌日は早朝に起きないといけないので早めに就寝した。


翌日、朝5時半に起床。まだ暗い部屋の中を見ると、ちゃんと12人寝ていた。寝たときはまだ5人ほどだったが、その後にみんな帰ってきたらしい。周囲の人を起こさないように注意してベッドを下り、床に寝ている人を踏まないようにしながら部屋を出た。

ロッカーの鍵を返してデポジットの20香港ドルを受け取り、ホステルを後にした。今回がドミトリー初体験だったが、感想を言うと、やはりちょっときつい。話の種にときどき泊まるのはいいかもしれないが、こういうところばかり泊まりながら旅行を続けるのはやめたいと思う。もう少し快適な旅がしたい。

重慶大廈の外に出ると、かなり雨が降っていた。この時間はまだシャトルバスは運行されていないのでタクシーで九龍駅へ行き、エアポートエクスプレスで空港へ向かう。香港を出国して搭乗ゲート近くへ行くと、コタキナバル行きの香港ドラゴン航空機が見えてきた。この航空会社を利用するのは今回が初めて。

午前8時に離陸し、今回の旅行の主目的地、マレーシアのコタキナバルへ向かった。