【未承認国家「アブハジア共和国」への行き方】

コーカサス地方にある未承認国家「アブハジア共和国」をご存知でしょうか。国際的にはジョージア(かつてはグルジアと呼ばれていました)の一部なのですが、ジョージアの支配が及んでおらず、事実上の独立状態にあります。首都はスフミ。

日本を含めて世界のほとんどの国は独立を認めていないため扱いとしては未承認国になり、上の Google Map でも点線になっています。(もう1ヶ所点線の地域がありますが、ここは南オセチア)

「そんな危険そうな地域に入れるの?」と思う人も多いでしょうけど、これがジョージアから普通に入れてしまうんです。2019年5月に入国してきましたので、その時の経験を紹介します。当時、外務省の海外安全情報ではレベル3(渡航中心勧告)が出されていましたが、いたって平和で落ち着いた地域でした。

(注意!)
2019年後半~2020年の時点で、ジョージア側の国境は「閉鎖されている」「再開されたらしい」という情報が錯綜しています。ジョージアとロシアの関係が微妙なため国境も影響を受けているようです。渡航の際は必ず最新情報を確認し、入国はあくまで自己責任でお願いします。

事前の準備

入国する前に準備しておくことがいくつかあります。

入国許可証の取得

アブハジア入国にはビザが必要です。といっても入国してから自分でスフミの領事館に行って申請するため、入国時にビザを取得できるわけではありません。

その代わり、国境では入国許可証(Entry Permit)が必要になります。これは事前にインターネットで取得しておく必要があります。

まずはアブハジア共和国外務省のサイトにアクセスします。後述する通りアブハジアでは英語は絶望的に通じませんが(ロシア語のみ)、外務省のサイトはさすがに英語のページがあります。

Ministry of Foreign Affairs of the Republic of Abkhazia

The resolution “Cooperation with Georgia” was adopted at the request of the Georgian side within the framework of the 43-rd session of the UN Human Rights Council in Geneva, which almost completely repeats the content of the previous HRC resolutions on Georgia which have been adopted by the Council since 2017.

上記サイトの Consular service → Entry permit のページで必要事項を記入し、送信すると1週間ほどでパーミット(pdf ファイル)がメールで送られてきます。これを2部印刷し(白黒ではなくカラー印刷のほうが無難)、持参して入国時とビザ取得時に見せる必要があります。

パーミットが送られてくるまで1週間ほどかかるので、アブハジアへ行ってみようと思ったら早めに行動する必要があります。

宿泊先の手配

アブハジアではロシア語しか通じないと思ってもらって構いません。現地では「世界共通言語はもちろんロシア語だ。英語なんてマイナーな言葉は知らない」と考えている人がほとんどなので、ロシア語が堪能でない限り宿泊先は事前に予約していくことをお勧めします。

アブハジアのホテルなんて予約できるのかと思う人も多いと思いますが、今の時代これができてしまうんですね。私はアゴダで予約しましたが、本当に便利な時代になったものです。

アゴダは創業者が元バックパッカーということもあって安いホテルも多く扱っており、個人旅行者が気に入るようなサイトになっています。アブハジアへ行ってみようと考えるような、普通とちょっと違う旅行者にはお勧めです。

私が予約したのは首都スフミの Ritsa Hotel で1泊4,000円以下でした。この値段なのに、行ってみたら予想以上の高級ホテルで部屋はリビングと寝室が別になっていました。

スフミに飛び込みで宿泊できるような安宿が存在するかどうかも不明ですし、宿泊料金も安いのでバックパッカーの人たちもアブハジアではホテルを予約しておくほうがお得です。

ルーブルの入手

アブハジアは独自の通貨を持たずロシアルーブルが使われていますが、国境に両替所はありません。国境から首都スフミまではマルシュルートカで移動する必要があり、ルーブルを持っていないと乗れないことになります。

このため、事前にルーブルを入手しておく必要があります。私はモスクワ経由でジョージアへ移動したためモスクワの空港内でルーブルに両替しました。これを忘れるとアブハジアに入ってから困ったことになるので注意してください。

入国

ジョージア側の国境があるのはズグディディ(Zugdidi)という町なので、まずはここへ行く必要があります。

首都トビリシから直接行くこともできますが、時間があれば途中の町に寄りながら移動するのもお勧めです。私はクタイシという町で1泊してからズグディディへ向かいました。

ズグディディのバスターミナルまたは鉄道駅に到着したら、そこからタクシーで国境へ向かいます。運転手には「ボーダー」と言えば通じます。

国境に着いたら、ジョージア警察による審査があります。工場の受付みたいな小さな建物でパスポートを見せて手続きを行いますが、ジョージアはアブハジアという国を認めていないので出国という扱いではなくパスポートにも何も押されません。

この審査を終えると、アブハジア側の国境までトランジットエリアみたいな道を1キロほど歩きます。ここは周囲の景色が風光明媚なので、天気が良ければハイキングみたいで楽しいはず。

本当の国境になっているイングリ川を渡るとアブハジアの検問所があります。ここから先がアブハジア共和国です。

ここでパスポートのチェックがあり、10分ほど待つとパスポートが返されて先へ進むことができます。

両側を柵に囲まれた道を歩くと入国審査があり、これで晴れてアブハジア入国です。

(ただし、私はここで兵士から軽く尋問を受けました。パスポートにコソボの出入国印とナゴルノ・カラバフのビザがあることから「こんな係争地に行く旅行者がいるわけがない」「旅行者を装ったジャーナリストではないのか」と疑われたようです。こちらが何度もツーリストだと主張すると「まあいいだろう」という感じで通してくれました。こういう地域に入った記録がパスポートに残っている人は気を付けてください)

ここからはマルシュルートカでガルという町へ移動します。国境にはマルシュルートカがいつも待機しているようなので、交通機関については心配することはないでしょう。

ガルでマルシュルートカを乗り換え、首都のスフミへ。料金は国境~ガルが50ルーブル、ガル~スフミが250ルーブルでした(2019年時点)。私はスフミの市街地図が頭に入っていなかったので終点のスフミ駅(現在は廃駅)まで移動しましたが、ここは町外れなので少し前の市街中心部で降りるのがいいでしょう。ただしスフミ駅もなかなか味があります。

スフミ駅まで行ってしまっても、ホテルが並んでいる市街中心部へはタクシーで移動できます。

入国後の手続き

無事に首都スフミに到着したら、自分で領事館へ行ってビザを取得する必要があります。規則では入国後3日以内になっていて、ビザを取得していないと出国できません。なので急いで取得する必要があるのですが、気を付けないといけないのは土日とアブハジアの祝日は領事館が休みということ。たまたま連休に当たってしまったら、予定していた日に出国できないなんていうことになりかねません。なんでこんな危険なシステムにしているのかわかりませんが、週末に入国する場合は注意してください。平日であっても、事前にアブハジアの祝日について調べておくのが無難です。

領事館の場所はこちら。

これが領事館の建物。

領事館という表示もありませんし、庭や建物の中にも何の案内書きもありませんが、中に入って「ビザ、ビザ」と言っていれば誰かが部屋を教えてくれます。

窓口というより普通の事務室のようなところに入り、パスポートとビザ料金の350ルーブル(2019年時点)を払うとビザを発行してもらえます。

このビザは出国時に回収されるため、残念ながら記念品として手元に残しておくことはできません。出国前に必ず写真を撮っておきましょう。

出国

出国の際はスフミからマルシュルートカで国境へ向かうことになります。スフミ駅前の乗り場で「ジョルジア」と言えば誰かが国境行きのマルシュルートカを教えてくれます。

国境へ移動中、馬が飛び出してきました。こういうこともあるんですね。

普通の旅行者は訪れることのない地域なので、出国の際は感慨深いものです。

パスポートにアブハジアの出入国印が押されますが、ジョージアに戻ってからも特に問題は起きませんでした。気になるようなら別紙に押してもらうように頼んでもいいかもしれません。

イングリ川を渡ると、ジョージア側にこういうオブジェがあってアブハジア側を向いています。つまりこれがジョージアの人たちの願いなのですが、この川の両側に住む人たちが共存する未来は来るのでしょうか。

ジョージア側に戻ったら、警察の検問所にパスポートを提示して手続きを行います。パスポートには何も押されませんが、この国境は「再びここへ戻ってくる」という条件で通ることが許可されているので、もしジョージアに戻らずロシアに抜けてしまったら違法行為になります。

「もうジョージアに行く機会はないから気にしない」という人もいるかもしれませんが、やはりルールは守るべきと考えます。ジョージア~アブハジア~ロシアと移動するような旅行はやめましょう。


ジョージアへの航空券はエイチ・アイ・エスで手配しました。検索~予約~購入がオンラインで完結するので店舗に出向く必要がなく、普通ではないところへ行きたい旅行者にはお勧めです。

もちろん、おなじみのスカイスキャナーで最安値を探すのもありです。価格だけでなく、航空路線が存在するかどうかも確認できます。

しかし2008年に紛争状態になったというのにモスクワとトビリシを結ぶ路線が存在しているのが不思議でした。


このページを見てアブハジアに興味を持った人は(あくまで自己責任で)旅行してみてください。首都スフミと近郊のノヴィ・アフォンという町の風景は別の記事で紹介します。

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