福岡県中間市の筑豊本線中間駅近くに「屋根のない博物館」という公園があります。
世界各地の石像などが脈絡なく置かれている公園だそうで、ここを歩くことで手軽に世界旅行ができるそうです。なんとなくB級スポット的な感じがするところが気になっていたので、2022年9月に用事があって北九州市へ行った際、訪問してみました。
折尾駅から筑豊本線の普通列車で中間駅へ。下車すると、中間駅は三角形の屋根が特徴的な駅舎になっていました。
屋根のない博物館は、中間駅のすぐ近く。歩いていくと「もやい通り」という表示が見えてきました。
ここは道路に沿って作られた細長い公園になっています。子供が遊ぶ公園というより、大人が休憩するスポットという感じ。
公園の説明書きによると、世界各地の代表的な石像を選び、石でレプリカを製作して展示されているそうです。内容は「ふるさとの道(日本~アジア)」「やすらぎの道(ヨーロッパ~アフリカ)」「古代への道(アフリカ~アメリカ)」「もやいの道(オセアニア)」の4つのエリアに分かれています。
レプリカなので、本物と違って「触っても問題なし」というところが売りみたいです。
では、まずは「ふるさとの道」を歩いてみます。
早速、次々と石像が現れます。最初に見えてきたのが「二面岩」。奈良県の橘寺にある石だそうで、年代は紀元7世紀。この写真は一方向から撮ったもので、反対側には別の顔があります。
すべての石像に説明書きが設置されているのでわかりやすい。この二面岩は「人の心の善悪二相を二つの顔で表しており、さらに大きな装置に組み合わされた一部と考えられている」だそうです。
続いて飛鳥石像(こちらも7世紀)。
説明書きによると「男女の老人が合体した形をしており、飛鳥の宮廷の庭園で噴水装置として使われたと思われる」だそうで、個人的に「合体」の部分が気になります。どんな形で合体しているんでしょうね。
それから、学術的な表現としては一般的に「考えられる」などが使われるはずで、「思われる」という言い方に違和感があります。これも個人的な感想なんですが。
こちらは「武装石人」。最初に見たときは大魔神かと思いました。
6世紀の日本でこういうものが作られていたんですね。
「扁平石人(6世紀)」。こんな面白い形の石像があったとは知りませんでした。足元には彼岸花が咲いています。
こちらも扁平石人。半円形の部分は、古墳の守りとして侵入者を防ぐことが目的だったとされているそうです。
ここから日本を離れて他のアジアの石像が並びます。まずは済州島のトルハルバン。説明書きでは「ドルハルバン」になっていますが、そういう言い方もあるんでしょうかね。
こちらは前漢の石馬象(紀元前1世紀)。
モヘンジョダロの神官王。年代は一気に遡って紀元前24世紀。
ミケーネの獅子門から先はヨーロッパのエリアになります。
門の先にいるのがギリシャ・デロスのライオン像。
オーセールの婦人像。こちらもギリシャ。
しかし、ギリシャの石像の向こうに廃車になったトラック(あるいは修理中か?)が見えるのがなんだか異様。
この公園は道路沿いに作られていて、道路の反対側には民家が並んでいます。このため、世界各地の石像の背景が普通の日本の家屋です。このシュールな眺めもB級スポット的で面白い。
こちらのベンチで少し休憩。柱はもちろん、教科書で習ったパルテノン神殿です。
ちなみに、私は2001年にエジプト~キプロス~ギリシャを25日間に渡って旅行したのですが、その際にアテネに立ち寄りながらパルテノン神殿を見ないという間抜けなことになっています。
なぜこんなことになったのかは当サイト本館の旅行記を見てもらうとして、当時は「またアテネに来る機会はあるだろう」と思ったものの20年以上が経っています。はたして、アテネ再訪は実現するでしょうか。
過去の思い出はこれくらいにして、次はスウェーデンのピクチャーストーン。年代はぐっと新しくなって8世紀。
この石板は説明書きがありませんでしたが、おそらくこちらもピクチャーストーン。
ここからアフリカに移り、まずはおなじみのスフィンクス。
前述の2001年のエジプト~キプロス~ギリシャ旅行の際、ピラミッドとスフィンクスは見ました。ただ、再訪する機会はなさそうに思っています。
同じくエジプトのオベリスクを見た後、アメリカ大陸のゾーンへ。目立っているのがメキシコの巨石人頭像。
それにしても、背後が一般の民家なのが本当にシュールです。
アステカのカレンダーストーン。
コロンビアのサン・アグスティンの鳥像。こういう、日本ではわりとマイナーな文明の石像が見られるのは得した気持ちになれます。後ろに重機が見える風景も面白いものですが。
そして、アフリカを出てオセアニアのゾーンに入ると、超有名な石像が並んでいました。この公園の目玉といえるエリアです。
日本の家屋を背景にしたモアイ像というのも、おそらくここでしか見られない風景ではないでしょうか。
特に気に入った風景がこちら。モアイと瓦屋根と白ダイのホーロー看板。
「白ダイって何?」と思って調べてみたら、衣料用の蛍光染料だそうです。桂屋商店というところから発売されていたそうで、この会社は「桂屋ファイングッズ」と名前を変えて現在も存続していました。明治23年創業ということなので、長寿の会社です。
それから、こういうホーロー看板はコレクターも多いので、状態のいいものであれば高く取引されているようです。この看板も表面にさびは見られないし、ヤフオクに出したらマニアが高く落札するかもしれません(まあ、余計なお世話ですが)。
さらに歩いていくと、顔だけタイプのモアイ像もありました。胴体の部分が地中に埋もれている姿を再現しているそうです。
そして、この公園の終点にあったのがポリネシアの女性像。
ここで引き返し、中間駅の方向へ戻ります。それにしても、日本の一般家屋と電柱をバックにしたモアイ像はやはりシュールです。
この公園の石像は「触ってもいい」という点が売りなので、もちろん撫でまわしてきました。イースター島にある本物のモアイ像に触れることは禁止されているので、触ってみたい人はこの公園へ来てみましょう。
モアイ像近くのベンチに座り、しばらく休憩。
ゆっくりと歩いて中間駅の方へ。
ミケーネの獅子門とデロスのライオン像のところまで戻ってきました。
ただ、今回ちょっと失敗したと思ったのは、訪れた時刻が午後3時半くらいで石像によっては逆光になってしまったこと。写真からわかる通り快晴の日だったため、コントラストが強くて白飛びしたような感じになった写真もありました。曇りの日の方が、白い石像をきれいに撮れるかもしれません。
それにしても、世界各地の石像の間から見える風景が完全に日本なのはシュールですねえ。特に「借家」「入居者募集」なんて最高です。
武装石人のところまで戻り、公園内を振り返ってみました。
石像の数が予想していたよりも多くて、かなり楽しめました。石像自体もよく作られているし、何より背景が完全に日本の家屋というのが実に面白い。
また、本物を見たことがある石像があったりすると、さらに楽しめると思います。私の場合はスフィンクスくらいでしたが、いつかモアイ像も見てみたいものです。
中間駅に戻り、プラットホームから線路を眺めてみました。かなり頻繁に列車が通る幹線なんですが、なぜか線路が草に埋もれていたのが不思議です。ふと、遊佐未森「夏草の線路」を連想。
中間駅から普通列車で折尾駅へ戻りました。ちょっとしたB級スポット「屋根のない博物館」の訪問は、これで終了。
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