旧ソ連のモルドバとウクライナに挟まれた未承認国家「沿ドニエストル共和国」をご存知でしょうか。国際的にはモルドバの一部とされているのですが、モルドバの支配が及んでおらず、事実上の独立状態にあります。首都はティラスポリ。
Google Map ではモルドバの一部になっていますが、ウクライナとの国境に沿った細長い地域が沿ドニエストル共和国です。
日本を含めて世界のほとんどの国は独立を認めていないため、扱いとしては未承認国になります。未承認国というと危険そうな感じがしますが、実際はもう長いこと衝突は起きておらず、普通に旅行できる地域です。2018年4月に訪問してきましたので、渡航方法について解説します。
(注意!)
状況は落ち着いているといっても、日本の大使館も領事館もない地域なので、もし何か問題に巻き込まれたら出国が困難になる可能性もあります。入国はあくまで自己責任でお願いします。
まずはモルドバへ
ウクライナ側からも入れなくはないようですが、モルドバの首都キシナウからミニバスで移動するのが一般的です。まずはモルドバに入国しましょう。
モルドバなんてどうやって行くのかと思う人もいると思いますが、一般的にはモスクワ経由が多いようです。私はおなじみのエイチ・アイ・エスで手配しました。
私の場合は15万円ほどで手配できました。
ティラスポリへの行き方
キシナウからティラスポリへはミニバスで移動します。バスターミナルの場所はここ。
バスターミナルはマーケットの中にあるので、ちょっとわかりにくいかもしれません。マーケットの門の中に入って歩き回れば見つかるはずです。
ティラスポリ行きのチケットはターミナル内ではなく屋外のブースで購入します。料金は36.5モルドバレイでした(2018年時点)。
ティラスポリ行きのミニバス。
ミニバスは「乗客が集まったら出発」というシステムのところも多いのですが、この路線は時刻表通りの運行なので安心です。私が乗ったのは10時15分発の便。
途中の車窓風景もきれいです。
キシナウを出発して1時間ほどで国境に到着します。国境付近はロシア軍が常駐していて写真撮影は厳禁なので注意してください。ミニバスは監視されているらしく、カメラを持っているのが窓越しに見られただけでも兵士が乗り込んできて写真をチェックされたという話もあります。ここではカメラは手に持たず荷物かポケットの中に入れておくことをお勧めします。
国境では外国人のみミニバスを下りて入国審査を受ける必要があります。建物の中に入り(この写真も撮らないように!)、パスポートを見せ「名前は〇〇〇〇か」「今日中にキシナウに戻るのか」という2つの質問だけで問題なく入国が認められます。
なお、この際に紙切れが渡されます。これは出国時に必要なので絶対になくさないようにしてください。
(せっかくなので沿ドニエストルに数日間滞在したいと考える人もいると思いますが、宿泊する場合は入国後に自分で役所に行って手続きを行う必要があり、かなり面倒なことになるようなので日帰りが無難です。私もできれば1泊したかったのですが、おとなしく日帰りにしました)
入国審査が終わるとミニバスに戻り、出発してすぐに沿ドニエストルに入ります。
国境から30分ほどでティラスポリに到着します。他の乗客は街中で次々と下りていきますが、旅行者の場合は終点のティラスポリ駅まで行くのがわかりやすいのでお勧めです。
ここで帰りのミニバスの時刻を確認しておきましょう。必ず、最終便の出発までにここへ戻ってくる必要があります。私は18時15分発の便でキシナウに戻りました。
駅の中には沿ドニエストルの地図もありました。ドニエストル川に沿った細長い地域ということがわかります。
ミニバスの時刻を確認したら、次は沿ドニエストルの通貨「ドニエストルルーブル」を入手します。これは駅に両替所があるので容易に入手できます。
ドニエストルルーブルは国外では一切両替できないので、必要な分だけ両替するようにしてください。私は20ユーロを両替して394ルーブルを受け取りました(2018年4月時点のレート)。
これがドニエストルルーブル。
なお、ドニエストルルーブルの硬貨にはなんとプラスチック製のものがあります。こういう硬貨は非常に珍しいと思うので、滞在中に入手することができれば記念に持ち帰ることをお勧めします。
まるでメンコみたいですが、これでもちゃんとした硬貨です。
ティラスポリの風景
ティラスポリの主な風景を紹介します。
ティラスポリ駅
終点のティラスポリ駅に到着したら、まずは駅を歩いてみることをお勧めします。鉄道が好きな人は駅の雰囲気を楽しめるはず。
キーロフ公園
ティラスポリ駅から市街中心部に向かう途中にあります。公園内にはロシア正教の教会もあり、きれいに整備されています。
ツーリストインフォメーション
市街中心部に入るとツーリストインフォメーションの建物があります。ティラスポリの市街地図をもらうことができるので入手しておきましょう。地図にはトロリーバスの路線やカフェの場所などのほか「レーニン像が立っている場所」なんていう情報も載っています。これをもとにレーニン像巡りもいいかもしれません。
また、土産物もいくつか売られているので、ここで購入するのもいいと思います。観光客が来るような町ではないので、ティラスポリ市街では土産物店などは見かけませんでした。私は65ルーブルでソ連色丸出しのマグカップを買い、自宅で使っています。
スヴォーロフ広場
アレクサンドル・スヴォーロフの大きな騎馬像があります。
スヴォーロフ広場から大通りをはさんだ向かい側には戦車も保存されています。こちらも見逃さないように。
政府庁舎
ここはぜひ訪れてほしいスポット。何といっても巨大なレーニン像が圧巻!
造形はちょっと粗削りみたいな気もしますが、それもまた味があります。
マントを翻した姿を石像で表現するという発想がいいですねえ。ティラスポリに来てよかったと思える風景です。
ドニエストル川
沿ドニエストル共和国は名前の通りドニエストル川に沿った細長い地域なので、市街をドニエストル川が流れています。
そんなにきれいな川とは思えませんが、地元の人たちにとっては河畔は憩いの場になっているようです。
市庁舎
ここにはレーニンの胸像があります。ツーリストインフォメーションでもらった地図をもとに探しました。
遊園地
地元民向けの小さな遊園地もあります。
ここでぜひ乗ってほしいのが観覧車。
こんな開放的な観覧車がありますか?
実はこの観覧車がティラスポリで一番の名所といっていいかも。料金の20ルーブルでスリリングな体験ができます。
街中の風景
ティラスポリの大通り沿いは洗練されて落ち着いた雰囲気です。
マフィアというお洒落なカフェ(名前は物騒ですが)もあります。
ただ、ところどころにソ連を感じさせるものも見つかります。
相互に国家承認しているアブハジアと南オセチアの国旗もありました。
トロリーバスといえば何となく旧共産圏のイメージですね。運賃は一律2ルーブルで、車内で車掌に払えばいいので旅行者でも問題なく利用できます。
沿ドニエストルを出国
出国の際はティラスポリ駅からミニバスでキシナウに戻ります。駅前にパンや水など食料品を売っている小さな店が並んでいるので、残ったドニエストルルーブルはここで使ってしまうのがお勧め。
チケットは駅の中で購入し、料金は39.9ルーブルでした。出発して30分ほどで国境に到着しますが、帰りはミニバスを下りる必要はなく、役人が乗り込んできてパスポートを確認するだけで終わります。なお、入国時に受け取っていた紙切れはこの時に回収されるので、出国までなくさないようにしておいてください。
国境を通過すると、1時間半ほどでキシナウ到着です。なお、キシナウ郊外で「モール・ドバ(Mall Dova)」というショッピングモールの前を通ります。ここは名前が面白いのでモルドバのちょっとした名所になっているようです。まあ駄洒落というか、出落ちみたいな名前なんですが、見つけたら写真を撮ってみてください。
いかがでしょうか。このページを見て沿ドニエストル共和国に興味を持った人は(あくまで自己責任で)旅行してみてください。「地球上に残る最後のソ連」という雰囲気が十分に味わえます。
当サイト本館に載せている詳細な旅行記はこちら。こちらもぜひ読んでみて下さい。
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