2023年6月、10年ぶりに函館に滞在する機会がありました。北海道へ行くのは2019年7月以来、4年ぶり。
下の写真は、着陸前に飛行機から眺めた函館山と函館港。
旅行ではなく出張だったので、特に観光はしていません。それでも、最終日に函館市街から空港へ移動する際、ちょっと時間があったので「函館の珍しいスポット」で探して見つけた場所へ行ってみました。
函館駅前から空港行きのシャトルバスに乗り、トラピスチヌ前で下車。ほぼ満員だった乗客の多くがここで降り、有名スポットのトラピスチヌ修道院へ入っていくのを見ながら自分だけは反対方向へ。
目的の場所はトラピスチヌ修道院のすぐ近くにあります。歩いていくと、その「高龍寺達磨大師」が見えてきました。
「道南名所 第三位」と書かれていますが、では1位と2位はどこなんでしょうか。調べてみたものの不明でした。
では、階段を上がって境内へ。すぐに、目的の「達磨大師像」が見えてきました。
ここから見ても、かなり風変わりな姿なのがよくわかります。
達磨大師像と、その横にある胸像を一緒に撮ってみました。この胸像が誰なのかは、後ほど説明します。
まずは達磨大師像に参拝。いやー、カラフルで面白い姿ですねえ。
こんなことを言っては不謹慎かもしれませんが、それにしてもユーモラスな表情です。目が微妙に上下にずれているのもいい感じ。
達磨大師像の姿を堪能した後、横の胸像を見てみました。この人の名前は斎藤キワさん。
刻まれていた碑文を書き写してみます。句読点はこちらで加えたものなので、区切り方が間違っていたらすみません。
斎藤キワは明治10年函館に生まれ、幼少より信仰心篤く、道を座禅精神一刻、願望力の達磨に求め社会に奉仕した。その不撓不屈の精神と深い信仰心は、貧困にもめげず達磨大師像さらには不動明王、八大竜王の建立を自刻で成しとげ幽翠の地たるここに祀って、世の平和と繁栄を祈願し続けてきた。昭和34年、82歳で没するも、その信念は今なお長女ミサオによって受け継がれ、孝心極めてあつい同女が母への思慕と遺徳を後世にと希い、ここにその胸像を建立したものである。
この方が斎藤キワさん。ネット上では「大正末期に夫と死別したあと夢の中で達磨大師と出会い、深く帰依して独力で1951年に建立した」という記述も見つかりました。
こんな風に独力ですごいものを作り上げてしまう人は、本当に尊敬します。規模は違いますが、宮崎県の高鍋大師を作った岩岡老人にも通じるものがあるように思えます。
達磨大師像は1951年建立にしてはきれいすぎると思う人もいるでしょうけど、2015年に修復されて現在の姿になっているそうです。
いろんな角度から見てみました。
しかしこの達磨大師像、横から見るとかなり薄い。こういうところも高鍋大師の石像群と共通した特徴のように思えます。
達磨大師像の両側に、奥へ続いている小径があります。まず左側へ行ってみると、幟の先に小さな社が見えました。
特に何も書かれていませんが、おそらくこの社が高龍寺の本堂なんでしょう。
中に入ろうとしたんですが、入口は鍵がかかっていました。仕方がないので、ガラス越しに参拝。
小型サイズの達磨大師像などは特に置かれていなかったようです。
達磨大師像のところまで戻り、続いて右側の小径へ。
一番奥まで歩くと、不動明王像がありました。先ほどの碑文によると、この不動明王も斎藤キワさんが建立したもの。
かなり大きいので、近くで見ると迫力があります。
表情はちょっとユーモラス。不動明王といえば天地眼(右目が上、左目が下を向く)と上下を向いた牙が特徴といえるんですが、牙はありませんでした。目に関しては、なんとなく上下を見ているような気がしなくもありません。
不動明王が持っているのは右手に剣、左手に羂索(けんさく)。ここでは羂索がワイヤーで代用されていました。
羂索は迷っている人間を縛って持ち上げるための縄だそうですから、ワイヤーを使うのも面白いアイディア。縛られる人間は痛そうですが。
続いて、あちらに見える小屋へ。
何やら龍みたいな姿が見えます。おそらく、あれが碑文にあった八大竜王像。
こちらも斎藤キワさんが建立したもの。さすがに劣化が進んでいるような感じはするものの、よくできています。
一般的に、八大竜王像といえば体に龍を巻き付けた仏像で表現することが多いようなんですが、ここにあるのは龍だけ。最初からこの姿なのか、仏像は劣化が進んでなくなってしまったのか、そのあたりはよくわかりません。
不動明王像と八大竜王像の周辺を散策した後、再び達磨大師像へ。斎藤キワさんとのツーショット。
小さな寺院ですが、しかし楽しめました。ここを珍寺と表現するのは気が引けますが、斎藤キワさんという偉人の功績を偲ぶことができる場所です。
変わった寺院が好きな人、函館のめぼしい観光地は見尽くして他に何かないか探しているような人にはおすすめ。
せっかくなので、トラピスチヌ修道院にも入ってみました。まあ、普通の人は達磨大師像よりも修道院がメインの目的地だと思いますが。
入るといっても、現役の修道院なので建物の中に入ることはできません。観光客が立ち入れるエリアから眺めるだけですが、風景はきれいです。
ここで来るのは2回目。といっても、前回は学生時代の乗船実習で函館に入港した時なので、もう35年ほど前になります。ほとんど憶えていないので、実質は初訪問みたいなもの。
敷地内の風景と雰囲気を楽しんだ後、観光客も入れる土産物店でシスターの手作りというクッキーを買い、バスで空港へ。
最後に、10年ぶりに見た函館駅付近の風景を紹介。下の写真は函館駅で、このオブジェは前回来た時にも見た記憶があります。駅舎自体は特に変わっていないようです。
しかし駅の向こうに見える丸い建物(JRイン函館)は2020年開業のホテルなので、見るのは初めて。
函館駅前の交差点に面した建物は、前回とは変わっていました。かつて、ここに「和光」というデパートがあったんですが、再開発により別の建物に。
なぜ憶えているのかというと、和光デパートの6階に「北海道鉄道博物館」というB級スポットがあり、中に入ったことがあるため。そのときの記録は、当サイト本館の以下のページを参照して下さい。
博物館に並んでいたたくさんの展示物は、今はどうなったんでしょうね。残っていれば、いつかどこかで再会したいものです。
これで、今回の函館紹介は終わり。次は出張ではなく旅行で滞在したい。
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