国内旅行編(山口 / 麻羅観音)

このところ国内旅行が秘宝スポット巡りになりつつある。というわけで今回の目的地は山口県長門市の「麻羅観音」。どういう場所かについては特に予備知識は必要ないだろう。この名前がすべて。

交通手段は、青春18きっぷが使える時期なので主に鉄道。というより、最初に鉄道旅行を計画していて、ついでにどこか面白いスポットはないかと探していたらこういう場所があったというわけ。

なぜこのような場所を好んで訪れるのかと聞かれることが最近多いが、これは一言で言えば「脱力感」だろう。淡路島のナゾのパラダイス以来、この種のスポットに漂う「呆れて声も出ない」という雰囲気に魅せられてしまったようだ。


1月6日に下関まで移動しておき、下関のカプセルホテル泊(1泊2,500円)。7日は1日中列車に乗って鉄道旅行を楽しんだ(山口線、山陰本線経由)。この日は小倉のカプセルホテル泊(1泊3,800円)。

そして8日、小倉から厚狭へ行き、美祢線で長門市へ。ここから下関行きのバスで麻羅観音がある俵山温泉へ向かう。バスは普通の路線バスで、乗車率は半分程度。温泉巡りが好きらしい奥さんたちが多い。

長門市駅から40分ほどで俵山温泉に到着した。次の下関行きのバスまでの約2時間半の間に、麻羅観音や俵山温泉街を歩き回ることにしていた。

バス停近くにあった温泉街地図で麻羅観音の位置を確認し、そちらへ向かった。道はすぐに温泉街を離れ、約15分で麻羅観音に到着。道路に面した斜面にある小さな寺で、道路を挟んで駐車場がある。その駐車場の前に「麻羅観音 日本一 ココ」という看板がある。それにしても、まるで神社のような雰囲気の寺。

それでは麻羅観音へ。階段を上ると石碑があり、麻羅観音の由来が書かれている。

天文二十年(一五五一年)九月一日、中国地方の太守、大内義隆公は家臣の陶晴賢に攻められ、湯本温泉の大寧寺で自刀した。翌二日、***尊公はこの奥で捕らえられ斬首された。墓は近習のものと共に上安田にある。末子の歓寿丸は女装して山中にかくまわれていたが、翌年春捕らえられてここで殺され男児の証拠に男根を切られて持ち去られた。これを里人はあわれんで、この社をたてて霊を慰めた。ここは、子宝に恵まれない人や健康増強への願を託す参詣者で賑わう。

賑わっているかどうかはともかく、ここの由来ははっきりしているようだ。(この石碑の写真を撮ったのだが、フラッシュで光ってしまったため***の部分は判読不能となってしまった)

さらに階段を上がると本堂がある。そしてその周囲に、ここのメインというべき形も大きさも様々なオブジェが林立している。材質もいろいろで、石製や木製の他、ステンレス製で銀色に光っているものもある。これらはすべて奉納品らしく、裏に名前と年月日が記載されているが、製作にかかった費用の差が露骨に表れていて面白い(大きさや細部の形など)。

上の写真の中央の2本が、高級そうな石が使われていて一番高価に思える。

しかしいつも思うのだが、いったいどういう人が作っているのだろう。一度、製作現場を見てみたい。(ステンレス製の場合、製作用の図面も存在するのだろうか)

続いて、小さな本堂に入ってみる。

本尊は男根。それはわかっていたが、こうして恭しく奉られているのを見ると不思議な気分になる。本堂内にはその他にも様々な木製の男根があるが、これらは奉納品らしい。

また、拝観者がいろいろと書きこんでいるノート(落書帳)が数冊あり、読んでみるとなかなか面白い。多くは「子宝に恵まれますように」や「お陰様で子宝に恵まれました」というものだが、なかには「いい男が見つかりますように」などというものもある。なにを勘違いしたのか「高校合格」というものもあった。こういうことを男根に拝んでどうする。

本堂横には、奉納品で溢れている祠があった。写真ではよく見えないかもしれないが、ここに収められているのはすべて陶器製の男根。全部同じ形をしているが、これは俵山温泉にある土産物店などで売っているもので(1,500円ほどだったと思う)、それに名前を書いて奉納しているというわけ。

それにしても、ぎっしりと並んでいる光景は圧巻。(クリックで拡大)

境内には猫がいた。人間慣れしていてしきりに寄ってくるので、もともと飼い猫だったのかもしれない。この猫をモデルにして何枚か写真を撮ってみた。

麻羅観音には30分ほどいたが、ときおり参拝者がやってくる。参拝者の年代はさまざまだが、みんな呆れたように半笑いを浮かべているところは共通している。

このようなスポットは、この麻羅観音と前年に訪れた宇和島の多賀神宮の他、日本各地にある。いずれ訪れてみたい。(代表的なところでは和歌山県白浜の歓喜神社、愛知県小牧市の田縣神社など。その他、知られていないスポットが多数あると思われる)


麻羅観音を後にして、再び俵山温泉街へ。周囲を歩き回ってみたが、ひなびた雰囲気がなかなかいい温泉街だった。こういう温泉が好きな人にはお薦めといえる。何件か土産物店を見て、男根がついた盃を買った。

俵山から再びバスに乗って下関へ向かう。ずっと山中ののどかな地域を通るので、景色を見ていると飽きない。なお、途中に「天皇様」というものすごい名前のバス停があった。由来は知らない。

小月駅付近から市街地となり、俵山温泉から約2時間半で下関駅に到着(バス料金は1,600円ほど)。ここから快速と各駅停車を乗り継いで佐世保へ帰った。

(2001.1.8)


16年後の2017年に再訪してきました。再訪記は当サイト別館に載せています。