国内旅行編(三重 / ルーブル彫刻美術館、大観音寺)

飯高洞窟美術館を後にして、松阪市街へ向かう。勢和多気インターから伊勢自動車道に乗り、久居インターで下りて榊原温泉方面へ。近鉄榊原温泉口駅の裏手にルーブル彫刻美術館がある。

駅の裏は細い道が入り組んでいるので少し迷ったりしたものの、巨大なミロのビーナスとサモトラケのニケが並ぶ美術館の横を通って予想以上に広い駐車場に到着した。

ルーブル彫刻美術館

ここは「大観音寺」という寺と「ルーブル彫刻美術館」が一体になったスポットであり、実はルーブル彫刻美術館は大観音寺が経営している。大観音寺もB級スポットとしてかなり面白いのだが、まずはルーブル彫刻美術館に入ることにする。2,000円でルーブル彫刻美術館と大観音寺のセット券を買い、館内へ。

ルーブルといえばもちろんパリのルーブル美術館だが、ではこのルーブル彫刻美術館は本家のルーブル美術館とどういう関係にあるのだろうか。その点を疑問に思う人も多いと思うが、なんとここは(おそらく)世界で唯一のルーブル美術館の姉妹館なのである。唖然とするような話だが、ルーブル美術館の館長がここを訪問したときの写真もあるし、パンフレットや公式サイトにそう書かれているから本当なのだろう。

ここにはルーブル美術館と姉妹館の契約を交わし、所蔵されている彫刻作品から直接型を取るという荒業で(!)、完全コピー品が並んでいるという。というわけで地上2階地下1階のフロアにミロのビーナスやらミケランジェロのモーゼやらツタンカーメン王の黄金のマスクやらロゼッタストーンやら、テレビや写真で見たことのある美術品や出土品の実物大コピーが、すごい密度で並んでいる。どういう事情でこのようなことが可能になったのか、あまり詳しいことは知らないが、とにかくこれほどの作品を一度に見られる場所は世界でもここぐらいではないだろうか。ヨーロッパで美術館めぐりをやるより、ここへ来るほうがよほど安上がりといえる。

なお、ここで「ミロのビーナスはともかく、ロゼッタストーンは大英博物館だし、ツタンカーメン王のマスクはカイロのエジプト考古学博物館ではないのか?」と疑問に思う人がいるかもしれない。私もロゼッタストーンを見たときは「何でここに?」と思ったが、作品目録を見たところ大英博物館やベルリン美術館やローマ国立博物館などの収蔵品の名前もあった。まさかこれらも型を取ったとは思えないから、おそらくは単なるレプリカなのだろう。あまり細かいことを気にしても仕方がない。

館内は写真撮影禁止だったので、写真は撮っていない。そのため、展示品の目録などは以下の公式サイトを参照してほしい。展示品の点数と密度に圧倒されるし、あらゆる角度から見ることができるのも面白い。(考えてみれば、ミロのビーナスの後ろ姿を見たのは初めてのような気がする)

本当にすごいところだったので、美術館に興味のある人は訪れて損はないと思う。

大観音寺

では、続いて隣接する大観音寺へ向かう。その前に、寺院入口へ向かう通路横の斜面には、この通りたくさんのカエルの楽隊が並んでいた。これを見れば、大観音寺がかなりのB級スポットであることが予想できると思う。

それにしても、一体ずつ微妙に姿勢が違うし、よく作ってあると思う。

では、ルーブル美術館との共通チケットを見せて建物の中に入る。ここでは入場すると各干支の守り本尊が刻まれたコインをもらうことができる。私は酉年なので、不動明王のコインをもらった。このコインには、表に不動明王、裏にはものすごく細かい字で般若心経がびっしりと刻まれていて、かなり手が込んできるように思える。せっかくなので、私は今でもこのコインを財布に入れて持ち歩いている。

建物の内部には御守りの売り場などもあるが、一番の名物は純金でできているという恵比寿と大黒だった。奥のほうに置かれていて、直接触ることができる。高さは十数センチといったところでそれほど大きなものではないが、こういう純金の塊はそう見る機会はないので、やはり興味深い。時価五億円だそうで、素晴らしいと思うか悪趣味と思うかは人それぞれだと思う。写真撮影は禁止なので、どういうものか知りたい人は下のほうでリンクしている公式サイトを見てほしい。

建物を出ると、最初に見えるのが「金運招き猫」。

この通り猫のオーケストラになっている。猫好きにはたまらないかもしれない。

続いて「やるき達磨」と「にっこりお福」。かなり大きいので迫力があるが、近くで見ると顔が溶けかかっているのが怖い。

先のほうに、ここの本尊の「純金開運寶珠大観世音菩薩」が見える。まあ、大きさから考えて純金ではないのは確か。

とりあえず、観音像のほうへ進むことにする。

観音像へ向かう道の両側には、十二支御守りや七福神などが並んでいる。妙にセクシーな弁天像があるのは、こういうスポットのお約束といえる。

途中、道の横に「百観音お砂踏み霊場」という建物があったので入ってみた。靴を脱いで中に入ると、中には「西国三十三観音」「坂東三十三観音」「秩父三十四観音」の本尊がずらりと並んでいた(したがって合計百観音)。

「お砂踏み霊場」というのは各札所から持ち寄った砂が置いてある霊場のことで、その砂を踏みながら歩くことで実際に霊場巡礼をしたのと同じ御利益を得られるという、大変にお得な場所のこと。

というわけで私も霊場内を一回りしてきた。砂自体は本尊前のプレートの下に置かれているということなので直接踏むことはできず、各プレートを踏んで参拝を繰り返すことになる。

ここには係りのおばさんがいて、一回りしたところで捕まってしまい、ちょっとした営業トークで不動明王像の購入を勧められたが数千円もするのでやめておいた。

お砂踏み霊場を出て、再び観音像のほうへ向かうことにする。途中にあるのが「ガン封じ神獣白澤」。麒麟や鳳凰はともかく、白澤を実際に作ったのは日本でもここくらいではないだろうか。

マイクを持ったカラオケ観音。ちょっと意味がわからない。

やがて観音像に到着した。高さは33メートルで、閉園してしまった長崎西海楽園の観音像(高さ40メートル)よりは小さいが、こちらは光背付き。残念ながら内部に入ることはできない。

観音像の前で振り返って撮った風景。こういう大きな手は愛媛県の石手寺でも見たことがある。

こちらは観音像の背後の崖にあった「繁盛河童大明神」で、河童が三味線や尺八を演奏している。崖の斜面には羽が生えた金色の人たちが並んでいて、この人たちの正体がわからない。

このあたりが大観音寺の最奥部になる。ここで引き返し、各所を再度よく見てから大観音時を出た。

なかなか面白いスポットだった。元祖国際秘宝館が閉館してしまったため、おそらくこのルーブル彫刻美術館と大観音寺エリアが三重県で最大のB級スポットになったといっていいだろう。いつかまた来たいものだ。


津市の高速船ターミナルでレンタカーを返却し、高速船で中部国際空港へ。夕方の飛行機で福岡空港へ向かった。元祖国際秘宝館が閉館してしまったのは残念だが、時代の流れでは仕方がないのだろう。これで秘宝館は日本にあと5軒ほどが残るだけになってしまった。

これら、わずかに残る秘宝館の中でも、実は私はまだ熱海秘宝館と鬼怒川秘宝殿を見たことがない。地方に住んでいると東京の周り(特に北関東、山梨、静岡あたり)が行きにくいエリアとして残ってしまうためだが、早いうちにこれらの秘宝館へ行ってみたい。

(2007.4.1)


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